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ツーリズムEXPO2019開幕、大阪で初開催、国内外の観光リーダーが未来へ提言

ツーリズムEXPOジャパン(TEJ)2019が10月24日開幕した。今回のTEJは、G20首脳会議が開催され、2025年に万博を控える大阪で初めての開催。持続可能な発展のために観光の力が問われ、観光による地域創生に期待が集まるなかで、初日の講演や会合では日本内外のキーパーソンによる提言が飛び交った。

基調講演に登壇したのは世界的な建築家として著名な安藤忠雄氏。建築の領域で国内外のまちづくりにも精通する安藤氏が、これまで参画した各種プロジェクトを披露した。安藤氏は、人が集まる場所が、集める人の視点による経済の効率性や利便性だけで決まるわけではないことを強調。「ここにしかない観光」「ここにしかない人間」「その土地の特性を生かすこと」など、人の心を動かすユニークな存在であることが必要不可欠であると投げかけた。

特筆すべきは、国連世界観光機関(UNWTO)との共催による世界各国の観光大臣が集結した会合だ。そこでは、世界旅行ツーリズム協議会(WTTC)のグロリア・ゲバラ・マンゾ理事長兼CEOが、観光産業の喫緊の課題として「気候変動への取り組み」「政情不安の対応」「持続的な成長」の3点を挙げた。観光産業は全世界のGDPの10.4%を生み出しており、世界で10人に1人の雇用を生み出しているものの、「これを当然と考えず、官民を超えて協力して未来のために雇用創出に向け努力すべき」と指摘した。

観光大臣会合の様子

国連世界観光機関(UNWTO)のズラブ・ポロリカシュヴィリ事務局長は、TEJの直前に台風19号が日本に被害をもたらしたことに言及し、「(気候変動への取り組みで)全世界が、日本がどのように立ち直りより強くなるのかを注意深く見ている。そこから学ぶことがあるはず」と力を込めた。UNWTOでは、気候変動がツーリズムにもたらす影響を模索してきており、提言を加盟国に共有していきたい考えだ。

また、「ジャパン・ツーリズム・アワード」の表彰式も行われた。社会の持続的発展に貢献するツーリズムを創出することを目的に設けられた表彰も今年で5回目。インバウンドによる地方活性化への期待が高まるなかで、国土交通大臣賞を受賞したのは、農泊を事業化した百戦錬磨。同社代表取締役の上山康博氏は、農村でデジタル化が遅れる現状があるものの「オンライン上にないものは、“存在しない”という時代になっている」と指摘。農村に宿泊できる施設があるということを、その体験を求めるユーザーに伝える手助けをしてきた事業であることを説明した。

授賞式の様子

テクノロジーの進展は、ツーリズムにも大きな影響を与えている。インバウンド・観光ビジネス総合展では、VRやARなどの新技術を駆使した新しい観光関連サービスを手がける企業がブースを出展。新たなビジネスチャンスを求める人たちでにぎわった。

ツーリズムEXPOジャパン2019の開催は10月27日まで。10月25日までは業界日、26・27日を一般日としている。

国内外から集まった観光大臣ら。背景は「岸和田のだんじり」