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WTM2016開幕、英国EU離脱が観光産業に与える影響を考察するレポート発表 -ユーロモニター

2016年11月7日、英ロンドンで観光産業の大規模国際会議「ワールド・トラベル・マーケット(WTM)2016」がオープニングを迎えた。ここでは、WTMで実施された現地大手調査会社ユーロモニターインターナショナルのプレゼンテーションの内容をお届けする。

英国のEU離脱は旅行市場をどう変える?

ユーロモニターは、先に決定した「Brexit(英国のEU離脱)」をテーマに展開されたリーダーズセッションに登壇。Brexitが観光業界にもたらす影響やその恩恵にあずかる市場などに関する考察を発表した。

まず注目すべきは、EU離脱決定後から続く英国通貨ポンドの下落。短期的にはこの点が英国への旅行者にとって魅力であり、英インバウンド需要の拡大にも直結するという。しかし、離脱後の欧州航空市場の枠組みはいまだ不透明であり、複数の航空会社がすでに英国での露出を控える状況だ。中期的には、旅行先としての英国ブランドや消費者にとっての魅力を大きく左右するのは、この「先行き不透明感」だと解説する。

続いて、同社の旅行・観光産業専門アナリストであるキャロライン・ブレムナー氏は、EU離脱による"悪いシナリオ"に言及する。それによると、2017年にアウトバウンド市場が大きく縮小する恐れがあるという。理由は、政治的・経済的不安がもたらす消費マインドの冷え込み。多くの消費者が将来的な不安を感じる状況に置かれるため、不要な支出を控え、旅行離れがおきる恐れがある。たとえるならこの"悪いシナリオ"は、トランプが米大統領になった事態よりもやや悪い状況をもたらすという。

同時にブレムナー氏は、「希望の兆しがあるとすれば、それは英国民の国内旅行市場の活発化」とも解説。自国の地域的な課題や経済的環境の悪化により、国民が海外に向かうことをやめて、国内旅行を積極化。例えば主要都市やナショナルパークなど、旅行者に人気のある観光地を頻繁に訪れる可能性があると示唆している。

以下は、2015年の英国旅行市場の状況。英国からの海外旅行者数トップはスペイン、2位がフランス、3位がアイルランド。英国へのインバウンド構成比が最も大きいのはアイルランド。2位がキプロス共和国、3位がスペイン。

ユーロモニター:発表資料より

以下は、同社が設定した3つのシナリオに基づく2020年までのインバウンド旅行者数の遷移。2020年に4000万人を目標とするなか、Brexitの悪いシナリオ(Disorderly Brexit)では、200万人少ない予測となっている。

ユーロモニター:発表資料より

※本記事は、英国を拠点とする国際市場調査大手「ユーロモニター」社が発表したもの。同社の許諾を得てトラベルボイスが日本語に翻訳・編集しました。