秋本俊二のエアライン・レポート
先日、奄美諸島での取材を終えた帰りのことである。福岡から21時発のJAL便で帰京予定だったが、離島からの便が予定より早く福岡空港に到着。そこで、カウンターへ行き20時発の便に変更してもらったところ、搭乗ゲートで待つ乗客たちが何やらざわついていることに気づいた。ボーディング開始までまだ少し時間があるのに、長い列ができている。
搭乗開始がアナウンスされ、キャビンに足を踏み入れて、やっと理解できた。その日は2014年5月28日。国内線で使用するボーイング777-200に導入された新しいエコノミークラス「JAL SKY NEXT」が、羽田/福岡線でデビューした当日だったのである。
私のシートは「48C」。出発間際に変更してもらったため、キャビン後方の席しか空いていなかったが、運よく通路側をとることができた。先に乗り込んでいた乗客たちが、カメラを手に記念撮影をしている。なるほど、これまでのキャビンとは雰囲気も見た目もがらりと変わった。黒とワインレッドを基調にした本革シートが、これまでにない高級感を醸し出している。
「いつもだと取れれば必ずクラスJに乗るんですけど」と話すのは、通路をはさんで隣にいた出張帰りの吉田尚也さん(36)だ。「この新シートならゆったりしていて、普通席でも十分満足ですね」
スリム化とシート形状の工夫により、足元のスペースを最大で5センチ拡大。背もたれのクッションにも研究のあとが見られ、滑りにくく安定したポジションをとれる。背中の落ち着き感が抜群にいい。機内照明はLED化され、ピンク色の「さくら」やブルーの「なつぞら」、グリーンの「わかば」など複数パターンでキャビンを照らすことで季節の変化などに応じた演出が可能になった。優しい光の中に身を置いているだけで、仕事帰りの疲れもいくぶん癒されるような気がする。7月からは機内Wi-Fiサービスもスタートする予定で、国内の移動がより快適になりそうだ。
吉田さんが言うように、普通席で満足する人が増えると上級クラスの売れ行きに影響が出るのではないか。余計なお世話とは思いながらも、つい心配になってしまう。シートベルトや荷物ラックの離陸前チェックを続けるCAの一人にそのことを告げると、彼女は「クラスJもリニューアルして、普通席よりさらに質感の高い、高品位の本革を採用しました。次回はぜひクラスJも試してみてください」と言ってほほ笑んだ。
新シート「JAL SKY NEXT」を搭載した777-200の6月30日までの運航は、羽田発7時25分のJL303と同12時25分のJL315便、同17時25分のJL325便、福岡発が10時00分のJL310便と同15時00分のJL320便、同20時00分のJL332便の計6便。夏以降は777-300や767-300、737-800のキャビンも順次改修が進められ、年内には34機に導入される計画である。