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2021年の観光復活に必要なものは? 世界の旅行者が重視する「感染対策」「キャンセル対応」、予約の間際化も顕著に

世界大手オンライン旅行エクスペディア・グループのデジタル広告部門「メディア・ソリューション」が、2020年の同社プラットフォーム利用状況やアクセスするユーザーへのアンケート調査をもとに、利用者の旅行意欲の変化や、今後の不安払しょくに有効な対策について提言した。

同社の調査によると、世界中で海外渡航が難しい状況下でも、インターネット上での旅行検索は続いており、OTA(オンライン旅行会社)での情報収集や旅行プランニングは前年比24%増、同様に旅行先(デスティネーション)関連サイトの利用は20%増に。また感染状況により、頻繁に変わる最新情報を提供する場として、むしろOTAの存在意義はこれまで以上に大きくなっているとの考えを示した。

2020年3~11月のエクスペディア・グループ各サイトへの検索や利用アクセス数を集計・分析した結果によると、まず旅行を予約するタイミングは、5月以降、出発日の0~21日前が多数を占める状況が続いている。10月以降、31~60日前の予約に、わずかながら上昇傾向が見られたのは、年末年始の休暇時期に向けた動きと思われる。エクスペディアでは、2021年も引き続き、予約の間際化傾向は続くと予測している。

エクスペディア:調査資料より

国内旅行と海外旅行の検索数比較では、ほぼ一貫して国内旅行が上回っている。しかしここでも、ワクチンのニュースが届いた11月に、海外旅行の検索が急増した。

エクスペディア:調査資料より

ただし、国ごとの差も大きい。例えば11月9日の週のデータを見ると、米国では検索に占める国内旅行のシェアは96%だが、メキシコでは同28%にとどまり、海外旅行が多数を占めた。同様に、同じ欧州でも、フランスは国内旅行が64%と多数であるのに対し、イタリアは海外旅行がほぼ7割を占めた。日本では、検索数の79%が国内旅行だった。

エクスペディア:調査資料より

またエクスペディア・ドットコムでは、2020年4~11月、世界各国のサイト訪問者を対象に、利用目的を質問(回答数4万6800件)。(1)予約のキャンセルや変更、(2)旅程の確認、(3)ドリーム(旅のインスピレーションなど)、(4)購入、の計4項目から選んでもらったところ、一貫して最多を占めたのは「ドリーム」だった。この結果から同社では、物理的に旅行が難しい時期でも、次の旅行に向けてアクセスし、情報収集しているユーザーは多く、それが夏場の購入利用増にもつながったとの見方を示した。

エクスペディア:調査資料より

消費者の不安を知り、対策に生かす

一方、エクスペディアでは2020年10月、日本を含む11カ国の1万1000人を対象にした調査「旅行者の感情と影響要因(Understanding Traveler Sentiment & Influences)」を実施。そこではパンデミック疲れからの回復や気分転換につながる体験が求められていること、ただし感染リスクを最小化する対策は必須であり、旅行予算にも余裕はない状況が浮き彫りになっている。こうした結果から、2021年に向けて、衛生対策やキャンセル・変更時の柔軟な対応についてアピールを続けることが、消費者の不安解消につながるとの考えを示した。

同調査では10人中6人が、パンデミックによる旅行のキャンセルを経験。一方、旅行に出かけた理由では、10人中8人が「エネルギーの回復(気分転換、イベント参加、家族や友人に会う)」を挙げ、「払い戻し不可だった」「割引価格があった」「リモートワークやオンライン授業になったから」「観光地が空いている」などを上回った。

今後についての質問では、回答者の半分が「12カ月以内に旅行できると楽観視している」と答えたが、国別の内訳になると、大きな差が見られた。ポジティブ派の筆頭は中国で、回答者の大多数が1年以内の旅行に肯定的。ブラジルとメキシコも同じ傾向を示したが、日本、カナダ、ドイツ、英国、イタリアでは「不安派」が多数を占め、米国、フランスでは拮抗した。また年齢別では、Z世代とミレニアル世代が12カ月以内の旅行意欲が最も高かった。

旅行時の交通手段では、国内・海外旅行ともに「個人の車」が最も多く、次いでレンタカーが好まれる結果に。続いて航空機、列車、バスとなった。また運転する時間については、10人中7人が最長6時間までと回答している。

今後12カ月の旅行に対して、今よりも肯定的になるために何が必要かの質問では、10人中7人が「フレキシビリティ」と回答。具体的には旅行保険や費用の補償、キャンセル時の宿泊・交通費の全額払い戻しを挙げた。

「2021年の旅行で最も重要なこと」に対する国別の回答でも、全般的に「フレキシビリティ」への関心が、「健康・安全対策」「現地の賑わい(観光施設の営業など)」「静かなところ(感染対策を実施しており、混雑していない)」を上回った。

飛行機での移動については、10人中6人が「ソーシャルディスタンス対策」の有無を重視しており、具体的には自分の座席の隣が空けてあることが安心感につながっている。

マスク着用の義務化も安心につながるポイントで、宿泊施設選びでは40%、交通機関では50%の回答者が、利用サービスの選定で重視すると答えた。

また、宿泊施設のパンデミック対策で支持が高かったのは、適切な衛生対策(54%)、マスク(40%)、収容人数を減らす(34%)、非接触でのルームサービスやテイクアウト(24%)、非接触でのチェックイン(23%)となった。