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米国の年末商戦、「ネットで注文・店舗で受け取り」が前年比5割増、一方、スマホでショッピングは過半数突破

感謝祭明けの月曜日のオンライン・セール、いわゆるサイバーマンデー商戦は、例年スタート時期が早くなっており、今年はアマゾン、ウォルマート、ターゲットで一週間を対象にする「サイバー・ウィーク」の呼称が登場した。売上額は過去最高記録を更新し、オンライン・ショッピングがますます盛況となる一方、米国では、各州政府によるオンライン販売への包囲網も厳しくなっており、新たな課税ルールが整備されつつある。

アドビ・アナリティクスによれば、2018年のサイバーマンデー(11月26日)では、オンライン商戦の売上が前年比2割近い伸びとなり、78億ドル(約8580億円)に達し、過去最高額の更新が確実視されている。例年、この日は全米における一日当たりオンライン売上の最高額を記録する日でもある。

これに先立つ感謝祭当日(11月22日)と、続くブラックフライデーのオンライン販売額は、それぞれ同28%増の37億ドル(約4070億円)と同23.6%増の62億ドル(約6820億円)で、こちらも大きく伸びた。また、今年プラス成長幅が大きくなったのは、感謝祭の週末(11月24~25日)で、両日のオンライン販売額はそれぞれ同25%増となり、伸び率では、セール本命のブラックフライデーやサイバーマンデーを上回る結果となっている。

感謝祭セールのスタート時期が年々早くなる傾向を受けて、2018年11月1日以降のオンライン売上は、連日、1日当たり10億ドル(約1100億円)を超えた。同1~26日までの累計では、前年同期比19.9%増の585億ドル(6兆4350億円)。

アドビによると、今年目立った特徴の一つは、オンラインで注文し、商品は店舗で受け取る「オンラインとオフラインの融合」型。特に週末の買い物では、こうした利用者が前年比50%増となり、オンラインでの成約率は実店舗を持つリテーラーの方が28%高い結果となった。

スマートフォンでのオンライン・ショッピング売上も増えており、サイバーマンデーでは同48.1%増の21億ドルに達し、こちらも過去最高となった。モバイル端末でのサイト訪問者訪問者シェアは、全体の51.4%となり、初めて過半数を突破。内訳は、スマートフォンが43.6%、タブレットが7.8%。また売上に占める比率は34%(同26.3%と7.7%)だった。

人々がネットで買い物する時間帯のピークはサイバーマンデー割引の終盤、米東部時間で月曜の午後10時から深夜1時。セール終了間際に、さらに値下げする商品を狙った動きで、同日の売上の2割強が、こうした夜の駆け込みショッピングとアドビでは分析している。

オンライン商戦の覇者は、今年もアマゾンだ。ベイン&カンパニー調べによると、2018年全体のオンライン売上では、ほぼ半分をアマゾンが獲得したと見込まれている。

米当局、オンライン商戦への課税強化へ

大盛況のオンライン商戦だが、これを見守る全米の各州政府当局の間では、オンライン販売に対する消費税徴収を拡大する動きが広がっている。AP通信によると、背景にあるのは、2018年6月、米最高裁判所が下した判決で、オンライン販売での消費税課税について、従来よりも条件を緩和する傾向が示されたことだ。

全米の主要リテーラー70社以上が加盟する小売り産業リーダーズ協会(RILA)のジェイソン・ブリュワー広報官によると、今のところ、オンライン消費税の導入は州によってまだ温度差があり、買い物をする場所や利用者の居住地域によって様々な状況となっている。

最高裁判所の判決が出る以前は、実店舗や倉庫など、小売り業者が物理的に進出している州においては、オンライン販売でも消費税の徴収が義務付けられていた。この結果、例えばアップル、ベストバイ、メイシーズ、ターゲットなど、全米で店舗などを展開している企業は、オンライン販売でも消費税を徴収する必要があるが、物理的な店舗を持たないリテーラーは、オンライン取扱いの規模が巨大であっても、消費税は不要だった。

ところが最高裁の判決以降、州内でのオンライン販売額や利用件数が一定以上の規模に達している場合は、オンライン販売時も消費税を徴収することが認められるように。ショッピング・シーズンを迎える年末に向けて、多くの州政府が課税に動きだしている。対象となるオンラインサイトは、ホームセンターや電化製品、宝飾品、ファッション関連、ビデオショップなど幅広い。例えばホームセンターのオーバーストック(Overstock)では、以前は計8州でのみ、オンライン消費税を徴収していたが、今では全米すべての州で徴収している。

最高裁のケースで当事者だったサウスダコタ州では、同判決以降、州内に住む利用者に対するオンライン販売額が年間10万ドル以上、または利用件数が200以上の場合、消費税の徴収を義務付けた。2018年10月以降は、同様にアラバマ、イリノイ、インディアナ、ケンタッキー、メリーランド、ミネソタ、ネバダ、ニュージャージー、ノースダコタ、ワシントン、ウィスコンシンの各州で、独自の条件を付けてオンライン課税に着手。さらに10数州が、これに続く見込みだ。

一方、カリフォルニア、テキサス、ニューヨーク、フロリダなど人口の大きい州では、こうした動きはあまり進んでいない。

オンライン販売大手のアマゾンの場合、同社が直接販売元になっている商品については、消費税を徴収しているが、第三者のリテーラーが販売している商品については、各社の方針に任されている。eBayやEtsyも同様に各販売者にゆだねられている。これに対し、各州政府は、巨大なマーケットプレイスを形成しているサイトについては、販売業者ではなく、プラットフォームを提供している企業が課税の責任を負うべきとの考えで、こうしたルール整備を模索している。

翻訳・記事 谷山明子