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日本政府観光局、「サステナブル観光」を強化、欧州が重視するSDGsの取り組みがカギ、バーチャルツアー+越境ECも

日本政府観光局(JNTO)は、世界の旅行者のあいだで環境に対する意識が変化していることから、サステナブルツーリズムの取り組みを強化する。2021年度中には、日本各地のサステナブルツーリズムのコンテンツをまとめて発信する予定だ。

JNTO理事の蔵持京治氏は定例会見で、JNTOパリ事務所が実施したフランス人の日本のサステナビリティへの取り組みの印象に関する調査について説明。訪日経験者では「過剰なプラスティックの消費」、「商品の過剰包装」、「大量消費」などネガティブな意見も多かったことから、蔵持氏は「この時期に、地域でサステナブルツーリズムへの課題をどのように改善していくか考えていくことが求められる」との見解を示した。

また、世界的なサステナブルツーリズム認証団体「グリーン・デスティネーション」が選出した「世界の持続可能な観光地トップ100選」に、日本から最多の12地域が選出されたことにも触れ、「日本の観光地の環境への取り組み高く評価されている」と指摘。今後、特に環境意識の高い欧州からの誘客については、SDGsに対する取り組みが鍵となる考えを示した。

JNTOとしては、地域の「環境」「文化」「経済」をそれぞれ守り、育んでいく視点で、サステナブルツーリズムを推進していく方針だ。

このほか、今後のインバウンド市場について、各種調査で近場の国・地域からの旅行者から回復するとの結果が出ているが、「必ずしもそうはならないだろう。各国・地域の水際対策次第。JNTOとしては、様々なシミュレーションを行なっていく必要がある」との認識を示した。

さらに、現在、世界ではコロナ禍によって貯蓄率(可処分所得)が大幅に増加しており、その貯蓄が旅行・観光に向かうとの予測から、「日本がこの需要をどれだけ取り込むことができるか。世界との勝負になる」と強調。そのために、JNTOとしては、積極的な情報発信と共に、地域の受け入れ体制の充実を支援していくとした。

JNTOの方針を説明する蔵持氏越境ECや情報発信で地域との連携強化

JNTOでは、コロナ禍で地域の観光を支援する取り組みを展開。そのひとつとして、「バーチャルライブツアーと越境EC」の事業を実施している。2021年度は中国市場を対象に、試行的に全国8ブロックで計8回行う予定だ。

旅行サービスプラットフォーム「フリギー」と配信プラットフォーム「タオバオライブ」で同時に地域の観光情報と地場産品を紹介するとともに、越境ECサイト「Tmall Global」と連携し、ライブ配信中に紹介された商品の販売を行なう。すでに、9月には九州、10月には東北・新潟で実施。ライブ配信の視聴者数は第1回が約21万人、第2回が約43万人となり、「当初予想の6万人を大きく上回った」(企画総室の張氏)。

このほか、地域連携の取り組みとして、各地域から収集した体験型コンテンツをネイティブライターの記事作成で発信する「Experience in Japan」を6言語で実施。2022年3月まで、各言語75件、計450件のコンテンツを追加する。

JNTOでは、収集事業に参加した自治体やDMOに向けて、「観光コンテンツ造成のポイント」や「受入体制のチェックポイント」などをフィードバックするとともに、Experience in Japanに掲載されたコンテンツを日本語に翻訳し、各地域に紹介するなど、連携を深めることで、地域のインバウンドマーケティングの高度化を支援していく。