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インバウンド消費額5兆円へ、元力士・小錦氏など各界オピニオンリーダーが語った復活へのヒントとは?

ウェブサイト多言語化ソリューションを開発・提供するWovn Technologiesは、インバウンド市場の復活が待ち望まれている中、「GLOBALIZED インバウンド2.0 訪日DXで進化する日本の未来」と題するセミナーを開催した。インバウンド市場は、昨年10月の水際対策の大幅緩和以降、回復傾向を見せている。政府は、2023年3月31日、2025年までの新たな観光立国推進基本計画の策定した。旅行消費額5兆円の早期達成を目指し、再び観光大国に向けた施策に本腰を入れる。

セミナーでは、菅義偉前首相が「観光立国」への再起動をテーマに特別講演を行ったほか、各分野の専門家や識者がインバウンド対策へのヒントやインサイトを語った。その様子をピックアップしてリポートする。

日本の一番の強みは伝統文化、元大相撲力士・小錦八十吉氏

元大相撲力士でタレントの小錦八十吉氏は、「文化・伝統を生かした超付加価値体験とは」をテーマに講演。自身の経験から日本文化の魅力を語るとともに、世界に向けて積極的に発信していく必要性を主張した。

小錦氏は「相撲はスポーツというよりも文化。四股の踏み方だけでも、外国人から見る相撲は美しい。礼に始まって礼に終わる文化は、世界どこを探してもない。そこが日本の素晴らしいさ」と話す。

小錦氏によると、相撲の人気は世界で広まっており、自身が「それに驚いている」という。ただ、課題は「本物を見たことがないこと」だと続けた。そこで、小錦氏は、元力士たちと日本の伝統文化としての相撲を世界に伝える活動を始めた。コロナ禍を経て、昨年は米国西海岸でその活動を再開。今年に入ってサウジアラビアでも実施した。

「外国人には本物を紹介していくことが大切。外国人は日本で本物の日本を体験したいと思っている。その見せ方に工夫が必要。日本だからこそできるものは多く、その魅力の伝え方次第で、めちゃくちゃ売れると思う」と話し、日本の一番の強みは伝統文化だと強調した。

カルチャー×ファッションで独自性を、WWD JAPAN編集長・村上要氏

フッション業界の訪日戦略については、「ラグジュアリーからカルチャーへ、ストリート発信の成功事例」として、INFASパブリケーションズWWD JAPAN編集長の村上要氏が登壇。村上氏は、日本のファッションは引き続き人気だが、地域によって好みは異なるとして、例えば東南アジアからの訪日客には引き続きラグジュアリーブランド、欧米は日本のファッションとサブカルチャーを組み合わせた商品が人気だという。また、欧米からの訪日客はコロナ前と比べて、値段に敏感になっている様子が伺えるとした。

今後、インバウンドの復活が期待される中国については、内外価格差の大きな日本発のアパレルの販売に期待がかかるが、一方で「もはやメイド・イン・ジャパンだけでは売れない」と話す。その理由として、中国の国内ブランドの品質も上がっているほか、愛国心の影響からローカルブランドへの嗜好も高まっていることを挙げた。

そのうえで、今後のファッションにおけるインバウンド戦略のお手本として「オニツカタイガー」を紹介。海外を意識したCMを展開しているほか、海外向けに独自のSNSアカウントも開設した。イタリア人デザイナーを起用して、「inspired by JAPAN, but worldwide」のコンセプトで商品展開。さらに、、日本の職人技を活用したハイエンド「オニツカ」を発売するとともに、日本のアニメなどとのコラボレーション商品も積極的に展開しているという。

村上氏は、今後のインバウンドマーケット戦略として、「日本のストリートカルチャーと結びつけたファッションアイテムに訴求力ある」との考えを示した。

1億通りの快適な空港の過ごし方を、羽田空港・堀史晴氏

日本空港ビルデング・デジタル事業推進室次長の堀史晴氏は、羽田空港のデジタルリテール戦略について説明した。コロナ前の羽田空港の年間利用者数は約8700万人、非旅客は推計約2700万人。堀氏は「計1億人強の顧客ニーズを理解したうえで、それに合った価値を創造していく」と話し、パーソナライズした情報を提供していく考えを示す。

羽田空港は2021年3月に公式アプリをリリースした。現在のところ、ユーザーの約63%が男性、約37%が女性。年代別では、25~54歳まではほぼ均等な利用状況で、特徴的な点は女性の中で25~34歳が35.6%を占めているところだ。

羽田空港では、コロナ禍の期間、利用者へのマーケティング調査を実施。平均的な利用者の気持ちとして、「乗り遅れ」「定刻出発」「混雑状況」などで不安があることが分かったほか、「免税店情報」を求めていることも把握できたという。その結果をもとに、最適なタイミングで最適なメッセージを送信する仕組みを整えた。

堀氏は「マーケティング施策はマスからone to oneに移行している」と話し、旅マエから旅アトにかけてのカスタマージャーニーでサポートしていく必要性を強調した。

そのうえで、重要になるのがデータ。羽田空港では、「データを取得し、分析やセグメント設定を行い、マーケティング施策を打ち、また、それを検証して、次の施策に繋げていく。CRMデータベースで束ねて、そのサイクルを回していくことを進めている」(堀氏)。

今後は、インバウンドの回復に向けて、ウェブサイトやECサイトを多言語化を進化させる計画。さらに、顧客との接点を一つに統合するデジタルプラットフォームを構築していく。空港へのアクセス、ターミナル内の店舗やレストラン、航空会社などの情報を繋げて、「1億通りの快適な空港での過ごし方を提案し、最適な顧客体験を創っていく」考えだ。