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地方誘客のカギとなるMaaS構築の新手法、訪日レンタカー利用者の心理もわかるドライブレコーダー活用の動態調査と分析を聞いてきた(PR)

地域や企業の課題解決の支援からデジタルマーケティングまで手掛けるNTTアドは、2019年11月にレンタカーを利用する訪日外国人観光客の動態調査を実施した。調査の最大の特徴は、GPS付ドライブレコーダーを活用したこと。映像データからドライバー心理に踏み込んだ動態分析が可能となった。初めて、明確なデータの裏付けを伴って訪日外国人観光客の運転傾向や危険運転の発生場所も明らかになった。

動態調査から得られたデータは、地方創生のカギを握るMaaS(Mobility as a Service)構築に欠かせないデータ収集と分析を格段に進歩させる可能性がある。

NTTドコモの「docoですcar」NTTアドは、今回の動態調査で自動車運転にかかわる国内大手企業とタッグを組んだ。ニッポンレンタカーの協力を得て、同社のレンタカーを予約し、了承を得た訪日外国人観光客のレンタカーにデータ収集用のGPS付ドライブレコーダーを設置。ドライブレコーダーはNTTドコモが提供し、同社が商用車を運行する企業向けに提供している運行管理業務の総合支援サービス「docoですcar」向けに開発した特別なドライブレコーダーを活用した。

また、データ分析にはカーナビゲーションだけでなく、ドライブレコーダーも活用したクラウドサービスを開発し、安心・安全な自動車社会の実現を目指すパイオニアが協力し、映像データが示す重要情報の解析に当たった。

デジタル分野で活躍するNTTアド、NTTドコモ、パイオニアの3社がそれぞれの強みを持ちより、GPSデータから得られる位置情報と、ドライブレコーダーに記録された映像データを関連付けて分析することで、これまでは考えられなかった詳細かつユニークなドライビング・データを生成できることが証明された。NTTアドでは「GPSデータだけの分析はこれまでにもあったが、ドライブレコーダーの映像データと連動させた分析により、結果としての車の動きだけを追うのではなく、なぜそのような動きをしたのかドライバー心理に踏み込んで分析することにもつなげられる」(グローバルビジネス推進局地方創生推進室・津村肇担当課長)と期待を寄せる。

危険運転の把握と安全運転啓蒙に役立つ調査

今回の調査は2019年11月から12月にかけて実施され、福岡空港からレンタカーを利用した訪日外国人観光客のドライビング・データを収集した。属性は、訪日経験ありが94%、訪日回数は1〜2回の旅行者が18%、3〜5回が23%、6〜9回が12%、10回が29%と何度も日本を訪れている旅行者が主な対象。居住国は香港が50%、タイが32%、台湾、マカオ、オーストラリアが6%となっている。

対象者属性

  • 訪日リピーターがほとんどで、訪日平均回数が5.8回
  • 居住国は、日本と同じ左側通行の国がほとんど(台湾だけ右側通行)

レンタカー利用にあたっての確認事項

  • 76%が過去に日本での利用経験あり。

この調査によって初めて明確なデータの裏付けを伴って明らかになったのが、訪日外国人観光客の運転傾向や危険運転の発生場所だ。ドライブレコーダーには急ハンドル、急ブレーキなどの危険運転を感知した際の動画映像が保存されており、危険運転発生時の状況をドライバーの視点に立って映像で確認できる。またデジタル地図データに格納されている一方通行道路や一時停止場所、踏切停止のデータ、道路別の速度制限情報等と走行データを付き合わせることで、交通ルールに適さない運転も細かく把握できる。

その結果、今回の対象車両に関しては、平均利用日数5.9日の間に1台当たり13.5回の危険運転が行われていたことや、平均で1時間26分に1回の危険運転が発生していたことが明らかになった。1台あたりの危険運転で、一時停止違反が9.4回と最も多く、続いて、踏切停止違反が2.3回、進入禁止違反が1.1回、一方通行に進入してしまった通行禁止違反が0.8回という結果となった。これらの危険運転は15~18時の薄暮時に多く発生する傾向も明らかになった。




危険運転発生場所(一時停止) © OpenStreetMap contributors

どのような危険運転が、どこの道路で発生したのかがわかるように分析できる © OpenStreetMap contributors

速度超過について集計すると、1台あたり平均53.7分行っていた。速度超過の合計時間が30分以下は21%、30~60分が一番多く37%、60~90分は26%、90~120分は11%、120分以上も5%いた。最大の速度超過事例では時速148㎞で高速道路を走行したケースがあることも分かった。

こうしたデータ分析の結果からNTTアドでは「映像データがあるため、レンタカーによる危険運転が発生しやすい場所に共通する特徴や、どういう道路環境が危険運転を誘発したのかといった問題点を抽出することもできる。さらに調査データを基に、レンタカー会社が外国人利用者に対してとくに注意喚起すべきポイントを理解したり、安全運転の啓蒙に役立てたりすることも可能だ」(デジタルビジネス局・高松裕二ビッグデータ解析担当部長)としている。

旅行者の動向を追跡

こうした危険運転の発生だけではない。訪日外国人観光客がレンタカーを利用してどのようなドライブ旅行を楽しみ、どこに立ち寄ったかも詳細に追跡できる。ドライブレコーダーはエンジンを切ると録画を停止する設定になっており、この録画記録を分析することで訪問した場所や宿泊地を把握できる。具体的には、15分以上、エンジンを切って停車した場所を訪問地として抽出し、16時以降に9時間以上停車した場所を宿泊地として抽出する。

これにより訪日外国人旅行者のレンタカー利用を詳細にたどることができた。たとえば今回の九州地域での調査では、訪問地として圧倒的に人気だったのは湯布院温泉、黒川温泉、別府の3カ所で、多くの利用者が複数の温泉地をハシゴしていることも判明した。湯布院と別府の組み合わせが最も多いが、黒川温泉を含めた3カ所を巡るケースも目立ち、国内観光客とは異なり、一つの温泉地でゆっくり過ごすというより次々と温泉地巡りを楽しむ傾向が強いことがわかる。

訪問場所は所番地までピンポイントで特定できるため、地域単位だけでなく、商業施設や観光施設単位、あるいは個店単位で詳しく追跡することもできる。

どんな旅行を楽しみ、どこに立ち寄ったかも詳細に追跡が可能 © OpenStreetMap contributors

観光動向データとして、地域住民の理解の一助にも

GPSデータとドライブレコーダーの映像データを組み合わせたNTTアドの新たな分析手法は、さまざまな可能性を秘めている。

今後のインバウンド市場拡大には地方誘客と地方における2次交通の課題解決が重要だ。訪日外国人観光客の2次交通としてレンタカー利用は年々増大しており、実際今回のアンケート結果でも今後の利用意向は高かったことから、レンタカーによる移動はMaaS構築のひとつの要素としてみるべきだ。その一方で、レンタカー利用が多い北海道や沖縄では訪日外国人観光客による交通トラブルが増大傾向にある。それだけに今回の調査のようなデータは、ドライビングの安全性向上や旅行者のマナー啓発の解決策を探るためにも重要なデータとなることは間違いない。レンタカーで地域をめぐる外国人が増えることで生まれる地域住民の不安を払拭する施策も検討できるだろう。

また、観光動向データとしての活用範囲もさらに広がっていく可能性がある。

例えば、ドライビング・データや訪問場所のデータと、スマホの観光アプリから得られるビッグデータを組み合わせることで観光動態をより詳細に分析することも可能だという。各地域における観光政策や観光ルートを策定するための有益なデータとして使うこともできる。

NTTアドでは、今後、この調査手法を応用して地域への誘客を行う自治体やDMO、MaaSの構築を検討する民間企業など地方創生推進の取組みを行う各種組織とのコラボレーションを想定している。「民間だけの実証実験ではサンプル数にも限界があるが、自治体等を含む公的な事業パートナーが加わることで調査規模も拡大でき、調査エリアも広げられる。今回実施したような調査は、インバウンドに限らず国内利用者を対象とすることもできる。さまざまに応用してもらえる調査手法だと考えている」(津村担当課長)。

広告:エヌ・ティ・ティ・アド

問い合わせ先:エヌ・ティ・ティ・アド グローバルビジネス推進室 地方創生推進室

記事:トラベルボイス企画部、REGION