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ヨーロッパで高まる旅行意欲、ワクチン開始で明るい兆し、今後6か月以内の旅行検討は52%、旅行先は「欧州域内」が4割

欧州旅行委員会(ETC)がこのほどまとめた域内および国内旅行についての意識調査で、2021年4月以降には旅行したいと考えている人が増加傾向にあることが分かった。現在、欧州では感染拡大が続き、出入国の規制が厳しくなっているものの、昨年12月の調査ではワクチン接種開始のニュースなどが大きく影響しているとの見方を示している。

同調査「Monitoring Sentiment for Domestic and Intra-European Travel」は2020年秋から12月にかけて計4回実施しており、最終的には計6回を予定している。調査対象国はドイツ、英国、フランス、オランダ、イタリア、ベルギー、スイス、スペイン、ポーランド、オーストリアの10カ国。回答者数は計5742人。

このうち4回目となる12月の調査結果では、「2021年4~6月に旅行したい」との回答が全体の32%を占め、前回調査(2020年11月)時点に比べて20%増となった。また、「今後6か月以内の旅行」を考えている人も前回比5%増で全体の52%となり半分以上を占めるなど、旅行意欲の高まりを示唆する内容となった。

加えて、「厳格な健康・安全対策のプロトコルが導入されている地域のほうが、安心して旅行できる」と答えた人が全体の67%と多数を占める一方、「厳しいプロトコル導入は旅行の魅力を損なう」と否定的な人は22%にとどまった。以下に調査結果を抜粋して紹介する。

宿泊を伴う旅行(仕事目的を含む)について、6か月以内に出かける意欲を問う質問では、年齢別の温度差も見られた。最も旅行意欲が高いのは25~34歳の世代で、5段階回答のうち、「旅行する可能性は高い(Likely)」「非常に高い(Very Likely)」を選んだ人は計56.2%と、全体の半分以上を占めた。

続いて高かったのは45~54歳(全体の54.2%)と35~44歳(同51.9%)。一方、調査対象の中で最も若いZ世代(18~24歳)で、旅行意欲は最も低く同46.5%にとどまった。

また55歳以上では同50.4%となったものの、別の質問に対し、「次に旅行するのがいつになるかまだ分からない」と答えた人も全体の45%を占めた。他の年代では、同質問への答えは34%前後だった。

年代別・旅行意欲(調査資料より)

「今後6か月以内の旅行を考えている」と回答した約3000人に対し、その目的について詳細を聞いた質問では、都市に滞在する「シティライフ志向」の旅が、計4回の調査すべてで3割以上を占め最も多かった。続いて「現地をゆっくり体験」が2割以上。3番目に多かったのは、1~3回調査では「ガストロノミー(食文化体験)」だったが、調査時期が冬に入った4回目は「太陽とビーチ」が急伸した。

前述の通り、第4回目の調査では、旅行する具体的な時期と行き先に関する質問で、「5~6か月以内(注:調査時点では2021年4~6月に該当)」を選んだ人が、前回より20%増と大きく増えた。これは調査時期に、ワクチン接種スタートの報道が出たことも影響しているとETCでは分析している。ただし「時期は分からない」を選んだ人も全体の36.3%を占めており、こちらも依然として高い数字だ。

今後6か月以内の旅行先については、「国内」(35.6%)よりも「ヨーロッパ域内」(40.0%)が上回り、前回調査と逆転。欧州内の国境を超えることへの不安は和らいだ印象だが、「ヨーロッパ域外」は13.3%にとどまった。国別では、トップ4カ国をスペイン、イタリア、フランス、ギリシャが占め、避寒地の人気が伺える。

時系列でみた「旅行の時期と行き先」(調査資料より)

第4回調査で「6か月以内の旅行を考えている」と答えた人が、具体的な旅のプランとして考えているのは、「都市での休暇(city break)」(17.2%)が最多。次いで「太陽とビーチ(Sun&Beach)(16.2%)」、「文化・歴史遺産(Culture&Heritage)」(13.9%)、「自然・アウトドア(Nature&Outdoors)」(12.2%)となった。

一方、旅行プランの内容では、国別の違いも顕著だ。例えばスペインの回答者では、全体の4割近くが都市観光を支持する一方、イタリアでは同3割以上が文化・歴史遺産、英国では同3割近くがビーチ志向を示した。また自然・アウトドアへの支持は、オーストリアやドイツ、オランダなど中欧エリアで高い傾向が見られた。

なお、全ての回答者を対象に、「旅行に求める要素のなかで、一年前と比較して、重要性が増したものは何か?」との質問では、「健康と安全(Health&Safety)」を挙げた人が最も多く全体の22.5%。次いで「リラクゼーションと癒し(Relaxation& Peace of mind)」(14.6%)、「予算の範囲内(Affordability)」(10.3%)となった。

旅行をする際の重要な要素(調査資料より)

資料の詳細は下記から参照できる。

MONITORING SENTIMENT FOR DOMESTIC AND INTRA-EUROPEAN TRAVEL – WAVE 4(英語)