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訪日客の伸び鈍化で「2020年の訪日客4000万人達成」は厳しい現実に、日本政府観光局が認識示す、今年のラグビーW杯は欧米豪市場の獲得へ

日本政府観光局(JNTO)は今年2回目となるメディアブリーフィングを開催し、企画総室長の金子正志氏が2019年第1四半期(1-3月)の訪日外客数の動向と今年開催されるラグビーワールドカップに向けた取り組みについて説明した。2019年第1四半期の訪日外国人数は前年比5.7%増の805万3700人となったものの、金子氏は「これまでと比較すると伸び率はかなり低い」と話し、2020年の目標4000万人達成までには年13.3%増の高い伸び率が必要になることから、「容易ではない」との認識を示した。

また、東京オリンピック・パラリンピックが開催される2020年についても、過去の大会の例から、期間中の宿泊事情や交通事情の懸念から一般の訪日客が敬遠する動きが見られると予想されることから、金子氏は「2020年の目標達成に向けては厳しい現実を共有すべき」と発言。そのためには早期の対策が必要と強調し、JNTOとしては東京周辺都市での宿泊の誘導、リピーターの地方分散化、時期の分散化を進めていく方針を示した。

ちなみに、過去の五輪開催地では、2004年のアテネ、2008年の北京とも開催都市決定以降、インバウンド旅行者数は右肩上がりで増加したものの、五輪の年は前年を下回った。2012年のロンドンでは期間中の7月〜9月の3ヶ月で五輪目的の訪英外客数は68万5000人にのぼったものの、全体では前年比4.2%減。通年では同0.9%増と微増にとどまった。

ラグビーワールドカップ2019(RWC2019)への取り組みでは、東京オリパラとは異なり、全国12都市で開催されることから、「地域の認知度向上の絶好のチャンス」との認識。JNTOとしては、RWC2019専用サイトで開催自治体の周遊コースや体験型コンテンツの情報発信を強化するほか、前日本代表ヘッドコーチで現イングランド代表ヘッドコーチのエディ・ジョーンズ氏やニュージランドやオーストラリアのレジェンドプレイヤーを起用したPR映像をSNSやTVなどで放映する。このほか、大会前と大会中のメディア向けのサポートも実施。各地域には取材先の情報提供や撮影許可、多言語による受け入れ体制などメディア対応の強化を求めた。

JNTOはRWC2019目的の訪日外客数を約40万人と見込み、過去の大会の傾向から英国、オーストラリア、ニュージランド、フランスからの来日が大半を占めると予想されることから、「欧米豪市場の新規訪日客獲得のチャンスになる」と期待をかける。また、大会期間が9月20日から11月2日の44日間と長いため、長期滞在が増え、現地消費額も伸びると予想する。

欧米豪からの訪日外客数は堅調に伸びており、伸び率では2018年9月には東アジアの伸び率を逆転。今年に入ってもその差は拡大している。一方、ボリュームゾーンである東アジアについては、2019年第1四半期では中国は引き続き増加しているものの、韓国と香港が前年割れとなった。金子氏は「欧米豪はグローバルキャンペーンの効果もあり、順調に伸びているが、4000万人に向けては東アジアでの需要喚起も大切」とコメント。JNTOとしては引き続き全方位で施策を進めていく考えを示した。

JNTO企画総室長の金子正志氏