エクスペディア日本トップに聞いた、2017年事業戦略と本格化するOTA競争への対応

2016年11月に日本語サイト開設から10周年を迎えたエクスペディア・ジャパン。この10年、日本でもオンライン旅行会社(OTA)として大きく存在感を増してきた。そんな中、昨年、エクスペディア・ジャパン代表取締役社長に就任した石井恵三氏は「今後2、3年は大きな転機になる」と予測する。さらには、今年はB2CビジネスだけでなくB2Bビシネスでもさらなる飛躍を目指す考えだ。

石井氏が描くオンライン旅行の未来図とは? エクスペディア・ジャパンの事業拡大の戦略とは? 石井氏に聞いてきた。

B2Bに伸びしろ、旅行会社向けとともに企業にもアプローチ

現在のところ、エクスペディアの日本における販売はB2Cが約9割、B2Bが約1割と、消費者向けのシェアが圧倒的。エクスペディアとしては、B2Bに伸び代があると見ており、2017年以降さらにこの分野を強化していきたい考えだ。

旅行会社向けB2Bとして拡大している「クマの手」に加え、法人・企業へのアプローチを進める。いわゆるビジネストラベル(BTM)の分野で、「powered by Expedia」として航空券やホテル販売を広げていく。「私自身が旗振り役となって進めていく」と石井氏。「B2Bビジネスは石垣。一度固めるとなかなか崩れない。まずはその石垣を作って、競合から取られないようにしていく」と意気込む。

同氏によると、この分野の日本における事業規模はまだ小さく、全体のシェアからみるとまだわずか。それを、全体の成長の中で今後2、3年のうちに伸ばしていきたい考えだ。

企業の海外出張を取り巻く環境は大きく変化しており、それゆえにエクスペディアでは新たなニーズに応えていくチャンスがあると見ている。第一はコスト削減。石井氏は「エクスペディアを利用すれば、航空券もホテルも確実に安く手配できる」と自信を示す。また、宿泊費や航空券など項目別に費用を出すことができるために、企業のコンプライアンスにも貢献することができるとアピールする。

B2Cでは、新たなマーケットで競争本格化と予測

80482_02B2Cでは、日本では10年間「オンライン総合旅行会社として真の競合がいなかった」と石井氏。世界と同様に日本でも順調に業績を伸ばしてきた実績と経験から、今後も「自動運転で伸ばしていけるだろう」と展望する。

一方で、2017年からはマーケットの変化によって既存(レガシー)旅行会社や外資OTAとの競争が本格化すると見ている。その理由として挙げるのが、パッケージ旅行から自由旅行に移行する過渡期マーケットの動向だ。

「日本の大手旅行会社が得意とするフルパッケージとエクスペディアのような自由設計の旅行との“狭間”のマーケットを各社が狙いに行くのではないか」とみている。レガシーの旅行会社とOTAが歩み寄り、「今後2、3年で両サイドが“狭間”でぶつかる」としたうえで、「数年後には旅行業界のシェアが大きく変わる可能性がある」と大胆な予測を立てる。そのなかで、エクスペディアとしては「今のマーケットを大切にしながら、そうした新規マーケットも取り込んでいく必要がある。レガシー旅行会社ともOTAとも戦っていかなければならないだろう」と展望した。

では、そのマーケットの変化にエクスペディアはどう対応していくのか。

石井氏は「こちらも合わせて変化するというよりも、コアを大切にしながらサービスを補充していくという方向性だ」と説明する。そのひとつが、モバイルユーザーを意識したサービスの追加だ。現状、モバイルで訪れる人の成約率はPCに比べると低いため、「多少選択肢は狭めても、モバイルで買いやすいフローを作っていく」考え。

さらに、アプリの強化も実施。PCと同じように、ダイナミックパッケージ、保険、現地ツアーなどもアプリで購入できるように改善していく計画だ。

また、サイトの充実にも注力。「買う気がなくてもサイトを訪れてもらえるように、海外の面白さを伝えるコンテンツを充実させていきたい」と話し、サイトとしてのコンテンツ力をつけていく方針も示した。

AIよりビックデータ、地方活性化にも関与へ

米エクスペディアは近頃、アマゾンが提供するAI搭載音声アシスタント「Alexa」を使ったサービス「Expedia skill for Alexa」を開始した。しかし、石井氏は「日本では時期尚早」との意見だ。「スマホでもっとやれることはある。AIよりもビッグデータと旅行を紐付けること。これを、まずやるべきだろう」と提言する。

また、日本の観光産業のテコ入れでもグローバル企業としての経験やIT分野での知見を提供していく考え。石井氏は、日本の観光産業の改革や国際競争力をつけるために昨年末に新設された「観光産業革新検討会」で委員にも選定されており、国や自治体、観光事業者などとの接点を深め、「日本の観光立国に寄与する活動に尽力したい」と意欲を示した。

今年も、世界2大OTAである同社の存在感が、日本においても各方面で増しそうだ。

聞き手:トラベルボイス編集部 山岡薫


記事:トラベルジャーナリスト 山田友樹

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