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2020年の旅行業の倒産件数は低水準、一方で業績回復見えず過剰債務の恐れ、転業や廃業への支援不可欠に -東京商工リサーチ

東京商工リサーチによると、2020年の旅行業の倒産件数は前年比4%増の26件だった。コロナ禍でも件数は、過去20年間で2番目の低水準。観光需要は激減したが、政府や自治体、金融機関による資金繰り支援策、持続化給付金、雇用調整助成金などが倒産を抑制。政府による観光需要支援策「GoToトラベル」も追い風になった。

もっとも、2020年の負債総額は299億7200万円で、「てるみくらぶ」による大型倒産が発生した2017年以来、3年ぶりに200億円を超え、過去20年間で最大となった。2020年6月に民事再生法の適用を申請したホワイト・ベア―ファミリー(大阪、負債278億円)が、旅行業として平成以降の倒産として最大の負債額で全体を押し上げた。

東京商工リサーチより

原因別では、新型コロナウイルス感染拡大が原因の倒産が7件発生した。「不況型倒産」は26件中、約9割の23件。OTAの台頭でジリ貧に陥っていた旅行業者にとって、コロナ禍による旅行需要消失が追い打ちをかけ、先行きの見通しが立たず、事業継続を断念せざるをえなかった。

東京商工リサーチより

ただ、GoToトラベル事業は新型コロナ第3波の襲来で停止に追い込まれており、大手旅行会社も軒並み赤字決算を発表している。早期・希望退職の実施を打ち出した企業もあり、東京商工リサーチがまとめた「2020年1~10月の休廃業・解散動向調査」によると、同期間中に休廃業・解散にいたった旅行業者は前年同期の1.4倍に増加している。

東京商工リサーチは「支援策としての借入金が、業績回復の遅れから過剰債務に陥り債務超過となる前に、事業継続を断念した企業が増えている」と分析。2021年も首都圏に緊急事態宣言が再発令されるなど、コロナ収束がみえない中、倒産回避策だけでなく、転業や廃業への支援も必要になると指摘している。