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KDDI高橋社長が語った「5G時代の未来」とは? データと価値提供が循環する「リカーリング」モデルに進化、JALと協業で新ビジネスの開発へ

日本航空(JAL)とKDDIは、次世代移動通信システム5GやIoTを活用した次世代サービスの研究開発と実用化に向けて、両社のオープンイノベーション拠点である「JAL Innovation Lab」と「KDDI DIGITAL GATE」とのコラボレーションを実施することで合意した。「KDDI 5G SUMMIT 2019」の基調講演でJAL常務執行役員イノベーション推進本部長の西畑智博氏が明らかにした。

具体的には、5Gと他テクノロジーを融合した新しいサービスの研究開発、空港や整備工場などでの5Gの実用化を目指した新たなビジネスの検証を行う。JALとKDDIは、イノベーションパートナーとして2020年春に日本でも予定されている5G商用化に合わせて、JALの拠点に5G基地局を構築し、5Gを活用した次世代サービスの実用化を目指す。

JAL Innovation Labは、社内外の知見を生かして新しい価値創出を狙うオープンイノベーションの活動拠点として2018年4月に開設された。JALグループのあらゆる部門の社員(ラボ会員)100名に加えて、170社を超える企業とパートナシップを形成。今回新たに「ラボ・アライアンス」としてKDDIと協力関係を築く。

一方、KDDIは5G/IoT時代のビジネス開発拠点としてスタートアップ、大企業、自治体などとコラボレーションを進める「KDDI DIGITAL GATE」を2018年9月に東京に開設。新規ビジネスの創出のほか、地方創生に向けた課題解決に取り組んでおり、今年秋には大阪と沖縄にも拡大する。

両社は、これまでも共同でさまざまな研究開発を推進してきた。2018年11月には、5G専用端末によるタッチレス搭乗ゲートや利用者のニーズにあわせた大容量コンテンツの情報配信など便利で快適な空港サービスの実証実験を実施。また、2019年3月には、4K/8Kの映像を用いた整備作業の高度化ソリューションの開発・実地試験に成功した。

西畑氏は「人財とテクノロジーの融合で地に足の着いたイノベーションを起こしていく」と発言。5Gに加え、IoT、AI、xR、ロボットの5つのキーテクノロジーを活用し、BtoCではカスタマージャーニーで新しいサービスを創出し、BtoBではオペレーションで生産性向上や働き方改革を進めていく考えを示した。

JAL常務執行役員イノベーション推進本部長の西畑智博氏

KDDI高橋社長、5Gでサブスクリプションからリカーリングへ

KDDI社長の高橋誠氏は、同じく基調講演で5Gが可能にする未来について説明した。KDDIでは2020年3月ごろにプレ5Gサービスを開始。その後、4Gと5Gのハイブリッド期間を経て、2022年3月ごろにスタンドアローンでの本格展開を開始する予定だ。高橋氏は、BtoBでの5Gのユースケースとして、スマート工場、自動運転、遠隔地治療などを挙げ、将来を「あらゆるモノに通信が溶け込んでいく時代」と表現した。

そのうえで、あらゆるモノがつながり続けAIエージェントが生活をサポートする時代では顧客との関係性が再構築されると見通し、ビジネスモデルも現在の定額・同一サービスのサブスクリプションから、通信データ容量の増大によって、データと価値提供が循環する「リカーリング」モデルに進化するとした。

そのモデルは5Gによって加速。顧客の状態、行動、感情がデータとして循環し、新しい価値提案をすることで顧客とのエンゲージメントが変化していく。高橋氏は「たとえば、明太子を購入する場合、サブスクリプションでは、食べきれずに残ってしまっても、時期が来ればまた新しい商品が届くが、リカーリングでは、食べきったところで自動的に補充される」と表現した。

高橋氏は、ビッグデータを基礎とするリカーリングモデル実現のキーワードとして、高いセキュリティ性能や信頼性を示す「トラステッド」と新しい価値を創出する「イノベーション」を挙げた。

あらゆるモノに通信が溶け込む5G時代では、競争と強調の関係性も変化。サービス・料金とサービスプラットフォームは競争領域である一方、5Gインフラでは協調し、データの共有も部分的に協調される。そして、その協調の関係性は、スマートドローンやMaaSなどにより社会的課題を解決する仕組みづくりにも貢献する。また、高橋氏は、日立や東芝と協業し、多様な企業がグローバル事業を加速させていくための「IoT世界基盤」の構築を進めていることも紹介した。

KDDI社長の高橋誠氏