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海外タビナカをフォトブックで残す新サービス、旅行者と海外在住者つなぐ「トラベロコ」が開始、その内容を聞いてきた

海外在住日本人のスキルと日本人旅行者の「やりたいこと」をマッチングさせる「トラベロコ」は、海外在住の日本人カメラマンと旅行者とをマッチングさせる新サービス「Traveloco.photo」を始めた。このサービスは全国でフォトプリントサービスを展開するプラザクリエイトと提携して開発。旅行中にプロカメラマンが旅行者を撮影するだけでなく、帰国後にプラザクリエイトの技術で高画質フォトブックを制作・提供する。同社代表の椎谷豊氏は「もともとカメラマンとのマッチングはあったが、プラザクリエイトと協業することで、タビナカ体験だけでなく、新たにタビアト体験も加えた」と説明する。

トラベロコは、CtoCのマッチングプラットフォーム。2014年1月にサービスを開始し、現在世界171カ国で4万5000人の海外在住日本人(ロコ)が登録。今夏には5万人まで増える見込みだという。一方、会員ユーザー数は15万人にまで成長した。将来的には、ロコは海外在住日本人135万人全員の登録、ユーザーは海外旅行者数全体の10%を目指している。

Traveloco.photoに登録するカメラマンは、サービス開始時点でパリ、ロンドン、フランクフルト、ベルリン、台北、バリ島、セブ島など20エリアで25人。「はじめてのサービスのため、クオリティーを担保するうえで初回はカメラマンを審査し選定した」という。目標は一年後に75エリアで100人のカメラマン登録だ。

「デジタルの時代でも現物で思い出が残る価値はある」

CtoCのシェアリングサービスとして、撮影ポイントなどはカメラマンとユーザーとの事前の話し合いで決めるが、トラベロコでは撮影場所の数やカメラマンの拘束時間によって、2ヶ所2時間のベーシックから5ヶ所8時間のプレミアムまで3つのカテゴリーでパッケージ化。加えて、カメラマンによる特別サービスとして最高額のスペシャルパッケージも用意した。

「もともと、ハネムーン写真など現地での撮影の需要はあった」と椎谷氏。そこにプラザクリエイトの大島康広社長から声がかかった。大島氏はトラベロコのユーザーとして深センを訪問。現地視察をホストしたロコから「トラベロコで自分を必要されていることが分かり、人生が救われた」という言葉に感銘を受け「トラベロコと何か一緒にできるサービスはないか」と椎谷氏を誘ったという。

そこで着想したのがタビアト体験。プラザクリエイトのオンラインプリントサービス「Digipri (デジプリ)」を活用し、旅の思い出をフォトブックにして提供するというアイデアだ。ユーザーは、カメラマンがトラベロコ上にアップした写真データをダウンロードし、フォトブック作成アプリでオリジナルのフォトブックを作成。後日製本されたフォトブックが郵送されという流れになる。

椎谷氏は「デジタルの時代だが、現物で思い出が残る価値はある」とリアルなサービスに自信を示す。また、プラザクリエイトとの協業では、同社が全国で展開する実店舗も魅力のようだ。タビナカ、タビアトに加えてタビマエでの可能性も広がるからだ。

トラベロコ椎谷氏(左)とプラザクリエイトの大島氏 (報道資料より)

BtoBマッチングやロコのコミュニティー化にも意欲

椎谷氏は、「他業種との提携でトラベロコのサービスを横展開していきたい」と意欲を示す。海外在住日本人にはさまざまなスキルを持っているため、いろいろな利用の仕方がある。たとえば、現在でも現地視察や通訳、商談サポートなどのサービスも提供しているが、こうした法人案件を「ビジネス・ロコ」としてカテゴリー化して、よりマッチングさせやすくするアイデアも考えているという。CtoCサービスという枠組みの中で、BtoBのマッチングを進化させていく試みだ。

また、トラベロコは「ロコありきのサービス」との認識から、ロコのコミュニティーを形成し、それぞれの知見をシェアすることで、先輩ロコが後輩ロコのメンターになる仕組みも考えているという。「それによって、旅行者の体験の質も上がるし、案内するロコ自身の満足度も上がる」という考えからだ。ただ、その方法については思考錯誤が続いている。

トラベロコのサービスの肝は日本人同士のマッチング。面識のない人と人を結びつけるリスクを下げるために、コミュニケーシュンで阿吽の呼吸が通じる日本人ロコに限っている。しかし、その日本人気質の逆効果として、エリアなどでコミュニティを形成してしまうと、そのコミュニティが閉鎖的になってしまう恐れがある。「それはやりたくない」と椎谷氏。将来的には、海外在住日本人全員の登録を目指し、遊休時間を活用したサービス提供のプラットフォームとしてだけでなく、彼らの情報サイトとしての進化も視野に入れているため、特定コミュニティーが排他的になるのは「目指すところが違う」と明快に話す。

インタビューに応える椎谷氏

課題はCtoCマッチングの理解度向上

Traveloco.photoを立ち上げ、新たな段階に入ったトラベロコ。課題は認知度の向上だ。「ロコの認知度は上ってきたが、ユーザーではまだまだ」。マッチング成立前に、やりたいことについてロコと無料で相談できるQ&Aを設けているが、その実績は増えているものの、そこから成約につながらないケースも多いという。その最大の壁は「このC to Cサービスの仕組みがなかなか理解してもらえない」ことだという。

認知度向上の取り組みのひとつとして、ANAセールスとの提携でANAウェブサイト(ANA Traveler’s)上におすすめ情報としてトラベロコのリンク掲載を始めた。「まずは消費者のマインドを変えていく必要がある」と椎谷氏。今後はファンコミュニティーの形成やアンバサダーの指名など、ユーザーの口コミを広げていく仕組みづくりにも力を入れていく考えだ。

記事 :トラベルジャーナリスト 山田友樹