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ANA、スーパーアプリで「マイルで生活できる世界」構築へ、プラットフォーム事業を本格始動

ANAグループは、ANA XとANAセールスの事業を再編し、新たにプラットフォーム事業会社「ANAX」と地域創生事業会社「ANAあきんど」を立ち上げ、2021年4月1日から「マイルで生活できる世界」に向けてANA経済圏の形成を目指す。

収益については、売上高ベースで、平時の旅行事業1200億円~1300億円、ANAカード700億円前後から、5年後には4000億円にまで増やす目標を掲げた。

ANA X社長の井上慎一氏は発表会見で「航空や旅行といった非日常に加えて、さまざまな日常のニーズに応えるスーパーアプリを作り上げ、航空事業の一本足からの脱却を目指す」と話し、プラットフォーム事業によって非航空収入を拡大させていく考えを示した。

また、ANAあきんど社長の高橋誠一氏は地方創生事業について、「地域、顧客、ANAグループの三方良しの精神で、持続的な地域貢献に挑戦していく」と話し、SDGsやESGを念頭に置いた事業を進めていく方向性を示した。

会見で事業の説明を行うANAX井上社長(左)とANAあきんど高橋社長両社は、現在約3700万人の会員を持つ「ANAマイレージクラブ」を顧客基盤として、スーパーアプリでのプラットフォーム事業を展開し、マイルを「貯める・使う」の対象商品やサービスを、ユーザーそれぞれに合った生活シーンに拡大していく。合わせて、決済機能を強化。現在QRコード決済を提供している「ANA Pay」を決済サービス全体を表す総称として展開していく。

報道資料よりスーパーアプリについては、2022年度にリリースする予定。現在、ANAグループではANAアプリとANAマイレージクラブアプリの2種類を提供しているが、井上氏はスーパーアプリの形態について「既存のものを発展させるのか、新しいものを立ち上げるのか、費用対効果を見ながら検討していく」として明言を避けた。

デジタルとリアルの融合を強みに、旅行ではTaaSを展開

ANA Xは、ANAセールスから移管する「旅行事業」、デジタルチャネル販売を中心とする「航空販促事業」、ECや金融など日常生活領域を扱う「ライフサービス事業」、法人向けサービスの「BtoBソリューション事業」の4つの機能で事業を展開していく。

このうち旅行事業については、航空や宿泊などの単品売りではなく、検索、予約、購入のタビマエから地上交通、体験、買物、決済などのタビナカまでをひとつのサービスとしてシームレスに提供する「TaaS (Travel as a Service)」を推進していく方針だ。

一方、ANAあきんどは、地域常駐型を進める。航空セールス機能を東京に集約し、全国の33支店はそれぞれの地域の創生事業に集中。地域密着社員約120人とともに、地域の課題の掘り起こしや解決に向けてソリューション提案を行っていく。これにあわせて、地域創生事業を進めてきた観光アクション部は廃部となり、ANAあきんどに移行する。

具体的には、耕作放棄地の利活用、2拠点居住、おてつたび(働きながら旅するスタートアップ企業の事業)、ワーケーション、地場産品のブランド化およびECによる販路拡大などに取り組む。また、「地方創生のカギは、労働力不足の解消と域内の経済活動活発化」(高橋氏)として、その解決に向けた関係人口の創出にも力を入れてく。

報道資料より高橋氏は、ANAグループとして異業種に参入していくことについて、「地域創生事業は、ANAグループだけで成り立つものではない。ANAグループが持つ顧客基盤、旅行や航空を中心としたサービスや商材を強みに、ANAの価値観に共鳴してもらえるパートナーとの提携関係を築いていきたい」と話し、企業、自治体、DMOなど社外との連携を強化していく考えを示した。

また、井上氏は、今後の事業展開について「デジタルとリアルとの掛け合わせが極めて重要になる」とし、ANA Xが進めるデジタルプラットフォームとANAあきんどが担うリアルの融合が強みと位置づけた。