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日本政府観光局にインバウンド復活へのシナリオを聞いてきた、3段階の訪日PRから各国の海外旅行再開見通しまで

新型コロナウイルスの感染拡大防止のために各国は厳しい旅行制限を課してきたが、ヨーロッパをはじめ国境を開放する動きも出てきた。それでも、各国のインバウンド市場が回復するまでには相当の時間がかかる見られている。日本も例外ではない。

不確実性が依然として大きいなか、日本政府観光局(JNTO)は、市場回復に向けた道筋をどのように描いているのか。JNTO海外事務所からの情報をもとにした海外市場の動向と今後の訪日プロモーションの方向性についてJNTOに取材した。

各国、国境開放の動きが進むも、海外旅行再開は手探り

JNTO海外事務所からのヒアリングに(2020年6月18日時点)よると、東アジア各国は、国内旅行の規制を緩和しており、海外旅行再開も今年中を予想する。具体的には、韓国と中国はすでに必要性の高い渡航者を優先的に渡航させる「ファストトラック制度」を開始しており、今年の10月~12月に海外旅行も再開を見込む。台湾は、同じく10月~12月を見込むが、まずはオーストラリア、ニュージーランドなどの低感染リスク国から開始し、日本などの中感染リスク国はその後と想定している。香港は最も早く今年7月~9月と予想。中国大陸とマカオの次に日本など近隣諸国への旅行が解禁されると見ている。

一方、東南アジアは厳しい状況。ベトナムについては、すでにビジネス渡航者に限り「例外的な人の往来」を実施し、タイについても交渉を進めているが、海外旅行の再開は「見通しが立たず」と分析している。シンガポール、マレーシア、インドネシア、フィリピン、インドも同様。フィリピンでは、観光大臣が「年内の海外旅行は困難」と発表している。

ヨーロッパでは、すでに6月にEU・シェンゲン協定加盟国域内での旅行が緩和。欧州委員会は、加盟国に対して、域外からの渡航制限を7月1日から段階的に解除する提案を行い、EUはその対象国として日本など14カ国を指定した。

オーストラリアは、まずはニュージーランドや太平洋諸国との「トラベルバブル」を実施した後に、その他の地域への海外旅行を再開する見通し。アメリカは、7月~9月にかけて海外旅行、国内旅行とも段階的に緩和されている見込みだが、訪日については未定のまま。カナダは、アメリカとの国境閉鎖を7月21日まで延長。海外旅行再開の見通しはまだ不確定だ。

日本政府観光局では、「どこの国も国内旅行が戻らないと、インバウンドは戻らない」とみている。日本の「Go Toトラベル」キャンぺーンによって、まずは国内旅行が活気づくことがインバウンドの復興につながると期待している。

3ステップでの訪日プロモーションを想定

こうした各国の状況を踏まえたうえで、日本政府観光局は、今後の訪日プロモーションについて3段階のロードマップで進めていく方針だ。

ステップ1 (国内外で外出制限・自粛が継続)

具体的には、将来的な訪日を夢見ることにつながる発信でバーチャル体験の提供やエンゲージメントを深める一般消費者参加型の企画を実施する。

ステップ2(日本および相手国で国内旅行が再開し、日本への入国制限が段階的に解除)

1.と2.に加え、

海外への安心・安全の情報発信については、国内旅行の盛り上がりが安心・安全の一番のメッセージとなる。各地域が感染防止ガイドラインの遵守を徹底し、その状況を伝えていくとともに、具体的な旅行商品は旅行者トレンドを見ながら支援していく。

ステップ3(観光客の入国制限が解除され、インバウンドの受入環境が整った状況)

1.~5.に加え、

メディアの活用については、一年延期された東京五輪が「いいチャンス」との見解。JNTOとしては、東京五輪をインバウンド復活の契機としていきたい考えだ。

取材時の6月下旬現在は、ステップ1の状況で、ステップ3にたどり着くまでには「相当の時間がかかる」とみる。JNTOでは、このステップは市場ごとに判断し、各市場の最新動向に適切に対応しながら、段階的にプロモーションを拡大していく方針だ。

テーマ性のある観光コンテンツの磨き上げを

JNTOでは旅行再開は、需要が個人旅行から回復し、その後に団体ツアーが追いかけると分析。また、マーケットはミレニアム層や中高年層など旅行ヘビーリピーターによって牽引されると見ている。

そして、旅行者の興味は、安心・安全を前提として、自然、アウトドア、ウェルネスへの関心が高まり、誘客に向けてはこれまでよりも強い動機づけが求められるとの見解だ。こうしたことから、JNTOはコロナ後の旅行者を惹きつけるには「これまで以上にテーマ性のある観光コンテンツの磨き上げが必要になる」とみている。

トラベルジャーナリスト 山田友樹