米誌トップ評価で観光客が急増、メキシコ中央高原のコロニアル都市の個性とは?

メキシコで人気のビーチリゾート・遺跡観光に加え、近年、周遊ルートとして名が知られるようになった「銀の道」。このルートには、古き良き時代を残し、観光客の旅情を誘う魅力あふれるコロニアル都市が点在している。ルートを代表する都市、グアナファトとサンミゲル・デ・アジェンデを中心に、現地を取材した。(取材・記事:横井弘海/取材協力:アエロメヒコ航空)


銀鉱で得た富を人々はせっせと教会などに寄進した

「銀の道」とは、メキシコシティから米国のテキサス、ニューメキシコへと2600㎞にわたって延びる「カミーノ・レアル・デ・ティエラ・アデントロ(大地にある王の道)」のこと。16世紀半ばから19世紀まで300年にわたり、中央高原のサカテカス、グアナファト、サン・ルイス・ポトシの鉱山で採掘された銀や、ヨーロッパから輸入した水銀を輸送する交易路として利用された。

銀はかつての宗主国スペインの富の基礎を築いただけでなく、宗教的、文化的にスペインとアメリカ先住民文化の交流をもたらした。メキシコ側1400㎞の距離の範囲が2010年に世界遺産に登録されたが、この地域には5つの世界遺産が点在している。



▼2つのコロニアル都市に共通する魅力とそれぞれの個性

世界遺産「古都グアナフアトとその銀鉱群」「サンミゲルの要塞都市とヘスス・ナサレノ・デ・アトトニルコの聖地」を構成する町、グアナファトとサンミゲル・デ・アジェンデ。ともに18世紀に銀の採掘で栄え、その富をつぎ込んだ重厚な建造物が立ち並ぶ。買い物や食事も楽しめることから人気が高まり、最近は洒落たホテルが増えている。メキシコを代表する文教都市でもあり、語学習得や芸術を学ぶ留学生が各国から集まってくる。学生は若い人だけでなく、シニアの学習熱も高い。

グアナファトは銀鉱で栄えた町だった

共通点の多い2都市だが、町の雰囲気はどことなく異なり、見逃せない観光スポットもそれぞれにある。まず、グアナファトは16世紀に銀鉱が発見された山間の鉱山の町だ。ラ・コンパニーア聖堂やサンディエゴ教会などが往時の繁栄を偲ばせる。そして、メキシコ独立に至る反乱軍がスペインに初めて勝利した町でもある。

町歩きが楽しいコロニアル都市グアナファト

42度という急な傾斜をケーブルカーで上った小高い丘に、独立の英雄のひとり「ピピラの像」が力強く立つ。そこから夕闇の町を見下ろせば、谷間から山の途中までを埋める家々のオレンジ色の灯りが、まるで星を散りばめたようだ。その煌めきは、高地の夜の冷え込みでいっそう冴え、必見。

グアナファトで必見の星空のような夜景

日用品から土産物まで建物いっぱいに店が立ち並ぶイダルゴ市場、「階段の下から3段目でキスをすると『7年間は』幸せでいられる」というメキシコらしい?言い伝えがある「口づけの小道」も人気のスポットだ。

ウチワサボテンはメキシコの代表的な野菜。店先でトゲを取っている女性

▼特筆すべきサンミゲル・デ・アジェンデ

米旅行誌トップ評価から観光客が押し寄せる

銀鉱山の町サカテカスからメキシコシティへ銀を輸送する中継地として、また繊維工業で発展したサンミゲル・デ・アジェンデは、かつてのカラフルな色の家並みが、時を経て、なんとも言えない良い雰囲気を醸し出している。農園主たちの大邸宅、宮殿、教会など現存する建物は、ほとんどが18世紀までのもので、メキシカン・バロック様式から新古典主義へ移行する時期の特徴が表れる。

こんな風景を楽しめるブティックホテルも次々建設されている

町のどこにいても目印になるピンク色のサンミゲル教区教会を中心に道が縦横に通り、散策しやすい町だ。祭りや行事で、いつもにぎわっている。

町のシンボル、ピンク色のサンミゲル教区教会

ところで、今、この町の人気が沸騰している。米大手旅行誌「コンデナスト・トラベラー」が2013年に発表した、読者130万人の投票で魅力的な観光地を選ぶ「世界の都市25選」の第一位に選ばれて以来、アメリカ人を中心に観光客が押し寄せているからだ。

あるリタイア組のアメリカ人夫婦は、サンミゲル・デ・アジェンデに来るのは4回目。「他にはない歴史を感じさせる町並みと、毎回発見する新しい店や美味しい料理も魅力。治安も良いし、1か月の予定で滞在します。他の人にここをあまり宣伝しないでね」と言うと、口元に人差し指を立てて、「シーッ」とおどけて見せた。

町には欧米リゾート並の高級店や高級ホテルがある一方、食事や買い物問わず、割安感があるものもたくさんある。アメリカ人のみならず、特に女性やカップルは惹かれるにちがいない。

洒落たカフェも多い。時にはカフェで朝食を取るのもこの町の楽しみだ

現地ツアー会社大手の株式会社メキシコ観光手配部長、宮良高雄氏は、「もともと人気の観光地ですが、特にサンミゲル・デ・アジェンデの人気は沸騰しています。町中には不動産屋も目立って増えている印象です。」と語る。「アメリカ人旅行客が増え、アメリカ人の経営する店やホテルが増え、現地に住むアメリカ人も増えて、その影響で、物価が急激に上がり、地元との人々は仕事が増えたことに喜ぶ半面、物価が上がったことに困惑もしているようです。アメリカ人の投資並びに旅行者は、今後もさらに増えるのではないでしょうか」と、宮良氏は予想する。

  • 取材・記事:横井弘海
  • 取材協力:アエロメヒコ航空
  • 編集:トラベルボイス編集部

みんなのVOICEこの記事を読んで思った意見や感想を書いてください。

観光産業ニュース「トラベルボイス」編集部から届く

一歩先の未来がみえるメルマガ「今日のヘッドライン」 、もうご登録済みですよね?

もし未だ登録していないなら…