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山形県「クラゲ世界一の水族館」がリニューアル、地域活性化と外国人旅行者を呼込みの起点に

山形県鶴岡市の加茂水族館クラゲドリーム館が2014年6月にリニューアルオープンした。同水族館は、2012年4月にクラゲ展示種類数でギネスに認定されており、近年のクラゲブームで全国から訪問者が急増。2013年には年間の来館者数が過去最高の27万人を記録し、注目が集まっている。また、山形県と鶴岡市は、この水族館を起点とした地域活性化と訪日旅行者の取込みを図りたい考えだ(山形県の取組みは下段で紹介)。

加茂水族館は、ギネスに認定されているとおりクラゲの種類が世界一多いことが最大のうり。クラゲの飼育が難しいことは世界的にも知られており、50種類を常時展示する水族館には世界の注目も高いという。特に、ヨーロッパではクラゲの人気が高く、ドイツのベルリン動物園の元園長もリニューアルオープンにも駆けつけた。

今回のリニューアルは、水族館老朽化に伴うもの。新たに「加茂水族館クラゲドリーム館」として3636平方メートルの面積、クラゲの展示室ともに以前の約2倍の規模となった。それによって、クラゲの展示数が50種類となり、新たに5mの円形巨大クラゲ水槽を完成させた。

こうした観光インフラの整備にあたり、注目すべき取組みがある。それは、地域の旅館との連携や住民参加の観光インフラへの投資だ。


WS000125旅館との連携では、クラゲの知識を身につけた人が持てる資格「クラゲマイスター(初級、中級、上級)」(山形大学STICAセンター主体)を地元温泉旅館の若主人や女将さんたちが取得。自分の宿の宿泊客に水族館の裏側を案内する「クラゲのバックヤードツアー」を行うことを計画している。観光インフラへの投資では、今回のリニューアルにかかる約30億円の改築費で一部を住民参加型の公募債「加茂水族館クラゲドリーム債」発行で調達。水族館の生物たちの引越しには、地域住民にボランティアを募った。

こうした取り組みから見ても、この地域における加茂水族館を観光の起爆剤とする期待の高さがわかる。

なお、加茂水族館は1930年に前身となる山形県水族館として設立。人気の施設として運営されてきたが、建物の老朽化や他のレジャーの選択肢が増えたことなどから、入館者減に悩まされてきた。こうした中、1997年に偶然発生した「サカサクラゲ」展示を開始。本格的なクラゲ飼育を始め、小学生が名付けた「クラネタリウム」の名で、クラゲを幻想的な雰囲気で展示が人気となった。

加茂水族館


▼山形県のインバウンド施策

羽田国際化後の羽田/庄内線が好機、受け入れ態勢の整備も

WS0001262013年の山形県への外国人客数は受入延人数で4万8545 人と前年同期比 130.2%となっている。ただし、この人数は震災前の2010年比では50.4%で4万7758 人減で一定の回復はみられるものの、原発事故等の影響が完全には払拭されていないことから大震災前の水準には至らない状況だ。

山形県庄内総合支庁観光振興室、観光振興主査の磯佳秀氏は、東日本大震災以後、インバウンドは厳しい状況が続いているものの、羽田の国際化によって好機を迎えているとの認識。羽田/庄内線を利用した外国人旅行者の誘客に注力するとともに、受け入れ態勢の整備を継続的に展開する方針だ。特に山形県が重点エリアに位置づけている台湾、韓国、香港、豪州に加え、新たな誘客エリアとして中国・シンガポール・タイ・マレーシアのアセアン3国もターゲットとする。

また、山形県本庁観光振興部局や東北観光推進機構等と連携しながら、出羽三山や山居倉庫等、外国人にも人気のある庄内の観光素材を効果的に打ち出す。受入態勢整備については、観光施設などでの外国人に対する接客に関する研修会を実施する予定だ。

なお、山形県の西部、日本海に面する、庄内地方に位置する鶴岡市は、日本有数の穀倉地帯。1400 年の歴史を持つ出羽三山の宗教文化で知られ、フランスの観光ガイドブック「ミシュラン・グリーン・ガイド・ジャポン」の3つ星を獲得している。出羽三山のひとつ羽黒山では2014年に羽黒山午歳御縁年記念事業として「蜂子神社御開扉(蜂子皇子御尊像拝観)」が行われ、開祖の御尊像を一般公開。6月14日(土)〜9月13日(土)には、国宝羽黒山五重塔のライトアップも行われる。