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フェイスブックの旅行業向け新広告ツール、旅行・航空・ホテル業の活用法とメリットを分析した【外電】

ymgerman (c) stock.foto

どんな旅行に出かけようかと思いを巡らせるとき、まず頭に浮かぶのは、例えば「隠れ家的なビーチ」や「秘境でのハイキング」といったイメージで、具体的な場所は決まっていないことが多いのではないだろうか。

フェイスブックの新しい広告ツール「トリップ・コンシダレーション(TC=Trip Consideration)」は、旅行プランニングの初期段階にある、こうしたユーザーの潜在的な要望にアプローチするためのものだ。

調査によると、「直近の旅行のアイデアをどこで得たか?」という問いに対し、ミレニアル世代の68%は「フェイスブック」と回答。新たな広告プロダクトの登場は必然と言える。

旅行の新しいイメージ発見につながり、具体的なプランニングもできるプラットフォームは、フェイスブック以外でも広がっている。前述の調査結果では、インスタグラムから旅行のインスピレーションを受けたと答えた人が、ミレニアル世代の60%を占めた。

新たな広告プロダクトは、ユーザーがバケーションに関する投稿を見て心を動かすタイミングを狙い、より具体的な価格や人気デスティネーション情報を示してみせるのに役立つ、というのがフェイスブックの考えだ。

最新ツールの使い方は?

TCは、広告効果測定機能「Facebookコンバージョンピクセル」対応の広告ツール。これを使えば、フェイスブックのデータベースからトラベル関連の内容に関心を示したユーザーを探し出し、広告主である旅行関連各社とマッチングする。

広告を出稿する企業は、リーチしたい顧客層の特徴に絞って照準を合わせ、ターゲット広告を打つこともできる。TCをダイナミック広告と連動させることが必須ではないが、ダイナミック広告をさらに最適化するのにも役立つよう設計されている。ただし、デジタルキャンペーンで「ピクセル」をインストールすることは必須条件だ。

例えば、あるユーザーが旅行関連のページをあちこちブラウズしていて、クルーズに関心が向いたとしよう。TCを使えば、広告主はこのユーザーに対してクルーズのパッケージ商品や関連商品の情報を表示できる。ユーザーの役に立つ広告となり、予約・購買を促す効果も期待できる。

TCを使うメリットは?

TCは、興味・関心を示す「アッパーファネル層」にアプローチする広告ツールであり、ダイナミック広告とは違うシームレスな設定が可能だ。つまり、広告の対象は具体的な旅行プランがまだ決まっていないユーザーなので、静的(ユーザーの入力内容などに応じて変動しない)クリエイティブを使う。

例えば、特別価格やプロモーションの画像、あるいは特定のデスティネーションを取り上げた静止画、カルーセル、ビデオコンテンツなどが使用できる。ブランドのクリエイティブを使ってアピールするのもよいだろう。

また、ホテルや旅行会社など広告主の業種に関係なく、TCでは広告配信に優先順位をつけ、閲覧数やユーザー数を増やすのにも役立つ。

では、旅行会社、ホテル、航空会社などが実際にTC広告を活用するにはどんな手法があるのか。以下に事例を紹介しよう。

1. 旅行会社の場合

旅行意欲が旺盛なユーザーは、インスピレーションを求めて、あちこちに目を配っているものだ。

ブランド広告では、商品情報や動的なクリエイティブが提供されることが多いが、TCでキャンペーンではその必要がない。

対象となる潜在顧客層の特徴を洗い出すところから始めるのではなく、フェイスブックが持つ膨大なデータを最大活用するのが得策だ。

2. ホテル業の場合

ホテル業にとってTCの注目すべきメリットは、旅行者のデスティネーション選択にも関与できる点だ。

特別料金や滞在地の観光名所、魅力的なパッケージプランを提示することで、ユーザーの興味を惹くことができる。

TCと併せ、複数画像を組み合わせて表示する「コレクション広告」も展開すれば、様々な系列ホテルを知ってもらえる。

3. 航空会社の場合

旅行業向けのダイナミック広告は、今のところ、航空会社が利用することはできない。しかしそれでもTCを効果的に使い、アッパーファネル層のユーザー対策に役立てることは可能だ。

例えば、自社便の到着デスティネーションを取り上げた広告を展開し、同時にプロモーション商品や特別割引を宣伝するのも一案だ。

TC広告は、将来の旅行について考えているユーザー層がターゲットなので、質を重視し、旅行へのこだわりも強い客層にリーチできる。

TCとダイナミック広告を同時に活用する方法

フェイスブック利用者ならご存じの通り、「ダイナミック広告」は、自社のサイトやアプリなどに関心を示したユーザーに対し、自動的に商品広告を表示する。商品一覧(カタログデータ)をアップロードしたら、あとはダイナミック広告がユーザー向けに最新在庫や価格情報を提示してくれる。

TCを活用すれば、これまでよりも早い段階で、旅行プランニング中のユーザーにこうしたダイナミック広告を提示できる。内容次第では、ユーザーの様々な意思決定を動かすケースも出てくるだろう。

広告を出す側は、適切なメッセージと、その内容にぴったりなクリエイティブを組み合わせることもできる。クリエイティブ素材は選ぶことができ、商品カタログデータを提供する必要はない。

広告キャンペーンにTCを組み込めば、すでに選定したターゲット・オプションと連動させて、最適なタイミングで最適な相手に広告を表示できる。

インスタグラム、メッセンジャー、オーディエンスネットワークなど、複数のプラットフォーム上での同時展開も可能だ。

TC効果を最大化するためのアドバイス

TCについて理解を深めていただけただろうか? 最後に、TC活用の際に役立つアドバイスを挙げたので、参考にしてほしい。

対象ユーザー範囲を狭めることでオーディエンスの規模を小さくすると、広告の配信効果も限定的になる。フェイスブックでは、少なくとも700万人以上のオーディエンス規模が見込める対象を選ぶよう推奨している。なお、TCでは、「類似オーディエンス(Lookalike Audience)」や「趣味・関心によるターゲティング(interest targeting)」など、既存のセグメントとの併用も可能だ。

ウェブサイトのコンバージョン向上が目的なら、「検索」「チェックアウト」あるいは「購入」の最適化がベストだ。

広告キャンペーンの開始当初は、オートビッド(自動入札)機能の利用が広告配信拡大に効果的だ。3日間ほど継続してみて、パフォーマンスが好調であれば、入札の条件を絞るなど、あれこれ試してみてもよい。

TCは、いわゆる「オールウェイズ・オン=常時つながっている」状態でキャンペーンが展開できるメリットもある。多くの潜在顧客にリーチすることができる。

TCの効果測定

TCツールを使った広告が成功したかどうかの判断は、対象イベントに関するインパクトの効果測定でおこなう。例えば、「検索」というイベントの最適化が目標であった場合、検索1件当たりのコストや、検索ボリュームの合計数値が判断材料になる。

TCは広告主向けに、どのユーザーが旅行に関心を示しているかを把握できる仕組みを提供している。この新ツールの登場により、旅行のインスピレーションを求めているユーザーを選び、広告を届けられるようになった。つまり、ターゲット設定の最適化や効率化が進み、潜在顧客が旅行の意思決定を行う段階から企業が関わることが可能になった。

旅行広告を出稿する立場なら、投資したコストは最大限に活かしたい。新しい機能は一見の価値ありだ。TCの登場で、本当に旅行サービスを必要としているユーザー向けに、役に立つ情報を届けられるようになり、購買活動の活性化も期待できる。

※編集部注:この記事は、世界的な旅行調査フォーカスライト社が運営するニュースメディア「フォーカスワイヤ(PhocusWire)」に掲載された英文記事について、同編集部から承諾を得て、トラベルボイス編集部が日本語翻訳・編集しました。

※オリジナル記事:How marketers should use Facebook's new Trip Consideration tool


著者:米国のMDG Advertising社