宿泊施設が「音声×生成AI」でできること、おもてなし最前線で起きる変化と、その効果とは? -トラベルボイスLIVEレポート(PR)

ChatGPTの登場以降、身近な存在となった生成AI。音声を認識して様々な指示や問いに応える「AIアシスタント」に生成AIを搭載したサービスも始まっている。顧客接点、コミュニケーションのシーンが多い宿泊施設は、宿泊客へのサービスとして、どのように活用できるのか。

2024年5月に開催された国際ツーリズムトレードショー(iTT)での特別版「トラベルボイスLIVE in iTT」では、アマゾン(Amazon)のAIアシスタント「Alexa(アレクサ)」の宿泊施設向けサービスで日本初の業務提携先となり、パートナーに認定された TradFit(トラッドフィット)代表取締役の戸田良樹氏が登壇。生成AIに関する説明から、客室やフロント回りといった宿泊客との接点でできること、その効果について説明した。

日本でも、音声での生成AI利用が日常に

戸田氏は生成AIについて「複雑なことは省いた前提で簡単に説明すると、24時間、人に代わって(指示や問いに)回答してくれるもの」と説明。この技術開発に、Google、Microsoftなど海外大手のプラットフォーマーや国内大手企業もかなりの投資をしており、「Amazonは欧米日などの国内外で、最も早く、かつ多くAlexaのスマートスピーカーを普及させた。報道によると、米国では生成AI搭載を開始した。これが近く、日本にも必ず来るだろうと想像している」(戸田氏)。もう間もなく日本でも、音声で人間と変わらない双方向の自然な会話が可能になる生成AIの使用が当たり前にできるようになると示唆した。

一方で、日本においては「スマートスピーカーといえば、2017年にAmazonやGoogleの製品が上陸した当時のクオリティの印象が染み付いている。実際には、この7年間で音声認識精度は飛躍的に高まっており、当時のイメージのまま活用しないのはもったいない」と指摘する。

トラッドフィットでは、Alexaの宿泊施設向けサービス「Alexa Smart Properties for Hospitality」を基盤に、日本のホテル・旅館向けに対応した「Hospitalia」をAmazonと提供。これにトラッドフィットが独自で開発しているBtoB向け生成AIを載せ、2023年12月から客室でのスマートスピーカーコンシェルジュといえるサービス提供をしている。「2024年度中にも本格運用へと、徐々に移行していく方針」(戸田氏)だ。

生成AIの利用で、懸念されるのが“ハルシネーション”。AIが事実に基づかない誤った情報を生成し、回答する現象だ。これについて戸田氏は、各社が対策として生成AIへの強化学習等をおこなって精度を高めていることを説明。トラッドフィットでも強化学習等を実施しており、従来のスマートスピーカーでは反応できないことが多かった複雑な問いかけに対しても、正確に回答ができるようになっている。実際、同社のサービス導入後2カ月間で、館内の問い合わせ件数が半分以下に減少した宿泊施設もあるという。

「音声×生成AI」が生むホスピタリティとメリット

AIアシスタントに生成AIが搭載されることで、宿泊施設のホスピタリティ領域では何ができるようになるのか。

戸田氏が提示したポイントの1つが、宿泊客の“宿泊体験・満足度の向上”が可能になること。具体例の一部として、FAQ(よくある質問)など用意された文書のなかから質問に沿った回答はもちろん、宿泊施設が案内したい場所への案内ができるという。

例えば、館内レストランに関する問い合わせがあった際、「今は空いています。シャンパンなどのドリンクサービスも提供中です」など、分散化につながる誘導案内も加えることができる。混雑状況を測るセンサーと連携することで、リアルタイムの状況の案内も可能だ。この考えを応用すれば、「館内施設のみならず、提携している周辺の飲食店や体験アクティビティなどへの“送客”も可能になる」と戸田氏。

「当社は提供サービスを通じて、宿泊施設をハブとし、地域活性化につなげてもらうことをポリシーにしている。そのエリアならではのコト体験、食文化など、日本人でも知らないような素晴らしい情報はまだまだあるはず。それをリコメンドし、再訪意欲を促して、1回目よりも長期滞在がしたくなるような、ファンを増やす取り組みに活用していただきたい」と提案する。

海外のグローバルチェーンやテーマパークホテルなどでは、タッチパネルの画面のカスタマイズや、AIアシスタントで人気キャラクターの声を使用して客室でもエンタメ性を継続させる演出をするなど、ブランディングへの活用や宿泊客の体験価値の向上に使っているケースもあるという。

トラッドフィット代表取締役の戸田良樹氏が登壇

もう1つ、戸田氏が強調したポイントが「インバウンドとの相性の良さ」だ。戸田氏は、米国では2022年には7000万世帯がスマートスピーカーを保有しているというAmazonが公表したデータを紹介。「一家に一台、スマートスピーカーを所有していることになる。欧米、中国、韓国などの海外客は音声でのインターフェースに慣れている」と話し、言語対応でも宿泊客が使った言語で自動応答が可能なスマートスピーカーの優位性を説明した。

さらに、スマートスピーカーは訪日客の客室での不便解消に役立つ。音声で客室内の家電の操作ができるからだ。トラッドフィットが海外からの宿泊客300名にインタビューした結果、「外国人の宿泊客の率直な意見として、日本の家電は操作ボタンの数が多く、使い方がわかりにくい。音声で操作したいというニーズが高いことが判明した」という。

戸田氏によると、この傾向を踏まえ、客室のIoT(モノのインターネット化:建物や家電などのモノをインターネットに接続して、相互操作が可能な状態にすること)に取り組む宿泊施設も増えており、「この流れは、加速していくのではないか」と見ている。

手段としてのDXを

もう1つ、宿泊施設がスマートスピーカーを導入する利点は、効率化の観点だ。

スマートスピーカーの導入によって、客室内に時計や電話機の設置が不要になる。導入を機に電話交換機(PBX)をなくした宿泊施設もあり、「設備投資コストの部分を削減できる効果が非常に高い」と戸田氏。もちろんサービス対応でも、例えば電話の問い合わせ件数が半分以下に削減した宿泊施設もあり、「宿泊客とのコミュニケーションが強化され、スタッフの生産性向上につながる」。設備費用の削減と省力化によって、「400室規模の総合型ホテルでは3年の使用で約5億円以上のコスト削減につながった例もあった」という。

また、データ活用も可能だ。AIアシスタントに話しかけた言葉やタッチパネルに入力したテキストは、GDPR等に準拠した、Amazonが誇る世界最高水準のセキュリティで宿泊施設に蓄積される。そのため「時期や時間に応じた問い合わせやオーダーの傾向を客観的に分析できる。それをさらなる業務効率化やマーケティングに活用できる」と説明する。同社のサービスを導入したある施設では、データを活用し、効率的なデータドリブン経営を現場と経営陣が協力しながら推進。ワークライフバランスの改善に寄与し、5億円以上のコスト削減に成功しているという。

戸田氏は「DXの必要性が言われているが、DX自体が目的となってしまっているケースが少なくないと感じている。私は目的としてのDXを進める前に、本質的な手段としてのDXが大切だと考えている。人手不足に歯止めがかからない状況下で生産性を向上し、ホスピタリティを向上させるための手段として、生成AIのサービスを活用いただきたい。利益率を高め、従業員の賃金に還元していくことを課題とする宿泊施設が多いため、そのような本質的な課題に現場も経営サイドも気がつき、覚悟を持って取り組んでいる宿泊施設を徹底的にサポートしていきたい」と話した。

進行役を務めたトラベルボイス代表の鶴本は講演のポイントの1つとして、「生成AIにホスピタリティのクオリティそのものを学習させることができ、質の高いサービス提供に貢献する」という点を指摘。また、客室の電話機や時計などの設備投資が削減されるほか、「音声が主役であるものの、タッチパネルを併用することでユニバーサルな対応になることも、宿泊施設にとって魅力的な話」と付け加えた。

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記事:トラベルボイス企画部

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