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サービス連合、コロナ禍の影響を大きく受けた春闘の結果発表、業種間で濃淡

サービス・ツーリズム産業労働組合連合会(サービス連合)が、2021年春季生活闘争(春闘)の結果を発表した。今春闘は、コロナによって1年超にわたり人流の停止・抑制が続いた影響を大きく受けた。先行きが見通せない中、労働条件の引き下げを判断する加盟組合や、労使での日常的な協議で闘争体制を組まずに取り組みをした加盟組合もあった。

また、サービス連合の加盟組合のなかでも、取り巻く環境が異なる中で、業種の差がみられる結果となった。人流が止まり、業績が悪化したホテル・レジャーとツーリズムでは、事業と雇用を守る取り組みが最優先された。一方、コロナ禍でも荷動きが堅調だった国際航空貨物は、業績と支給水準のバランスについて協議をする組合もあったという。

2021年春闘では要求書を提出した組合の数は、全152組合中97組合で、前年よりも12組合減少。89組合が合意した(2021年6月19日までの集計分)。

このうち、賃金改善を要求した組合数は69組合で、合意は44組合。実質的な賃金改善に取り組んだ組合もあるが、多くの組合は定昇確保が焦点になった。合意額の結果は、開示できる状態まで把握できていないとして、要求額の開示にとどめた。

また、一時金の交渉は年間での合意が8組合、夏期分が52組合。業績の見極めが厳しい中で継続協議になったり、年間での要求が夏期分の合意となる組合もあった。年間一時金の平均月数は3.10カ月(前年比0.69カ月増)。夏期一時金の平均月数は0.66カ月(同0.16カ月減)。いずれも、国際航空貨物(年間:4.57カ月・1.07カ月増、夏期2.28カ月・0.66カ月増)が全体の平均月数を引き上げた。

このほか、最低保証賃金や総実労働時間の短縮、有給休暇取得促進などに加え、コロナ禍でのテレワーク制度や副業・兼業の制度導入・整備に合意した加盟組合もあった。

現状と将来への対応、労働組合が果たす役割

サービス連合では引き続き、中期的な賃金目標「35歳年収550万円」の考えを堅持。雇用と事業を守る支援を行いながら、コロナ禍で下がった労働条件を取り戻し、さらなる引き上げに取り組む。そのために組織強化と組織拡大にも注力。コロナ禍で加盟組合には雇用問題が発生していることから、加盟組合の組織問題の対応や組織強化にあたる「雇用対策局」も設置した。すべての加盟組合に担当者を配置し、日常活動の支援を直接的に行う。

サービス連合会長の後藤常康氏は「(人流が止まった期間の)1年半は長すぎる。商売としてよい印象を持たれていないという認識をせざるを得ない」との危機感を話した。現況への対応はもちろん、産業を支える人材の確保・定着と魅力ある産業の実現に向けて、労働組合が果たす役割の重要性を強調した。

サービス連合ではこれまでも、働く者の立場からの政策立案に取り組んできたが、今期からは従来の「産業政策」に「労働政策」と「社会政策」を加え、一体的に議論できる仕組み作りに着手。困難な状況下でも将来を見据え、産業で働く人々の地位と労働環境の向上に向けた運動を進めていく。

なお、サービス連合は副会長に、初の女性、かつ、専従者となる櫻田あすか氏(帝国ホテル労働組合)を選定した。男女平等参画社会の推進を、さらに強める方針だ。