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ヤフーとLINEが正式統合、旅行予約ではAIでマッチング精度向上へ、「LINE Pay」は「PayPay」に統合

ヤフーを傘下に持つZホールディングス(ZHD)とLINEとの経営統合が2021年3月1日に正式に発表された。これにより、新生Zホールディングスは、国内で200超のサービスを提供し、国内総利用者数は3億超、国内総クライアント数は約1500万、自治体との総連携案件数は3000超となり、情報、決済、コミュニケーションという3領域を起点にした国内最大規模のインターネットサービス企業グループとなった。

ZHD社長兼共同最高責任者の川邊健太郎氏は発表会見で、「統合を成功させるキーテクノロジーはAI、リアルタイム、バラエティーに富んだビックデータ。それらをすべてのサービスで実装していく」と強調。また、LINEから新たにZHD共同最高経営責任者として加わった出澤剛氏は「ユーザーにとって価値のある統合にならないと意味がない」として、今後のサービス展開への意気込みを示した。

ZHDは、ヤフーとLINEを中心に、「検索・ポータル」「広告」「メッセンジャー」を「根幹領域」と位置づけたうえで、インターネットで社会課題の解決が見込める領域として「コマース」「ローカル・バーティカル」「Fintech(フィンテック)」「社会」の4つを「集中領域」と定め、新体制のもとでシナジー効果の創出と事業の成長を進めながら、2023年度で売上収益2兆円、営業利益は過去最高となる2250億円を目指す。

川邊氏は、数年で数兆円を上積みするのは簡単なことではないとしたうえで、「広告マーケティング、LINEでのEコマース、フィンテックが売上に貢献していくだろう」との考えを示した。

また、AIを中心に各事業を成長させるため、5年間で5000億円の投資を計画するとともに、5年間で国内外から5000人のエンジニアを増員する計画を明らかにした。

オンラインプレゼンテーションより

旅行予約ではAIでマッチング精度向上、旅行キャンセル専用保険も

集中領域のうち「コマース」では、LINEなどを活用した「ソーシャルコマース」を展開していく。将来的に「LINEギフト」を「Yahoo!ショッピング」などと連携していくほか、LINE上での友だちとの「共同購入」、インフルエンサーなどが商品紹介を行う「ライブコマース」を提供していく。さらに、オンラインと実店舗の商品データを連携させた「X(クロス)ショッピング」、中長期的には実店舗でのダイナミックプライシング「My Price構想」も検討していく。

このほか、事業者向けには、NAVERの知見を活かし、自社ECサイトの構築・運営、分析、接客・送客などが可能なECソリューション「Smart Store Project」を、2021年上半期に提供開始する予定だ。

旅行・飲食予約の分野を含む「ローカル・バーティカル」では、予約・送客に加え、AIを活用することで、ユーザーとのマッチング精度の向上を目指す。飲食予約では、LINEで新たに「LINE PLACE」もローンチする予定。

さらに、広告では「Yahoo! JAPAN」「LINE」「PayPay」を連携させることで、事業者向けに新たなマーケティングソリューションを提供。例えば、「Yahoo! JAPAN」や「LINE」のメディア上などで広告を配信し、特定の商品を購入した方にのみ、改めてお得なクーポンを届け再購入を促すなど、効率的かつ継続的なアプローチを実現していく。

オンラインプレゼンテーションより「フィンテック」では、「買う」「予約する」「支払う」といったユーザーのアクションにあわせて、ローンや投資商品、保険などニーズにあった最適な金融商品をさまざまの金融パートナーとの協業で提案。旅行関連では、柔軟な予約行動を支援するためキャンセル専用の保険商品の開発も進めていく考えだ。

また、2022年4月を目処に「LINE Pay」を「PayPay」に統合する計画も発表された。

「社会」では、行政DX、防災、ヘルスケアの3分野を柱として、官民連携を活かした日本のDX推進に貢献していく。行政DXでは、全国の自治体向けにワクチン接種の手続きをLINEで完結できる仕組みを提案していくほか、引っ越しの手続きなどの簡素化も進めていきたい考えだ。また、今年中に内閣府の「マイナポータル」と連携した行政手続きのオンライン申請サービスを開始する。

ローカルに根ざしたスーパーアプリで海外展開を加速

川邊氏は記者会見で「日本あるいはアジアから世界をリードするAIテックカンパニーに」と話し、海外展開を加速させることを明らかにした。昨年11月の統合に合意した時の発表では、「GAFAやBATなどともに世界の第3極」を目指すと意欲を示していたが、コロナ禍でGAFAなどとは体力差が開いたこととを認めつつ、「今後は、ローカルに根ざした対応力を強めていく。ZHDが優れている点はグループ企業を含めた守備範囲の広さ。グループの総合力を生かしていく」とした。

また、出澤氏も「ユーザーにとっては、どこのサービスかは関係ない。便利かどうかがすべて。ユーザーが困っている点に真剣に取り組み、同質化ではなく差別化で圧倒的なサービスを提供していきたい」と話した。

さらに、スーパーアプリ化についても言及。川邊氏は「ZHDは、LINE、Yahooアプリ、PayPayがスーパーアプリになる可能性がある。それぞれの既存のサービス特性を活かしながら、発展させていける」と発言。出澤氏は「ソフトバンク、NAVERという強力な親会社があり、グループ会社も増えたので、海外に一気に出ていける新しいサービスも創出していきたい」と期待感を表した。