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いま旅行マーケターがデジタルで優先すべきこと、脱クッキー時代に必要な対応を整理した【外電】

ウェブサイト上のユーザーの行動を追跡するサードパーティ・クッキー(Cookie)が姿を消しつつある。この変化に対する備えを旅行マーケターが怠るなら、観光産業全体にとって大きなマイナスになるだろう。アップルはすでに2017年から、ブラウザ「サファリ(Safari)」でクッキーのサポートを終了。グーグルも2023年中にサードパーティ・クッキーのサポートを停止予定だ。

世界のウェブユーザーのうち64%がグーグルが提供するブラウザ「クローム(Chrome)」を利用しているため、グーグルのサポート終了が旅行ターゲティング広告に与える打撃は、これまで以上に深刻だ。現在、企業の62%(フォーカスライトのレポート調べ)は、クッキーが使えない時代に即した広告戦略作りを、最優先事項に挙げている。

観光事業者にとって、サードパーティ・クッキーが使えない状況は不安だろうが、これを顧客との関係作りに本気で着手する好機到来と捉え、「余計なお世話」にならない手法へと転換するべきだ。広告戦略の見直しに成功すれば、ホテルへの直接予約を増やし、ブランドに対する信頼も高めることができる。

クッキーが砕け散ってしまえば、ホテル各社は古い手法からの脱却へと動かざるを得ない。一人ひとりにパーソナライズした体験を届け、それが旅行者の予約促進にもつながる新体制へと移行することになるだろう。

そもそもクッキーとは何か?

クッキーが登場してから30年ほどになるが、デジタル広告において、なくてはならない存在だ。数多くのインターネット・ブラウザで使われており、消費者を一対一でターゲットに据え、追跡している。例えば、ウェブサイトにアクセスしたユーザーを追跡し、データを収集し、広告を表示したり、リターゲティングや複数サイトにまたがりトラッキングをしたり。なかでも最も重要なクッキーの役割は、自社サイトへユーザーを誘導し、直接予約を増やすのに貢献してくれる点だ。

ファーストパーティ・クッキーが追跡できるのは、自社サイト内における利用者の動きまでだが、サードパーティ・クッキーは文字通り「第三者(サードパーティ)」の、つまり自社以外の複数サイトを横断する動きも追跡し、匿名のままでも機能する。

マーケターにとって、サードパーティ・クッキーは長い間、頼りになる存在だったが、消費者の立場になると違う見方になる。個人情報の保護、自分で自分の情報を管理したい、希望に合わせた調整ができるようにするべき、といった声が高まるなかで、グーグルはサードパーティ・クッキーのサポート停止を決断した。マーケターは、キャンペーンやリターゲティングで問題が生じないよう、すべてが完全に停まってしまう前に、対応に動き出す必要がある。何年もの間、スタンダードだったクッキーが使えなくなるのは悪いニュースだと思うかもしれないが、結論から言うと、そもそもサードパーティ・クッキーの必要性は、そこまで高くないのだ。

ファーストパーティでも成功できる

サードパーティ・クッキーが使えなくなると、マーケターはこれまで以上にファーストパーティ・クッキーに頼ることになるが、これはむしろ良い。サードパーティ・クッキーと違い、ファーストパーティ・クッキーは自社サイト内で使うもので、サイトにログインしていない訪問者のデータも収集する。ファーストパーティのデータは、実際にアクセスしてきた人から直接取得しているので、確実に、自社サービスに何らかの関心を持っている人のデータが蓄積されていく。この情報を活用すれば、顧客の興味関心や好み、予約時の行動パターンなどが把握できるようになる。

目下、観光各社の主なターゲットは、リベンジ旅行を検討している観光目的の旅行者となっている。出張需要はまだパンデミック以前のレベルまで回復していないからだ。こうした状況下で前述のようなデータが手元にあれば、顧客の行動をあらかじめ予測したり、広告戦略の策定において、充分な情報をもとに決定が下せるようになる。

ファーストパーティ・データは、電子メールに付いた「ハッシュ値」と組み合わせて使うのが効果的だ。メールアドレスごとに付いている個別の文字列、ハッシュ値を使うことで、個人情報は伏せたまま、オンライン上の旅行者を特定し、ターゲットにすることができる。

さらに3つ目の情報源になるのが、過去の予約履歴データだ。こうしたオフラインのデータも統合することで、より深い顧客プロフィール情報になる。これら3つのデータソースを活用すれば、旅行者の実像が鮮明になり、マーケティングでの攻略方法も選びやすくなる、ということだ。

人をベースにしたマーケティングへの移行を

クッキー不在の時代を迎えるにあたり、マーケターにはデータ戦略の見直しが必要だが、もう一つ、マインドセットを一新することも重要だ。どのデバイス経由でも、マーケティングを展開する相手はクッキーではなく、人間なのだと意識を改めるべきだ。

例えば、パリへの航空券をデスクトップから予約した人には、数時間後、パリ市内のホテルや夕食、アクティビティに関する広告がモバイル端末宛てに届く、といった具合だ。より効果的な広告になるだけでなく、旅行者にとっても便利なサービスになる。

クッキーなしで、人に焦点を当てたマーケティングキャンペーンを成功させるには、パートナー選びが今まで以上に大切になる。例えば、パートナー企業が提供してくれる過去の予約履歴と、自社が保有するファーストパーティ・データやメールのハッシュ識別情報を合わせることで、データ不足の部分を補うことができれば、リターゲティング・キャンペーンの成果が上がる。パートナー企業のデータを活用することで、パリへ向かう旅行者に送った広告は、彼女がすでに予約済みのホテルの広告だった、といった事態も回避できる。

クッキーレス時代がやってくる。観光マーケターは、今すぐ準備を始めて、時代から置き去りにされるリスクに対処するべきだ。新しいデータ戦略と、新たな心構えを持つことで、旅行者との関係作りやブランド・ロイヤルティ強化が進むチャンスだ。

※この記事は、世界的な旅行調査フォーカスライト社が運営するニュースメディア「フォーカスワイヤ(PhocusWire)」から届いた英文記事を、同社との提携に基づいて、トラベルボイス編集部が日本語翻訳・編集したものです。

オリジナル記事:THE THIRD-PARTY COOKIE IS CRUMBLING - NOW WHAT?

著者:ソジャーン最高ソリューション責任者(CSO) カート・ワインスハイマー氏