トラベルボイストラベルボイス | 観光産業ニュース 読者数 No.1

ANA伊東CEOの入社式挨拶、5つのポイントでグループ変革、「真に強いエアライン」に

全日空(NH)は、グループで2014年度の新入社員入社式を4月1日に開催した。同社グループのCEO、伊東信一郎氏は、新入社員に向けた挨拶として「真に強いエアライングループになるために」と題したスピーチを実施。同社や航空業界を取り巻く環境が厳しいものの、羽田の国際化や訪日外国人への期待などで明るい兆しがみえており、安全を第一にグループ一丸となって事業に取り組んでいくことを呼び掛けた。

また、航空業界が新型インフルエンザの流行やテロなどの外的要因によって影響を受ける業界であることに触れ、「いかなる環境変化があろうとも耐えられる、真に強いグループになること」を目標としていることを紹介。そのために、グループの変革に着手しているとして、目指す5つのポイントを「強い個人、強い組織、強い会社、強いブランド、そして強いグループ」だとした。

以下にANAが発表した伊東氏の挨拶概要を全文で紹介する。

▼ANAグループを取り巻く環境について ~グループが一致団結し、危機を乗り越えてきた~

震災から3年経ち、依然として復興や原発問題、少子高齢化や社会保障・財政健全化等、国が抱える課題も多いものの、日本経済はアベノミクスの効果によって長く続いたデフレを漸く克服しつつあり、輸出産業を中心に元気になってきました。

また、2020年には東京オリンピック・パラリンピックの開催も決まりました。アベノミクスの3本目の矢である「民間投資を喚起する成長戦略」の具現化もTPP締結もこれからという状況ではあるものの、しっかり課題を課題として認識した上で、新しい日本を、将来を創っていこう、前に進んで行こう、そういう状況にあると思います。まさに日本が大きく変わろうとしている、変わらねばならないという状況だと思います。

航空業界に目を向けると、ANAは3月30日から羽田空港の国際線を大増便しましたが、首都圏発着枠の増加による外国航空会社を含む供給量の増加やLCCの成長、新幹線の北陸延伸等、過去に例のない激動の時代に突入しています。一方で、日本経済の復活や東京五輪開催に向けた経済の活性化、訪日外国人の増加、さらにアジア経済の発展やASEANにおける航空自由化の動きは、日本やアジアの航空需要をさらに大きく伸ばす要因となってきます。私たちはまさに、厳しい競争環境の中で、成長・飛躍の時を迎えるという、まさにリスクとチャンスの狭間にいます。これからの数年間は、将来を占う最も大切な時期であり、現状に甘んじ勝負を避け、手をこまねいていれば、他に取って代わられる、私達はそういう時期にいます。

これまでも、9.11やリーマンショック、新型インフルエンザ等の疫病、大震災、B787の運航停止等々の様々なリスクにより、私達は存続の危機とも言える厳しい経営状況を何度も経験してきましたが、その都度、青い翼をグループ全員で支え、力を合わせて難局を乗り越えてきました。そして今、自分の力で将来を切り拓くべく「いかなる環境変化があろうとも耐えられる、真に強いグループになること」を目標に掲げ、グループの大変革に着手しています。目指しているのは、「強い個人、強い組織、強い会社、強いブランド、そして強いグループ」の5つです。

皆さん自身が、自分自身を磨き、仲間で協力し高めあい、それぞれの会社の発展に貢献をし、そしてANAをはじめとする各ブランドの価値を高め、グループ全体の利益に貢献する。皆さんと一緒に、こうした正の循環を作り、会社を発展させていきたいと考えています。

▼ANAグループの経営理念と安全理念 ~安全こそ全ての事業の基本~

「安心と信頼を基礎に世界をつなぐ心の翼で、夢にあふれる未来に貢献します。」これが私達の経営理念ですが、全ての事業において、お客様や社会からの「安心」と「信頼」を基盤に、世界のヒトやモノを繋ぎ、夢にあふれた未来に貢献していくという決意です。では「ANAグルー
プなら安心だ」「信頼できる」と思って頂くにはどうすればいいか。その最初に来るものが、安全です。
私たちANAグループにとって、安全は全ての事業の基本となる、絶対的な使命であり、強い誓いです。ゆえに私達は「安全は経営の基盤であり、社会への責務である」という安全理念を掲げ、安全に向けて不断の弛まぬ努力を続けています。24時間、私達は安全と向き合っていること、そして私達の一つ一つの行動の積み重ねの中で、安全が守られていることを、是非肝に銘じて頂きたいと思います。

▼グループの力の結集 ~グループで協力してANAのさらなる発展をさせていく~

グループの運航会社はANA、ANAウイングス、エアージャパン、LCCのバニラエアの4社がありますが、運航会社の力だけでは飛行機を飛ばすことは出来ません。営業から予約、接客、機内食、清掃、手荷物運搬、機材のメンテナンス、貨物対応等々、様々な会社とその従業員が協力することで、お互いの事業が成り立っています。グループの各社は、お互い無くてはならない関係にあります。
ここにいる全員が、お互いを信頼し、協力することによってしか、私達は成長することができません。皆さんはグループの仲間であり、職種や会社の違いによる上下関係は一切ありません。是非、積極的に会社の枠を越えて仲間を作り、皆さん自身、そして仲間と会社の成長を通じ、ANAグループの事業とブランドを更に発展させて頂きたいと、期待しています。

▼グローバルな視野の必要性 ~多様性を受け入れる度量と力量を持つ~

この時代、世界との繋がりの無い業界は殆どありません。ヒト・モノ・カネは世界と繋がり、情報は瞬時に世界中を駆け巡る。世界のどこかで紛争や経済危機が勃発すると、瞬く間に為替や株価、経済に影響する、国境を越え世界が連動する時代になっています。外国人のお客様も取引先も増えました。サービスの面でも業務の面でも、外国人対応が特別のことではない時代になっています。
もはや「私の会社は海外の事業所がない」「私は国内の担当」と言っている場合ではありません。多くの日本企業が成長を求め世界に進出する一方で、国内にも外国人がどんどん入ってきます。今やワンクリックで生きた海外の情報はいくらでも入手できる時代なのです。

では、「グローバルである」とはどういうことか。私は、価値観の違う方々、多様性を受け入れる度量と力量を身に着けることだと考えています。

皆さんや皆さんの職場は、常に世界と繋がっており、世界との関係を遮断することはできません。裏を返せば皆さんの可能性も世界に広がっているということです。どの会社・どの職場であっても、世界に目を向け、将来に向け、努力をして頂きたいと思います。

▼最後に ~経営ビジョンの達成に向けて、チャレンジ精神を持ち続ける~

吉田松陰の言葉に「士たるものの貴ぶところは、徳であって才ではなく、行動であって学識ではない。」というものがあります。才能よりも徳がある人間になりなさい、そして学識よりも行動力がある人間になって欲しいという教えですが、皆さんにANAグループの中で学んで欲しいことは、まさにこういうことです。

私も社内で「やらない、できない理由でなく、どうすればできるかを考えて欲しい。チャレンジ第一。失敗を恐れるな。」とよく言っています。若い皆さんにも是非、やってみようという熱意を大切にして欲しい。それが将来を作る原動力になります。一度や二度失敗しても、そのチャレンジ精神こそが、次に何かをもたらします。それこそが私たちが期待しているものです。

失敗を恐れず恥も沢山かいて、その仕事をマスターする。突き詰めてやってみれば、将来、皆さんの人生に、必ずや役に立つ何かを得て、そして成長をしているはずです。皆さんには、仲間がいます。先輩も、今後入ってくる後輩もいます。私も先頭に立ってチャレンジしていきます。

最後になりますが、私達自身が、近い将来、こうなりたいという目標である経営ビジョンを紹介しておきます。

「お客様満足や価値創造で世界のリーディングエアライングループになる」

これを実現するのは、皆さん自身です。一緒に頑張っていきましょう。