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海外出張の本格再開に必要なことは? 通信機器レンタルの状況から見える企業の動向から今後の展望まで -トラベルボイスLIVEレポート

テレコムスクエアの海外渡航者向け通信機器レンタル取扱推移

日本政府が今年6月に発表した国際間の往来の段階的措置で、海外ビジネス渡航が少しずつ動き出した。現在、駐在員など長期滞在者用の「レジデンストラック」は対象の国地域が11か国地域、短期出張者用の ビジネストラックは4か国に広がっている。

海外業務渡航が徐々に再開される中、トラベルボイスとWi-Fiルーターや携帯電話のレンタルなどを行うテレコムスクエアは11月19日と26日、オンラインセミナー「トラベルボイスLIVE」を開催。テレコムスクエア取締役通信営業本部長田村正泰氏が、顧客企業に実施したアンケートや同社の海外出張での受注状況をもとに、業務渡航をしている企業や出張者のリアルな姿にスポットを当てながら、現状のニーズや今後の動向を展望した。

海外出張の本格再開に必要なのは“スパイラル”

テレコムスクエアが海外用のWi-Fiルーターレンタルを契約する顧客企業に対して実施したアンケートによると、海外出張の再開タイミングについて「すでに再開」と回答した企業は11%。それ以外の企業は、今後「3か月以内(9%)」、「半年以内(26%)」、「1年以内(54%)」などの回答であったものの、田村氏は「現状ではまだ、具体的なタイミングが見えていない企業が多いのではないか」と推察する。

一方、国内出張では「すでに再開」が81%で、これは「GoToトラベルの影響が大きいだろう」と、当初は出張も適用であった需要喚起策の効果を指摘。「国内旅行の回復の渦に乗って、国内出張をする人が増えた」とし、「海外出張も実施する企業が増えていけば、スパイラルが起こる」と今後の推移を展望した。

さらに、コロナ禍で海外出張に代わって浸透したウェブミーティングに関して、感染終息後の通常時に行う場合に「対面」と「ウェブ」のどちらが効果的かを聞いた質問では、「対面(77%)」が「ウェブ(5%)」「どちらも変わらない(12%)」と比べ、圧倒的な支持を得た。

では現在、何が海外出張の障壁となっているか。アンケートでは、「会社の出張禁止命令(20%)」や「出張者自身の海外渡航に対する不安(3%)」を抑え、「出入国規制や隔離措置(76%)」が最多となった。田村氏は、「業務渡航は会社が行く判断をするので、出張者自身の不安は壁になっていない。やはり、実際に渡航できるかどうかが障壁になっているのが見て取れる」と説明する。

これらを踏まえ、田村氏は「(商談や会議は)リアルに勝るものはなく、各国の規制がなくなり、周囲が海外出張を再開し始めれば行くという潜在ニーズは非常に大きい」と断言。目先で見れば、「急速に需要が拡大する可能性は十分にある」と展望する。

テレコムスクエア取締役通信営業本部長田村正泰氏(左)とトラベルボイス代表取締役社長CEOの鶴本浩司(右) 

海外出張の拡大には正しい情報の浸透が不可欠

では、コロナ期の海外出張で必要なものは何か。それは、渡航時の規制や条件など、手続きに関する情報だ。田村氏はその種類を、次の4つに分けて説明。

  1. 渡航可否:日本からの入国を受け入れているか
  2. 隔離措置:現地入国と日本帰国時に(主に14日間の)隔離措置があるか
  3. 渡航のための手続き:査証等の入国許可、現地の行動計画書・健康申告、PCR検査の陰性証明書など
  4. その他必須事項:追跡アプリのインストール、現地携帯電話番号

田村氏はこのうち、国地域によって大きく異なる「3.渡航のための手続き」と「4.その他、必須事項」に言及。例えば、「3」の査証等の申請時に求められるPCR等の検査については、中国やハワイのように検査する医療機関が指定されていたり、中国のように抗体検査も必要になるケースがあるなど、渡航先それぞれにルールがあり、必要な準備が異なる。

これに関連して田村氏は、経済産業省がPCR等の検査が可能な医療機関を検索・予約できるサイト「TeCoT(海外渡航者新型コロナウイルス検査センター)」を開設したことを紹介した。

また、「4」の現地の携帯電話番号に関しては、台湾で必要になる例を説明。台湾政府は、現地滞在者の行動を携帯電話の番号で追跡しており、国際ローミングで繋ぐ日本の電話番号ではなく、台湾の携帯電話番号の携行が求められる。

田村氏は、各国の渡航条件や規制は随時更新されていると注意をした上で、「こうした情報を把握しきれておらず、出張に行ける状況であることが分からないから、行かない人もいる」と話し、海外出張の再開には、正しい情報の提供と浸透が欠かせないと強調した。

海外出張再開の3つのフェーズ

さらに田村氏は、テレコムスクエアの海外渡航者向け通信機器レンタルの受注状況から、海外出張者の動向も推察。母数は決して大きくはないとしながらも、6月以降は右肩上がりに推移している。そのレンタル日数は平時が平均10日間程度に対し、コロナ期は平均50日~60日など長期であるのが特徴だという。

これについて田村氏は、「6月以降、海外出張をしていたのは、“Must”で行かなくてはいけない人たち」と説明。海外赴任の入れ替えや、どうしても現地に行く必要のある保守や修理をする技術者の出張が多く、レンタル期間が長期化したと話した。

テレコムスクエアの海外渡航者向け通信機器レンタル取扱推移

最近は平均日数が減少傾向にあり、「短期の渡航が緩和されていく中で、短期で行く人も出始めた」と変化の兆しを指摘。これらを踏まえ、田村氏は今後の海外出張市場の推移について、行かなければならない人が行く「渡航再開期」から、行くべき人が行く「渡航拡大期」、行きたい人が行く「渡航伸長期」への3段階で回復していくと展望。

日本政府による感染症危険情報の引き下げや、2か国地域間のトラベルバブル形成による「ビジネストラック」の運用などが次のフェーズに移るきっかけになり、現在は「行くべき人が行く『拡大期』に足を踏み入れたところ」との考えを示した。

その上で今後、より多くの人が早期に出張を再開するようになるには、「行くべき人が行っている状況が加速するよう、業界全体で正しい情報を出していくことが非常に大切」と話し、改めて情報の発信と浸透の重要性を強調した。

海外出張の市場拡大の3つのフェーズ

海外出張の不安を解消するソリューション提供を

それでは、旅行会社や関係事業者が海外出張マーケットで今、できることは何か。

田村氏は「出張者は不安を持ちながら渡航をすることになるので、コロナ期特有の不安を解消するソリューションの提供」と提案。同社の取り組みを紹介した。

例えば、台湾への渡航では前述の通り、現地電話番号が必要になることから、ガラケーレンタルの新プランを設定。また、各国が求める追跡アプリや健康管理アプリのインストール用に、SIMカードなしの“カラのスマホ”のレンタルも開始した。さらに、渡航中のパンデミック発生時にも対応できる救援支援の新サービスや、飛行機内の乾燥対策や旅先での快適性にこだわった和紙製の旅行用マスクも開発したという。

田村氏の発表を受け、トラベルボイス鶴本はアンケート結果で、海外出張者の7割超が「対面の方が効果的」と回答していることに、「印象的だった。海外出張はリアルに会ってビジネスをするニーズが高いことを改めて感じた」と言及した。