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アジア地域で「九州」を知っているのは約半数、魅力ポイントや満足度では「温泉」が上位に -日本政策投資銀行

日本政策投資銀行はこのほど、「九州インバウンド観光に向けて」と題する調査レポートを発表した。アジア8か国・地域を対象に、熊本地震前後にわたる九州でのインバウンド市場動向とともに、旅行者の「認知」「理解」「行動」の3側面に沿って九州への観光旅行の位置づけを整理。今後の課題解決に向けた考察をまとめたもの。

それによると、アジア地域での九州の認知度は47%。例えばゴールデンルートである東京(79%)・京都(68%)・大阪(73%)のほか、北海道(72%)、沖縄(62%)が総じて6~7割以上に認知されている状況と比較すると九州の認知度はまだ低い。九州の県別にみると、特にタイ、シンガポール、マレーシア、インドネシアといった東アジアでは、認知度割合が1ケタ台となっている地域も多く、今後に向けた「伸びしろ」が大きいことを示唆する結果となった。

ただし、国内観光地への訪問意欲をみると、訪日回数が多いほど意欲が高いことも判明している。同レポートでは、「次は違う場所に行ってみたい」と考える訪日リピーターをうまく取り込むことが九州へのインバウド増につなげるカギとみている。

DBJ:発表資料より

次に、九州についての理解度をみると、外国人が期待していることのトップは「自然/風景」、次いで「日本料理」「ご当地グルメ」「温泉」「宿泊」。温泉入浴への意欲では、訪日経験がない人で「入浴したい(水着の入浴意向を含む)」と考えるのは7割、訪日経験者では8割以上に。訪日リピーターは温泉入浴への抵抗が減ることが確認された。

また、実際の行動として九州旅行体験後の満足度でも、「温泉」「日本料理」が約4割でトップ。魅力に感じたポイントでは「郷土料理」「温泉」が約7割で上位に並ぶ。一方で、不満足な点の最多は「外国語対応」(41%)、次いで「決済関係」(24%)。決済関連の不満の内訳は、外貨両替やカード決済に対するものが約8割、免税制度関連が約2割。同時に、これらの利便性を向上れば「消費額が増える」との回答が7~8割を占めた。

九州旅行で不満だった点、課題解決後の消費額への影響は以下のとおり。

DBJ:発表資料より

同レポートではこれらの結果より、九州における「温泉」はほかの地域との差別化ポイントにつながると分析。例えば、初めての訪日客に対する入浴作法の紹介や、水着着用の可/不可、泉質別効能などの情報提供などが重要とする。

また、シンプルな「温泉アイランド」のブランドイメージ浸透に加え、売上を伸ばすためのの戦略として、全国に先駆けて「言語」「決済」の利便性向上に取り組む必要があることを示唆。持続可能な地域経済のための重要施策のひとつとして、九州らしさを表現する観光ブランディングの創出が期待されるとまとめている。

この調査レポートは、日本政策投資銀行と財団法人日本交通公社(JTBF)と共同でアジア/欧米豪を対象とする「訪日外国人旅行者の意向調査(平成28年度版)」の結果を分析したもの。この調査の対象は20歳から59歳までの男女で、回答者数は6198名。対象国・地域は韓国、中国、台湾、香港、タイ、シンガポール、マレーシア、インドネシア、米国、オーストラリア、英国、フランス。調査期間は2016年6月23日から7月8日まで。九州でのインバウンド観光をテーマとしたレポートでは、アジア地域の旅行者にフォーカスして分析をおこなった。