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ユナイテッド航空のサイパン直行便、初便に搭乗して現地の声を聞いてみた、日本市場の復活へ大きな期待

ユナイテッド航空は2022年9月1日、成田/サイパン線を週3便で新規就航した。初便の搭乗者数は71人で搭乗率は42.8%と半数に満たなかったが、9月7日からは日本帰国時のPCR検査陰性証明が不要になることから、日本から最も近い英語圏への需要拡大が期待されるところだ。

日本から約3時半のフライトで気軽に訪れることができることから、サイパンを含む北マリアナ諸島への日本人渡航者数は、JALが直行便を運航していた1997年には年間45万人に達していた。しかし、2005年にJALが撤退すると、2018年には約4万人にまで落ち込んだ。

その後、2019年11月には、スカイマークが同航空初の国際定期便として成田/サイパン線に就航したものの、コロナ渦のなかで運休。現在も再開の見通しが立っていないだけに、現地でもユナイテッド航空の就航にかける期待は大きい。

初便記念してゲート前でテープカット(2人おいて左から)初便担当のイロール・リー機長、マリアナ政府観光局ヴィオラ・アレプヨ理事長、ラルフ・トーレス知事、高橋亨ユナイテッド航空日本・ミクロネシア地区営業担当支社長、ジミー武田ユナイテッド航空日本地区空港オペレーション統括本部長

現在、アシアナ航空など複数の航空会社がソウル/サイパン線を運航していることから、サイパンを訪れる観光客の大部分は韓国から。コロナ前も、中国からの観光客が多く、日本市場の存在感は年々薄れていた。昔を知る旧ホテル・ニッコー・サイパン(現ケンジントン・ホテル・サイパン)の現地スタッフからは「早く日本人に戻ってきてほしい」との声も聞く。

マリアナ政府観光局ジェネラル・マネージャーの一倉隆氏は、「ユナイテッド航空はまずは週3便でのスタートだが、今後の増便を願うとともに、スカイマークの復便にも期待したい」と話し、直行便の拡大が需要拡大の鍵になるとの考えを示した。

現在、サイパンへの入島は、2回のワクチン接種証明があれば、入国時の陰性証明も隔離も必要なく、観光旅行のハードルは随分と下がった。しかし、陽性になった場合の心配やコスト高などで、ファミリー層の取り込みは厳しいのが現実だ。一倉氏も「まずはゴルフやダイビングなど、FIT(個人旅行)をターゲットとしていくのが現実的」との認識を示す。

その需要喚起策として、マリアナ政府観光局は、ユナイテッド航空直行利用者全員に、ゴルフ2ラウンド、ダイビング2ダイブを10月31日まで無料で提供する「マリアナケーション超得キャンペーン」を打ち出している。

北マリアナ知事、「観光は収入を増やす唯一の方法」

初便サイパン到着当日には、関係者を集めた就航記念レセプションが開催された。ラルフ・トーレス北マリアナ政府知事は「観光は、北マリアナにとって、収入を増やす唯一の方法」と挨拶し、改めて基幹産業である観光への投資を進めていく考えを示した。また、「観光がなければ、地域の持続可能性もない」と話し、さまざまな体験アクティビティを日本市場に紹介し、参加型の観光を進めていくことで、地域コミュニティのサステナブリティを向上させていく考えだ。

レセプション終了後にメディアのインタビューに応えたトーレス知事さらに、マリアナ政府観光局が北マリアナ諸島自治連邦区の各政府機関と共同で策定した「観光復興投資計画 TRIP(Tourism Resumption Investment Plan)」についても触れたうえで、「長期的な取り組みにはなるが、将来的にはワールドクラスのリゾートデスティネーションを目指していきたい」と意気込みを示した。

トラベルジャーナリスト 山田友樹