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ANA新社長の井上氏「1日も早い黒字化を」、航空事業メインの経営からの脱却、デジタルプラットフォームに期待

2022年4月1日付けでANA代表取締役社長に就任する井上慎一氏と、現ANA代表取締役社長でANAホールディングス(ANA HD)取締役副会長に就任する平子裕志氏が就任会見を開き、今後の抱負やアフターコロナを見据えた事業展開の見通しを述べた。

平子氏は、社長交代について、「ダイバシティやインクルージョンなど多様な価値を加速させていくなかで、その時代を牽引するのに最適な人物。また、その明るく元気なDNAも社長としての資質として重要」と井上氏を評したうえで、コロナ禍で任期を1年延期したなかで、新たなビジネスモデルを策定し、アクションプランに落とし込む目処がついたため、バトンタッチに至ったと説明した。

一方、井上氏は、「一丁目一番地の取り組みである安全運航と定時性を妥協なく愚直に進めていく」としたうえで、「1日も早い黒字化の達成を目指す」と強調。その方法のひとつとして、コロナ禍で顧客ニーズが変化していることから、「利用者の本質的欲求を把握し、それを商品やサービスに反映していく」ことを挙げた。また、コロナ禍ではファンに支えてもらったという思いから、「顧客とのコミュニケーションをさらに大事にして、ANAファンを増やしていきたい」と意気込みを示した。

また、社員とのエンゲージメントを強めることで、働くモチベーションを上げていくことも社長としての役割として、「黒字化には社員が活躍できる場を作ることも大切」との認識を表したほか、ANAが積み上げてきたカルチャーを重視する姿勢を示し、「ANAはかつて、挑戦と努力をを惜しまない野武士集団と言われていた。挑戦しないと未来はない。その原点に戻ることも黒字化につながる」と述べた。

今後の需要は?国際線は「簡単に元の便数に戻せない」

井上氏は、今後の需要の見通しについても言及。国際線については「そう簡単に元の便数には戻せない」としたうえで、「こういう時こそ、アライアンスが違う意味を持ってくる。スターアライアンスとして新しい展開があるのではないか」と発言した。国内線については、LCCピーチ・アビエーションとの共同マーケティングに触れ、「移住が進み、働き方も変わっているなかで、今後は両社のリソースを最大限に活用し、先手先手で路線展開に対応していく」考えを示した。

2011年にピーチアビエーションを立ち上げた井上氏は、「LCCにも定時性が求められるようになっている」と指摘。LCCの意義も変化しているとし、今後日本でも欧州のように「一人の利用者がビジネスではフルサービスで、レジャーではLCCを利用することが起きるのではないか」と見通した。

会見で今後のANAについて語る井上氏(左)と平子氏このほか、現在、井上氏が社長を務めるANA Xが進めるデジタルプラットフォームについて、「非日常の航空に加えて、日常での顧客接点を増やすことで収入の機会が増える。データも集まるため、さまざまなビジネス展開も可能になるだろう」と話し、非航空系の柱としての展開に期待をかけた。

平子氏も、ANA HDの副会長として、「航空事業の一本足経営からの脱却を進めていくために、より俯瞰的にANAグループを見ていく」として、現在グループの収入の8割を占める航空事業以外のビジネスを伸ばしていく考えを改めて強調。また、脱炭素化への取り組みを強化していく方針を示し、SAF(持続可能な航空燃料)などで「業界横断的に取り組んでいく」考えを明らかにした。