国立社会保障・人口問題研究所はこのほど、2012年7月に実施した「生活と支え合い に関する調査」の結果の概要を取りまとめた。それによると、親に経済的支援をしている割合が増加し、現在の暮らし向きについても約4割が「やや苦しい」「大変苦しい」と答えるなど、生活困難の実態が明らかになった。
この調査は、生活困難の状況や家族や地域の人々の支え合いの実態を把握し、公的な支援が必要なのはどのような人なのかなどを調査することを目的として、5年ごとに実施しているもの。調査対象は「平成 24 年国民生活基礎調査」で設定された全国(福島県を除く)の調査地区(1,102 地区)から無作為に選ばれた 300 地区に居住する世帯主および 20 歳以上の世帯員。有効回答票数は、世帯票 11,000(有効回収率 68.3%)、個人票 21,173(有効回収率 80.6%)だった。
まず、親への経済的支援についての調査では、20歳代から 60歳代の人々のなかで、自分の親へ経済的支援をしている人の割合は、男性で14.3%(前回12.0%)、女性で10.5%(同8.1%)となり、前回調査(2007 年)に比べ、その割合は高くなった。男性では40歳代が17.4%と最も多く、女性では20歳代が16.3%と最大になった。また、若者(20歳代)の生活費用の担い手については、20〜24歳では、親に生活費用の全額または一部を担ってもらっている人の割合が高く、25〜29歳では、本人、配偶者、またはその両方で生活費用を担っている人の割合が高いという結果になった。
現在の「暮らし向き」については、約半数の人は「普通」とする一方、「大変ゆとりが ある」「ゆとりがある」は1割弱にとどまり、約4割の人は「やや苦しい」または「大変苦しい」と回答。特に 30〜50歳の無職の男性で苦しい(「やや苦しい」「大変苦しい」の合計)とした人の割合が高い傾向があった。また、過去1年間で、家族が必要とする食料が買えなかった経験について、「よくあった」 とする世帯は1.6%、また「ときどきあった」とする世帯は3.7%となった。しかし、 食費、衣服費の困窮、家賃、その他債務の滞納経験の割合は、前回に比べ若干低くなっている。
人々の支え合いの実態に関する調査では、20 歳以上の人のなかで、ふだんの会話頻度(電話での会話を含む)が「2週間に1回」以下となる人の割合は2.1%。一方、ひとり暮らしの 65 歳以上の男性では、 その割合が 16.7%まで増え、社会的孤立が心配される実態が明らかになった。世代別にみると、20歳代から50歳代の人々は、9割以上が「毎日」会話をしている。所得別にみると、65歳未満、65歳以上とも、所得が低いほど「毎日」会話をする人の割合は低くなるという結果が出た。頼れる人の存在については、おおよそ7割から8割の人が、「看病や介護、子どもの世話」「健康、介護、育児に関する相談」「いざという時の少額のお金の援助」「災害時の手助け」について頼れる「家族・親族」 がいると回答。一方、「頼れる人がいない」という人も存在し、所得が低いほどその割合は高い傾向があった。
この調査では、東日本大震災の影響についても質問。その結果、「家族や友人・知人との絆が強まった」が17.6%、「ボランティア活動を始めた」が2.1%あった一方で、「屋外活動の自粛など、生活面が変化した」が11.3%、「収入が減少した」が10.4%、「医療機関受診を必要とするほどの心理的不安が高まった」が2.7%、「転職や失職をした」が 0.8%、と負の影響も広がっている状況が明らかになった。