日産自動車と日本旅行が発起人となり、他12社とともにサステナブルツーリズムを推進する「Green Journey推進委員会」が発足した。全14社は、環境省(デコ活応援隊)や東北大学との連携のもと、国内旅行でのCO2排出量削減や環境保全型アクティビティの開発、関係人口の創出、地域活性化などを目的とした新しい旅のスタイル「Green Journey」の発展を目指す。
賛同企業12社は、JR北海道、JR東日本、JR東海、JR西日本、JR四国、JR九州、JR貨物、地球の歩き方、おてつたび、TBWA HAKUHODO、Earth hacks、日本ジオパークネットワーク。
Green Journeyの第一弾の取り組みとして、熊本県阿蘇市と三重県志摩市との連携で、両地域へのサステナブルツアーの予約販売を開始した。出発日は2024年9月27日から。「環境にやさしく、地域はうれしく、自分たちはとことん楽しい旅」をコンセプトに、日産EVレンタカーでの移動、環境にやさしいアクティビティ、地産地消のグルメなどをオプションとして組み込んだ。
また、新しい旅の旅行体験を提供するために、LINEミニアプリを開発。LINEのスタンプラリー機能によってポイント獲得し、サステナブルなグッズとの交換を可能にするほか、各訪問場所に設置された二次元バーコードを読み取ると、その地域の伝統文化や地域のサステナビリティに関する情報が得られる仕組みも構築した。
さらに、Green Journey参加者限定のアクティビティとして「CONNECT PROGRAM」を用意する。地元でサステナブルな取り組みを展開している人がホストとなり、旅行者と交流し、その土地ならではの産業や文化に触れる機会をつくる。旅行後にも、ホストがLINEアプリで定期的にメッセージを発信することで関係人口や「第二のふるさと」の創出につなげていく。
自治体との連携も推進、2033年までに利用者数1000万人へ
具体的な活動目標として、EV車の活用、サステナブルな料理、環境にやさしいアクティビティなどを通じて、カーボンオフセットではなく、実数としてCO2排出量を現在の20%以上削減。2030年までに旅行時の移動におけるCO2排出量を累計4771トン削減できる見込みだという。
今後、一次交通事業者や再生可能エネルギー事業者などの多様な企業や団体を加えることで、2050年には国内旅行におけるCO2排出ゼロを目指す。
また、全国の自治体との連携も推進。Green Journeyの旅先を2028年までに50エリア以上、2030年までに200エリア以上に拡大させ、2033年までに延べ利用者数1000万人を目指す。
日産常務執行役員の神田昌明氏は発表会見で、EVを通じた環境課題の解決を進めるなかで、観光産業に着目したと説明。世界の観光産業からのCO2排出量は全体の8~11%を占めており、その大部分が移動から発生していることに対して問題意識を示した。そのうえで「新しいサステナブルツーリズムの実現を目指す方策を考えるに至った。これを実現していくためには、業界の垣根を超えた協力が大切になってくる」と発言した。
また、日本旅行社長の小谷野悦光氏は、カーボンオフセット商品はまだ一般化していないとしたうえで、「国内旅行需要が高まっている今こそ、課題に向き合い、サステナブルツーリズムのスタンダード化に向けて具体的なアクションを実行する必要がある」と強調。環境への配慮とともに、人手不足、二次交通、文化産業の維持発展など地域の課題の解決にもつなげていく考えを示した。
阿蘇と伊勢志摩で楽しみながら学べるツアー
今回販売が開始された「Green Journey熊本阿蘇」では、阿蘇の大自然や地域との共生を手軽に楽しみながら学べるツアーとして、e-BIKEによる阿蘇噴火口にせまる草原ライド、千年の草原での乗馬トレッキングなどをオプションとして用意。食事では、地元食材「あか牛」などを使った料理を提供し、宿泊はサステナブルな取り組みを実践している施設を厳選した。
また、「Green Journey伊勢志摩」は、伊勢志摩の豊かな里山・里海と地域文化を楽しみながら学べるツアーとして、志摩自然学校でのシーカヤック、志摩グリーンアドベンチャーでのアトラクションなどをアクティビティとして提案する。食事では、黒潮の蛇行などの影響で逆に漁獲量が増えているウツボやアイゴなどを活用した新しい料理を提供する。宿泊でも環境対策に取り組んでいる施設を選んだ。
今後のエリア拡大について、日本旅行の小谷野氏は、「旅館やアクティビティがある程度CO2排出量削減の取り組みをしているところ、SDGs未来都市としての認定されているところ、あまり観光客が行かないようなところなどを軸に、ツアーとして成り立つかどうかを検討しながら開拓していく」と話した。