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2年ぶりの「ツーリズムEXPO」リアル開催、インバウンド本格解禁と全国旅行支援の開始へ、活気づく会場の様子を取材した

2年ぶりのリアル開催、4年ぶりの東京開催となる「ツーリズムEXPOジャパン2022(TEJ)」が2022年9月22日~25日まで、東京ビッグサイトで開催された。開催初日の深夜には、岸田総理大臣が訪問先のニューヨークで、10月11日からの入国者数の上限撤廃とビザ免除、個人旅行の解禁、および全国旅行割(全国旅行支援)とイベント割の実施を表明。TEJ会期中に発表された、政府による国内・海外・訪日の全面的な“旅行解禁”の後押しを受け、まさに国際交流再開と旅行市場の本格回復に向け、今年のTEJ開催テーマ“ReStart”を象徴するイベントとなった。

TEJ実行委員会委員長である髙橋広行氏は、日本旅行業協会(JATA)会長として政府発表を受けたコメントを発表。「これまでの段階的な緩和が一気に前進することになり、国際交流復活に向けた動きが加速する。全国旅行割(正式名称確認中)が新たに展開されることで、国内、海外、訪日旅行がかつての活況を早期に取り戻し、日本と地域の経済活性化につながることを期待する」とし、これらの発表がTEJ会期中にされたことにも感謝を示した。

今こそ、観光の影響力を評価し見直す時

今回も、世界から観光トップが日本を訪れた。初日のオープニングセレモニーで来賓挨拶に立った国連世界観光機関(UNWTO)賛助会員部本部長のイオン・ビルク氏は、世界の旅行需要が回復傾向にある一方で、地政学的な不確実性や気候変動、世界的な物価上昇やインフレなど、観光を取り巻く環境変化に言及。「今こそ、観光を再構築し、観光が人々や地球にどのような影響を与えるかを評価し直す時。また、観光が人々の生活を変え、レジリエンスとサステナビリティを構築する能力を実現する時」と述べ、TEJで共有されるアイデアやビジネスモデルが、より持続的なものに発展させていくことに期待を示した。

UNWTO賛助会員部本部長のイオン・ビルク氏

同日に開催された「第5回TEJ観光大臣会合」には、7カ国の観光大臣・観光行政トップと、UNWTOや世界旅行ツーリズム協議会(WTTC)など4つの国際観光組織の代表が集結。気候変動への対応や、コロナ後の観光需要創出に向けた意見交換がおこなわれた。国家として、観光と連携して取り組んでいるCO2排出抑制の事例や、地域や住民との連携、持続可能な観光の実現に向けた人材育成や教育の重要性などが共有された。

2日目には、サステナブル・ツーリズムやSDGsを踏まえた教育旅行のあり方を考えるフォーラムも開催。これら詳細については、後日レポートする。

大臣会合の様子

日本入国の規制緩和発表で、地域の受け止めは?

産業界が強く望んでいた、水際対策における入国規制の緩和と全国旅行割の開始については、TEJ会場内からも歓迎のコメントが多く聞かれた。

沖縄観光コンベンションビューロー(OCVB)会長の下地芳郎氏は、国内の地方空港路線の再開が遅れていたことに触れ、「日本のインバウンド本格再開に向けて大きな前進」と期待を示した。下地氏は、台湾での隔離期間の一部撤廃のニュースを踏まえて、チャイナエアラインが10月25日から那覇/台北線の再開を発表したことを紹介し、他のアジア路線にも積極的な誘致活動を展開していく考えだ。

TEJ会場の台湾ブースでは日本人旅行者へのビザなし旅行の解禁を大きくアピール(9月24日)また、北の大地の出展者からも「待ちに待った発表」(北海道経済部観光局観光振興課課長補佐の中道康信氏)と歓迎の声が上がった。中道氏は「検疫の水際対策は(感染拡大にならないように)しっかりしてほしい」と釘を刺しつつ、国として感染症拡大防止と経済活性化との両立に取り組むことに期待を示した。北海道の観光需要は道内需要が大きいとはいえ、約半分。観光振興には、道外(国内・訪日)需要が不可欠だ。インバウンド誘致に関しては今後、北海道として海外メディアなどを招聘する独自のFAMツアーなども実施する予定だという。

東京都で国内旅行の需要喚起を担当する責任者は、全国旅行支援の実施が決まったことについて「需要喚起という点で期待したい」と喜びを示した。東京都では感染状況を踏まえ、他の自治体よりも観光促進事業である都民割「もっとTokyo」の開始時期を遅らせ、かつ、ブロック割の展開はせずに、都民限定での実施としていた。9月22日には、都民割の10月末までの延長を発表しており、「(全国旅行割とあわせると)10月は都内を訪れる観光客が広がる」と期待する。全国旅行支援と都民割の併用については、検討中だ。

TEJ会場の様子。今年も工夫を凝らしたブースが並んだ(9月22日)観光トップが決意表明、観光の本格再開の第一歩に

9月22日午前のオープニングセレモニーには、TEJ主催団体の日本観光振興協会(日観振)会長の山西健一郎氏、JATA会長の髙橋広行氏、日本政府観光局(JNTO)理事長の清野智氏のほか、国土交通副大臣の石井浩郎氏、観光庁長官の和田浩一氏、UNWTO賛助会員部本部長のイオン・ビルク氏、フィリピン共和国観光副大臣のシャリマル・ホファ・タマノ氏など、国内外の来賓が登壇し、観光再開に向けたメッセージを発信した。

日観振会長の山西健一郎氏は、「観光需要の回復に向けた狼煙を上げるとともに、新しい旅の形を世界に発信し、観光産業復活に向けた足掛かりにする(イベントを)絶好の機会にしたい」と挨拶。「パンデミックにより人々の価値観が大きく変化し、観光産業もさらなる進化を遂げる必要がある。産業界が一体となって再出発をするのにふさわしいイベントになる」と、今年の開催テーマ「新しい時代へのチャレンジ~ReStart~」に込めた意味を強調した。

日観振 会長の山西健一郎氏

国土交通副大臣の石井浩郎氏は、コロナ禍によって観光産業の苦境が続いていることに認識を示したうえで、「国内外の需要を喚起すsる取り組みが重要」と言及。国交省として需要喚起策の財政的支援に加え、ワーケーションや第2のふるさとづくりなど、新たな市場作りにも取り組んでいることを話した。

国土交通副大臣の石井浩郎氏

今年のTEJの出展者は国内から47都道府県、海外から78カ国・地域から約1018企業・団体が参加した。商談会の規模は登録ベースでセラー626名、バイヤーが554名、商談件数は5114セッション。規模感としてはコロナ禍前には届かなかったものの、業界日には久しぶりの再会を喜び、次の一手を模索する話題が飛び交った。一般日には、台風の接近があったものの、会場内は盛況。マスク越しにも参加者の観光再開への喜びを感じとることができた。

4年ぶりの東京、2年ぶりのリアルでの開催となったツーリズムEXPO2022。国際観光の本格再開に向けた第一歩を踏み出し、再スタートへの意識を観光産業全体で共有する場になったといえよう。

一般来場者向けの9月24日の入場ゲート。台風にもかかわらず、多くの人が入場受付に並んだ。