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世界7位のホテルチェーンOYO(オヨ)が日本で新事業、CEO来日で語った「生活空間の変革」、合弁を決めたヤフーの狙いも聞いてきた

アジアを中心に51.5万室を展開し、世界7位に急成長したインドのホテルチェーン・OYO(オヨ)CEOのリテシュ・アガルワル氏が来日した。ヤフージャパンとの合弁による日本での賃貸住宅事業「OYO LIFE(オヨライフ)」の事業開始に伴うもの。2019年3月28日にはオヨとヤフー、合弁会社で運営を担当するOYO TECHNOLOGY & HOSPITALITY JAPANと共同記者会見を開催、同日にウェブサイト、モバイルサイト、アプリをオープンし、本格的にサービス提供を開始した。

オヨライフとは、スマホだけで物件探しから入居、退居までの契約や支払い、手続きに係るサービスを一気通貫で提供する賃貸住宅サービス。「旅するように暮らす」ライフスタイル商品として、敷金や礼金・仲介手数料は不要、家具家電やWiFi、公共サービスを完備し、引っ越しを含む初期費用を押さえて、従来の日本の賃貸住宅の契約等に係る手続きや手間をオンライン上で完結し、最短で翌日から気軽に入居ができる形で提供する。さらに、物件の家具家電はデザイン性が高いものを意識し、オヨのIoTベースのテクノロジーを活用したセキュリティなども用意している。

CEOのリテシュ氏はまず「オヨはホテル企業だけを目指して創設したのではない。我々の大きなミッションはクオリティの保たれたリビングスペースを提供すること」と、オヨの目指す方向性を説明。その上で「不動産市場では世界的に住宅購入率が減少し、賃貸住宅を活用してフレキシブルな住環境を望むトレンドが、特に若い世代を中心に中高年にも大きくなっている。この中でオヨとして、大きな変革の先頭に立ちたい」と述べ、オヨライフを設立した趣旨を説明した。

リテシュ氏は、賃貸住宅業としてのオヨライフの強みとして、(1)不動産物件の知識に加え、(2)テクノロジーへの理解、(3)ホスピタリティへの理解の3つを提示し、「不動産会社でこのコンビネーションを持っているのは極めてユニーク。生活空間の市場にこれまでにない大きなアドバンテージを持っていると思う」と強調。例えば部屋のデザイン性や賃料は、1000名以上のエンジニアを有するオヨグループ傘下のテクノロジー企業を活用し、画像やビッグデータなどテクノロジー活用による解析結果も参考にしている。

オヨの賃貸住宅事業は東京が初のサービス提供地となる。次いでインド・デリーでも開始しており、今後は世界の他の大都市でも展開し、アジア初のグローバル不動産ブランドを目指していく方針だ。

OYO LIFEの賃貸物件の一例。家具や家電のほか、カーテンやタオル、シーツ、食器なども部屋の設備に入っている

4クリックで完結、ホテル予約のように部屋を選ぶ簡単な手続きに

運営会社のOYO TECHNOLOGY & HOSPITALITY JAPANのCEO・勝瀬博則氏は、従前の日本における賃貸住宅契約には「物件探しに時間がかかり、初期費用が高く、賃料体系も不明瞭」という課題があり、「これが自由に引越しをして住みたいところに住む気持ちを阻害している」と指摘。この課題の解消を目指したサービス設計を行なったことを説明した。

また、同日に開設したオヨライフのウェブサイト、モバイルサイト、アプリは「従前の賃貸情報サイトとはUIが全く違う」と強調。トップ画面には大きな検索スペースがあり、住みたい場所やキーワードを入れて、検索が始まる。候補として検索した画面には、内覧とともに地図と賃料を掲載。気に入った物件の選定から4つのクリックで手続きが完了するという。

勝瀬氏は、サービスアパートメントやウィークリーマンションなどの従来からある家具付きマンションタイプの賃貸物件との比較について「実は内容はほとんど同じ。ただし、売り方が違う」と違いを強調。「我々は、お客様が望むやり方で、『これなら入居したい』と思う物件やサービスにすることに力を入れている」と説明した。

オヨライフの家賃はマンションタイプで10万~100万円、一軒家タイプで30万~100万円、シェアハウスタイプで5万円~8万円。勝瀬氏によると現在の物件数は、契約完了数が1008室、審査中を入れると1300室ほどで、入居可能な部屋数は470室。これに対して稼働率は114%で、需要が供給を上回っている状態だ。今後毎日30~70室程度のペースで供給が可能になるという。

今後の展開としては「入居を希望するすべての人の期待に応えたい」と、鋭意物件を増加させていく方針。一方、オヨライフでの民泊の展開については否定し、1か月以上の賃貸住宅事業に注力する方針を示した。

OYO LIFEのウェブサイトのエリア検索の結果。表示された物件を選ぶと、遷移したページから4クリックで契約が終了

ヤフー、PayPayに次ぐ第2のユニコーン企業の日本進出支援

ヤフー代表取締役CEOの川邊健太郎氏は、今回の合弁を決めた理由の1つとして、昨年4月に新体制となった新生ヤフーの方針である「ソフトバンクビジョンファンドが出資する世界のユニコーン企業との連携、日本進出の際の支援」と説明。その第1弾がインドのモバイル決済Paytmとの「PayPay」であり、オヨライフはその第2弾の展開であるとし、旅するように暮らす、ホテルのように部屋を選ぶ賃貸の生活の新しい変革を、我々としても支援したい」と期待を語った。

ヤフーの支援内容としては、「オヨの提唱するライフスタイルの宣伝を、責任をもって行う」こと。本日以降、ヤフージャパンのトップリンクにオヨを張り、ヤフー不動産などのグループ内サービスとも連携。「旅するように暮らす」のコンセプトを踏まえ、ヤフートラベルでの露出の可能性にも言及した。また、PayPayとも連携させる方針で、時期は未定だがPayPayのオンライン対応も行なう考えだ。

左から)ヤフー代表取締役社長CEO川邊氏、OYO CEOリテシュ氏、OYO TECHNOLOGY & HOSPITALITY JAPAN CEO勝瀬氏

記事:山田紀子