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観光産業のための「NFT」入門、旅行で活用する4つのアイデアとは?【外電】

NFT初心者のために、まず説明から始めよう。NFT(non-fungible token=非代替性トークン)とはデジタル資産の一つで、画像、動画、音声ファイルなど、様々なフォーマットのものが登場している。原則として、デジタル空間に存在する形式であれば、何でもあり得る。ブロックチェーン技術を使い、唯一無二の識別子を用いているので、同じものを複製することができない。

NFTと同じく、ブロックチェーンを活用したものがビットコインなどの暗号通貨(クリプト)で、その普及に伴い、NFTへの注目度も高くなってきた。有名ブランド、特にファッションや贅沢品を扱う企業では、自らNFTを発行し、これをマーケティングツールとして最大限に役立てる方法を試行錯誤するところが多い。問題点の一つは、NFTを作る、あるいは“鋳造“する際に生じる環境への負荷だ。高速コンピュータを利用するため、ブロックチェーンは莫大な電力を消費する。これから技術が進歩して効率化が進めば、こうした懸念は少なくなっていくと思われるが、企業がNFT戦略を考える上で、環境に及ぼす負荷の数値は、常に頭の中に入れておく必要がある。

旅行・観光産業でNFTをどう活かすべきか?

では、私たちはNFTをどのように活用していくことができるだろうか。以下にアイデアをまとめた。

1.話題を集める存在になろう:

2022年初め、注目を集めた企業といえば、NFTを手掛けたブランドばかりだった。マリオットなどの企業がアーティストとコラボしてNFTを創作し、その後、これを配布した。デスティネーション・マーケティング組織(DMO)でも、同じことは簡単にできる。地元のアーティストに協力してもらい、地域が誇る観光素材や他との違いをアピールするNFTを作れば、メディアで取り上げられたり、話題を集めることができる。

2.会議やイベントへの参加証明として発行する:

面白い事例の一つが、「出席証明」としてNFTを発行することだ。額縁に入れてとっておくような、大切な試合の入場券が、紙ではなくデジタルになったとイメージしてほしい。最近のイベントでは、参加者がデジタル空間で自慢できるようなものを主催者が用意、消費者の方にも熱心なコレクターがいる。同じようなことは今後、大小様々なイベントで始まると当社(スパークロフト)では予測している。

特に会議やイベント開催が多いデスティネーション関係者には、絶対に注目してほしい。例えば、ミーティング・プランナーや会議関係者に、デスティネーションの魅力を取り上げたNFTを配布する、というアイデアはどうだろう。当社でも今年、DMAウエスト・テック・サミットで講演した時には、我々のセッションを聞きに来てくれた参加者全員に、スパークロフトが作成したNFTを配布した。

3.デスティネーション開発におけるNFT活用:

地域を何度も訪れているリピーター旅行者は、より広範囲にあちこちへと足をのばしてくれるだけでなく、地域への帰属意識も高く、良識ある行動をとる、というのが一部デスティネーション関係者の見解だ。もしそうであれば、訪問客も、デスティネーションの発展に何かしらの形で貢献できる(あるいは、するべき)ではないか。訪問客にも、意思表示の場を与えるべきか? 対象となるのはどんな訪問客で、どうやって選別するのか?

将来的には、NFTが役に立つかもしれない。なぜならNFTは、単なるデジタル資産ではないからだ。NFTは、特典や権利を付けてプログラムすることもできる。観光当局が、特定の人(旅行者でも、地元民でも)を選別して、こうした特典付きNFTを授与し、受け取った人はデスティネーション開発について自分の意見を表明できるようにする。もちろん、(顧客による諮問委員会の設置など)他の方法でも同じことはできるが、これからNFTがさらに進化していけば、より洗練された方法で、ステークホルダーの参画を実現できるようになるはずだ。

4.訪問客へのリワード:

地域内の特定の場所を訪れた旅行者にリワードを付与するプログラムは、多くのデスティネーションで実施されている。例えば、パートナー事業者からスタンプを押してもらうパスポート冊子など。位置情報を活用したソーシャルメディア、例えばFoursquareやGowallaが大人気だったのを覚えている方もいるだろう。一番多くの場所へチェックインしたユーザーは、「市長」の座を獲得できるなどの内容だった。NFTを活用すれば、同じような展開が可能になる。デスティネーションや事業者は、訪問客が自慢できるようなデジタル・トークンを用意する。後日、価値が上昇していくようなものになれば、さらに良い。

DMOが取り組むべきことは?

もちろん、すべてのDMOが今すぐ、NFTを作成して旅行者に配るべきだ、と言っているのではない。我々は、非常に変化の速い時代の中にいて、目下、話題を集めているのはNFTだが、その価値は天文学的な数字に跳ね上がったかと思うと、急落したりする。とはいえ、こうした狂乱の騒ぎが落ち着いた先のことを考えみよう。このテクノロジーの潜在的な可能性は、やがて人々の日常生活の様々な場面で、インパクトを与えるようになる。デスティネーション・マーケティングでのNFT活用も例外ではない。

少なくともマーケターであれば、状況を注意深く見守りながら、このテクノロジーを理解し、まずは自分で試してみるべきだ。先陣を切って“デスティネーションNFT”を発行したDMOは、メディアから注目の的になるだろう。ミーティングや会議の分野でも、参加者に配布できるNFT作成に積極的なデスティネーションは、プランナーや協会組織から、より高い関心を集めるだろう。

※この記事は、世界的な旅行調査フォーカスライト社が運営するニュースメディア「フォーカスワイヤ(PhocusWire)」から届いた英文記事を、同社との提携に基づいて、トラベルボイス編集部が日本語翻訳・編集したものです。

オリジナル記事:A DMO'S GUIDE TO NFTS

著者:マーティン・ストール氏 スパークロフト・メディア創業者兼CEO(最高経営責任者)