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新たな世界文化遺産「百舌鳥・古市古墳群」で観光商戦が始まる、遊覧飛行・VR・眺望宿泊プランなど

大阪府の堺市、藤井寺市、羽曳野市にわたる「百舌鳥・古市古墳群」が2019年7月6日、世界文化遺産に登録された。エジプトのクフ王のピラミッド、中国の秦の始皇帝陵と並ぶ3大墳墓の一つといわれる国内最大級の前方後円墳、仁徳天皇陵古墳をはじめ、多数の古墳が市街地に密集しているのが特徴だ。日本の世界遺産としては23カ所目。大阪府では初めての世界遺産となり、アクセスにも優れることから、観光業界でも新たな商機をビジネスに活かそうと、様々な動きが起こっている。

富裕層獲得に期待集まる遊覧飛行

商品化にいち早く動いたのは、旅行大手のJTBグループだ。JTBはヘリコプターに乗って上空から眺めるツアーを、7月中旬からから国内パッケージツアー、エースJTBのオプショナルプランとして売り出す。旅行代金は1機あたり、定員3名、所要20分で7万200~7万5600円。JTBパブリッシングも7月9日に「祝!世界遺産登録特別号 るるぶ特別編集『古墳のある街 堺市』」を堺観光コンベンション協会から緊急発行するなど、グループ挙げて観光促進に取り組んでいる。

上空から眺めるプランは外国人富裕層の取り込みも期待される。訪日外国人向けツアーを取り扱うジャパン・トラベルは、プライベートジェット機を利用する富裕層向けツアー「スカイ・イントリーグ」を販売している。コンラッド東京がヒルトン創業100周年を記念して企画したもので、2泊3日で100万円の豪華ツアー。宿泊とともに、小型チャーター機で百舌鳥・古市古墳群を空から眺めるのが目玉企画だ。

テーマ旅行に強いKNT-CTホールディングスのクラブツーリズムは、従来から百舌鳥・古市古墳群を訪れるツアーを取り扱っており、世界遺産登録を受けラインナップを拡充した。なかでも、「歴史への旅 阪南大学教授・来村多加史氏解説 百舌鳥・古市古墳群 大阪の22の古墳めぐり」(1名7万9800円)は、東京発着2日間で22の古墳を訪れる充実した内容。NHKの「歴史秘話ヒストリア」にも出演する講師が笑いを交えて案内する。

百舌鳥・古市古墳群は市街地に位置する一方で、古墳の大半が宮内庁の管理下にある。参道や一般拝所を除き原則非公開になっているうえ、森に覆われていることもあって全容を見ることができないのは観光業界にとってもネックだ。そこで、ヘリコプターによる遊覧とともに、VR(バーチャル)を活用する取り組みも広がりつつある。堺市博物館はヘッドマウントディスプレイを装着することで、ドローンで上空300mから撮影した百舌鳥古墳群の疑似体験ツアーを提供しており、旅行各社もオプショナルプランに組み込んでいる。約1600年前の古墳築造当時の姿や古墳内部をバーチャルリアリティーで再現した360度の映像で見ることができる。

ホテル業界や高層ビルも続々参戦

世界遺産登録の効果は旅行だけでなく、観光業界のさまざまな分野に広がりつつある。古墳の形を模した「お抹茶デニッシュ」(1個800円)を発売したのは、地元堺市の「ホテル・アゴーラリージェンシー大阪堺」。老舗の抹茶をフォンダンの上に振り、古墳の縁を表現した。古墳が望める高層階の部屋を用意する宿泊プランも企画した。早めの12時チェックインで、初日はエグゼクティブラウンジから古墳を眺めながらのティータイムで始まるラグジュアリーな内容だ。

近鉄不動産「あべのハルカス」の展望台「ハルカス300」も、日本一高いビルからの眺望を売りに来訪を促す。ハルカス300は百舌鳥・古市古墳群のほぼすべてを一望できることから、解説パネルの設置、古代衣裳体験、古墳をイメージしたメニューなどを用意する。ハルカスはこれまでも世界遺産選定委員による現地視察時に協力するなど、機運醸成に協力してきた。同社は「見る、着る、味わうなど、様々な方法で古墳の世界を楽しんでもらいたい」とコメントしている。

あべのハルカスからの眺望

2025年に国際博覧会(万博)を控えるなか、新たな観光地としても注目を浴びる大阪。世界遺産登録をきっかけに、さらなる飛躍に期待が集まる。