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ESGパフォーマンスが投資判断に大きな影響、世界の機関投資家90%が重視、環境問題の実績乏しい企業からの引き上げ検討も

コンサルティングEY社は、このほど機関投資家に関するグローバル調査「2021 EY Global Institutional Investor Survey」を発表した。19カ国、320の機関投資家を対象に実施した調査の結果をまとめたもので、投資家の90%が新型コロナ拡大前よりも投資判断の際に企業のESG(環境・社会・ガバナンス)パフォーマンスを重視するようになったと回答。同社は「投資家はESGへの取り組みが遅れている企業への投資から手を引く可能性が高まっている」などと分析している。

調査によると、投資判断とポートフォリオの構築でESGリスクが重要な位置を占めるようになっていることが明らかになった。調査対象の投資家の4分の3近く(74%)が、コロナがきっかけとなってESGパフォーマンスが振るわないことを理由に株式の売却を考えるようになったとも回答。また、環境問題の実績に乏しい企業からの投資引き上げを検討している投資家も74%に上った。

ただ、投資リスク管理の戦略およびプロセスを改めることになったと答えたのも半数未満(44%)。具体的な行動を起こすまでに時間がかかっている状況も見られ、企業の情報開示の質の向上が急務であるともいえる。

では、投資判断の際、投資家はどのような要素を重視しているか。「チーフ・サステナビリティ・オフィサーなど、CEOと経営陣へ直接報告をおこなうESG担当者がいるか」(53%)、「組織の文化がESGの目標に沿っているか」(52%)、「ESG報告について独立した保証を取得しているか」(48%)などが上位に挙がった。

また、投資先として検討している企業によるESG報告の質と透明性については、多くの投資家が懸念を感じているようだ。調査対象者の半数(50%)が、「財務上の重要課題について企業が適切な報告をおこなっているとは思わない」と回答しており、2020年の37%から13ポイントも増加した。

一方で、調査対象の投資家の89%が世界共通の基準に照らしたESGパフォーマンス指標の報告が義務化されることを望んでおり、同社は「世界的に統一された基準を設けることが、企業経営を支え、ステークホルダーの信頼獲得と維持につながる」などと指摘。企業がESGパフォーマンスの可能性を広げるには、データ分析能力の向上とともに、より質の高い非財務情報の開示と規制状況の明確化が重要になりそうだ。