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立命館大学、大学院に「観光マネジメント専攻」を新設、観光MBA教育で次世代リーダーの育成へ

立命館大学は2024年4月から、大学院に「観光マネジメント専攻」を新設し観光MBA教育に乗り出す。「観光に、MBAの力を」をコンセプトに掲げ、観光産業における「ビジネスを創造するリーダー」の育成を図る。これに先立ち、同学は2023年7月、観光マネジメント専攻の概要と特徴、設置の背景などを紹介するオンラインプレスセミナーを開催。育成を目指す観光産業のリーダー像などを説明した。

学卒と社会人対象の2プログラムを用意

立命館大学は、2006年に経営系の大学院として専門職大学院経営管理研究科「経営管理専攻」(通称・立命館大学ビジネススクール)を開設し、経営修士の育成に取り組んでいる。この立命館大学ビジネススクールに新たに「観光マネジメント専攻」を設ける。既存の経営専攻の定員80名に定員70名の観光専攻が加わることで、同ビジネススクールは1学年150名を抱えることになり、専門職大学院としては大きな陣容となる。

立命館大学ビジネススクール副研究科長の牧田正裕教授によれば、観光系の学部・学科は全国に約200あるが、ほとんどが人文科学系の学科として教育がおこなわれており、「観光関係で経済・商学系の学びに位置づけられている学部や大学院は少数派」。その点、立命館の観光マネジメント専攻は経営管理研究科に位置づけられ、修了すれば観光経営修士の学位を得られるのが特徴のひとつだとしている。

また、京都大学MBAと一橋大学MBAもすでに観光MBA教育を展開しているが、「たとえば京都大学MBAは平日昼間のプログラムであり、社会人を含むより広範な対象者に教育機会を提供するには既存のMBAだけでは不十分。その意味で、われわれが開設する観光マネジメント専攻は、学部卒を対象としたキャリア形成プログラムのほか、平日夜と土日に学ぶ社会人対象のマネジメントプログラムもある」(牧田教授)として、学部卒対象と社会人対象の2プログラムを用意している点を強調した。

立命館大学は2030年を目途に、新たな価値を創造する次世代研究大学を実現することなどを掲げた「学園ビジョンR2030」を進めており、その中で2021~2025年度を対象とする「経営管理研究科中期計画」を策定。ビジネススクール研究科長の肥塚浩教授は「世界に開かれた関西のビジネスエコシステムの不可欠な一員として認知され、必要とされるビジネススクールになるのがわれわれの目標。学習者の多様なニーズに応える学びの再構築と持続可能な高等教育モデルの確立の実現に貢献することが役割であり、観光マネジメント専攻の新設は、まさにこの目標と役割に該当するものだ」とその意義を語った。

起業家はじめ3カテゴリで人材育成

2024年4月に開設する観光マネジメント専攻のうち、社会人(実務経験者)対象の観光事業マネジメントプログラムは定員40名、学部卒生(実務未経験者)対象の観光事業キャリア形成プログラムは定員30名。育成・輩出を目指す人材像は、経営者・起業家、経営管理人材、経営支援人材の3カテゴリだ。

具体的には経営者・起業家として、宿泊業等の観光企業や観光関連企業の経営者、DMOをはじめとする観光非営利組織の経営者、観光産業で起業を目指す人材などを育成。経営管理人材として、宿泊業等の観光企業、観光関連企業のマーケティング、人的資源管理、財務などを担う人材や、DMO等の非営利組織でマーケティング、人的資源管理、財務などを担う人材、経営支援人材として、観光産業における企業や非営利組織の発展にコミットする人材の育成を図る。

牧田教授は「たとえば、旅館を継ぐことになったので経営を学びたい、ホテルの支配人を目指しているので観光マネジメントを体系的に学びたい、高付加価値サービスの導入に向けてブランディングの知識を習得したい、観光ビジネスに長年携わっているがホスピタリティを学び直したいといった人材が想定される。イベントプランナーとして活躍したいのでMICEへの理解を深めたい、DMOで観光振興に取り組みたいといった人材や、地元のまちづくりNPOで地域の観光事業者を支援したい人なども観光マネジメント専攻の対象になると考えられる」とする。

発表資料より

オンライン活用で全国から広く募集

教育システムの特徴として挙げるのは、オンラインを積極的に活用し、地理的制約にとらわれず学習できる条件を提供すること。「全国どこからでも授業にアクセスし議論にも参加できるようにする」(牧田教授)。観光事業マネジメントプログラムは京阪神地域に居住できる人だけでなく、オンライン利用が可能な全国の居住者から広く募集する。

また、春と秋のセメスター(学期)をさらに2分割したクォータ制を採用し、ひとつの科目を2カ月間で完結させる集中的な学びのスタイルを導入したり、2年次には研究課題やテーマについて調査・研究をおこなうゼミ形式のリサーチプロジェクトをおこなったりするのもカリキュラムの特徴だ。

観光マネジメント専攻のカリキュラムは、国土交通省・観光庁が2023年3月に策定した「ポストコロナ時代における観光人材育成ガイドライン」に沿った内容で、牧田教授は「ガイドラインが『観光産業人材』に求めている知識や技能に対応する科目を完全にカバーしており、『観光地経営人材』についてもガイドラインに示されている知識や技能の習得に資するカリキュラムをおおむね用意している」と説明した。