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旅行・観光トレンド最前線の国際会議「WiT Japan」、2年ぶりに開催決定、グーグルからOTAセッションまで、見どころを聞いてきた

デジタル旅行の国際会議「WiT (Web in Travel) JAPAN & NORTH ASIA」が2022年1月14日と15日に開催される。2021年は7月に開催予定だったが、コロナ禍の影響で延期。今回は2年ぶりの開催となる。

2021年にシンガポールで開催されたWiTをモデルに、リアル会場とオンライン配信を併用したハイブリッド形式で実施。国内外から観光分野のキーパーソンが参加し、アフターコロナを見据えた新しい観光のあり方を議論する。その見どころについて、WiT Japan & North Asia実行委員長の柴田啓氏と副実行委員長の浅⽣亜也氏に聞いてみた。

テーマは「ホームカミング」、日本のデジタル旅行の情報を発信

WiT JAPAN & NORTH ASIAは毎年6月に開催されていたが、2020年はコロナ禍の影響で延期を繰り返し、11月にオンラインのみで特別プログラムを開催するにとどまり、2021年も感染状況が好転しないことから7月の開催予定が中止された。

デジタル旅行に関する海外との情報交換がほぼ2年にわたって止まったままになっていることについて、柴田氏は「海外から日本の現状が分からなくなり、日本がブラックボックス化している。これは、日本の観光産業にとって良くない。日本から積極的に情報を発信していく必要がある」と指摘。また、浅⽣氏は「世界の観光産業がグラウンドゼロを経験した。WiTがイニシアティブを取らなければいけない」と話し、苦境が続く中だからこそ、WiT開催の意義の大きさを強調した。

今回のWiTのテーマは「ホームカミング」。コロナ禍でオンラインによる会議やイベントが増えたが、逆に「リアルの重要性が再認識されている」(柴田氏)ことから、ハイブリッドでの開催を決めた。厳しい入国制限が続くなか、オンラインでも繋ぐことで、これまで参加できなかったスピーカーも登壇が可能になり、総参加者もリアルオンリーよりも増えると期待されている。

「リアルで人に会うのは価値がある」と話す柴田氏注目セッションが目白押し

ハイブリッドだからこそ、グーグルのAPACトラベル&バーティカル・サーチのリーダーであるHermione Joye氏の参加も可能になった。彼女からはグーグルの消費者データから見る旅行者の行動変容が紹介される予定だ。

柴田氏が注目しているセッションのひとつが、ワーケーションなどをテーマにした「The Way We Live, Work & Play」。「ワーケーションやリモートワークなどの普及によって、ライフとトラベルの垣根が低くなっている」(柴田氏)との認識から、このセッションを設けた。定額制多拠点生活を提案するADDress、お寺ステイを展開するShareWing、滞在施設と研修・体験コンテンツをマッチングするPerkUpが登壇する。

また、欧米ではバケーションレンタルなどの利用で長期滞在が急速に伸びているが、WiTでは日本の状況を深掘り。「Indie & Alternative: The Changing Wave in Hospitality」というテーマで、楽天Lifull StayとAirbnb Japanが新しい宿泊スタイルについて議論を展開する予定だ。

加えて、柴田氏は今日的な話題として「Airlines & Sustainability」にも注目していると話す。国際航空運送協会(IATA)は2050年までの航空機からのCO2排出量実質ゼロを目指すと表明。その目標に向かってロードマップを進めている大手航空会社も多い。このセッションでは、航空業界でのゼロエミッションを支援するEnvest Globalエグゼクティブ・ディレクターのDavid Wills氏が最新のリポートを発表する。

浅⽣氏はホスピタリティ産業での最新動向に注目。「コロナ禍で各国とも国内旅行が中心になっているなか、グローバルホテルチェーンの国際的なマーケティング戦略を聞ける機会」と捉えている。このセッションでは、IHG、ハイアット、ソラーレ・ホテルズ&リゾートが登壇。旅行者の行動が変容しているなか、今後の需要回復に向けた戦略などで意見交換を行う。

「リアルで人と繋がり、オンラインで世界と繋がる」と話す浅生氏このほか、恒例のOTAセッションでは、グローバルOTAとしてブッキング・ドットコム、アゴダ、エクスペディアのキーパーソンが登壇するほか、タビナカ予約のクルックの共同設立者もWiT創業者のシュウ・フーン氏と議論を交わす。

日本からはJTB、楽天トラベル、リクルート、一休が、それぞれの立場から日本市場の動向を洞察。新たに海外旅行OTAとして立ち上げられた令和トラベルも登場する。

クロージングはJTBの山北栄二郎氏が登壇し、「継続は力なり」をテーマに、将来に向けた日本の観光産業を総括する予定だ。

今年で10周年、オンライン参加は無料に

リアルの参加費は2日間で6万円。オンラインは無料で提供する。柴田氏は「パンデミックの中、大変なことも多いが、新しいテクノロジーに触れて、新しい変革を知ること、刺激し合うことは大切なこと。WiTをリアルとオンラインで繋ぐことで、2022年をいい年としてキックオフできれば」と期待を寄せる。

また、浅⽣氏はWiTが10周年を迎えることに触れ、「第一回の開催は震災からの復興の意味を込めた。今回のWiTもコロナによるグラウンドゼロからの復活にしていきたい」と意気込みを示した。

Wit Japan and Northasia 2022