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新型コロナで変わる世界の消費トレンド、アジアの食習慣からヨーロッパのネットショッピングまで

世界各地で猛威をふるっている新型コロナウイルス。日本では2020年4月7日、新型コロナウイルス特措法に伴う緊急事態宣言が出され、全国的にも外出自粛要請する自治体が増えている。ウイルスの感染拡大を通じ、世界の消費習慣が恒久的に変わる可能性があると指摘するのが、マーケティング調査・分析のニールセンだ。

同社が3月中旬、世界70以上の国・地域を対象に実施した意識調査から、日本、そして世界に現れている影響をまとめた(日本での調査はインターネットで2020年3月13~16日に実施。18~65歳の男女、526名が回答した)。

アジアの食習慣、シンガポール型に

まず、アジアで顕著なのが、自宅での食事を優先する傾向だ。感染終息後も「自宅での食事を優先する」と回答したのは、中国86%、香港77%、マレーシア、ベトナム、韓国62%と高い割合。香港、韓国、タイではテイクアウトや宅配の需要も高まっており、レストランやその他ビジネスに与える影響も鮮明になっている。

一方、日本は「自宅での食事を優先する」が30%、食事のテイクアウト、宅配サービスの利用が増えたという人もアジア各国に比べて少なく、3月中旬の段階では食習慣の変化の兆しは小さかったようだ。ニールセン東南アジア総責任者のヴォーン・ライアン氏は、「アジアの食習慣の変化は当初、突然変異的行動かと思われたが、この傾向が2カ月以上にわたり続いている。シンガポールを積極的に食事の宅配を採用している国とし、日本がそうでない国とするなら、以前よりも多くの国がシンガポール型に近づいている」と指摘する。

ニールセン発表資料より

テクノロジーへの対応で未来に備えよ

日本より先に感染拡大が深刻化したヨーロッパでは、多くの労働者が在宅勤務を強いられるなか、食料品を初めてオンラインで購入したり、ソフトウェアを追加利用したりするなど、テクノロジーの活用も加速している。フランス(2020年2月24日の週)、イタリア(2020年3月2日の週)では、以前は少なかった日用品のeコマース市場が前年同週に比べ8割以上増加した。

もっとも、こうした状況であっても、消費者が店舗を完全に放棄するわけではないようだ。ニールセンのデータでは、世界の消費者の半数以上にあたる51%が拡張現実(AR)、仮想現実(VR)を利用したサービスの試用に意欲を示しており、ニールセン韓国eコマースリーダーのJi Hyuk Park氏は、「韓国ではVRやAR技術を小売で使用する例が増えている。新型コロナウイルスの感染拡大により衛生面での懸念が広がるなか、商品を実際に試すことができない消費者に向け、AR技術によりこの体験を再現することができる」という。

図らずも、移動の制限がオンラインショッピングの予想外のきっかけとなっている新型コロナウイルス。テクノロジーに対応した未来に備えることが、多くの小売企業にとって長期的な変革につながるともいえそうだ。

ニールセン発表資料より