トランプ大統領の入国規制で米国の空が大混乱、航空業界団体が見直し求める声明を発表

写真:AP通信

トランプ米大統領が2017年1月27日に発令した大統領令により、中東・アフリカ7カ国出身者などが米国への入国を突然、拒否される事態となり、異例の混乱状態に陥っている。

旅客対応の矢面に立たされているのは、旅客を米国へ輸送する立場にある航空会社だ。デルタ航空(DL)、アメリカン航空(AA)、ユナイテッド航空(UA)では、対象となる可能性のある旅客に対し、注意を呼び掛け、航空券の払い戻しや予約変更の相談に応じるとしている。

ロサンゼルス空港では、周辺での抗議デモによる交通渋滞などにより、クルーの到着が遅れ、出発便の遅延が発生。空港当局は、旅客に対し、普段よりも早めに空港に向かい、チェックイン手続きは空港到着前に済ませるのが望ましいと呼び掛けた。

ロサンゼルス国際空港 トムブラッドレー国際線ターミナルの模様:AP通信日本航空(JL)でも、米国便利用客に対し、アメリカの一部の空港でデモが実施されているため、空港周辺は混雑が予想されること、空港までのアクセスや、空港での手続きに、通常より時間を要すると注意を促している。

こうした状況下、国際航空運送協会(IATA)は30日付で「渡航に関する米大統領令について」との声明を発表。IATAが「人と貨物の自由な移動」を目指し、自由、安全、効率的な空の移動を目指しつつ、国境警備に関する各国の主権も尊重するとの立場を説明した上で、今回の米大統領令は「大規模かつ急な入国資格の見直しであり、事前の説明や警告もなく、航空会社や旅行者の混乱を引き起こしている」と指摘。その結果、IATAに加盟する航空各社は「はっきりしない要求事項への対応に追われ、コスト増や罰則の可能性も懸念しなければならない」と、航空会社が予想外の負荷を強いられている事態を憂慮する。

IATAとして「米政府には、早急に現状についての明快な説明を求める」とともに、全世界の政府に対し、「旅行者が状況を正確に理解し、航空会社が効率的に対応できるよう、入国資格の変更については、事前に十分な調整を行うよう要請する」と訴えた。

サンフランシスコ国際空港の模様:AP通信

AP通信によると、混乱は米国内外に広がっている。

中東出身で、米国に留学中だった学者、米国在住の恋人や家族を訪問予定だった旅行者、西海岸からカリブ海クルーズに出かけて戻ってきた中東生まれの米国居住者、そのほか、大統領令が出たタイミングに、たまたま米国外にいた人が、米国に再入国できず苦境に立たされている。

法的に許可を得ている米国居住者や、米滞在ビザをすでに取得している旅行者であっても、該当する7カ国出身者は、いったん米国を離れると再入国できなくなる不安から、海外出張や米国外の親族訪問にも影響が出ている模様だ。

一方、連邦判事や弁護士など法務関係者らは、米国への入国拒否にあった人々を助けるべく、動きだしている。ニューヨークのケネディ国際空港では30日夕方、入国資格に問題があるとして身柄を拘束されていた旅客のうち、40数人が弁護士の働きかけにより解放された。国土安全保障省(DHS)のジョン・ケリー長官は、グリーンカードと米国永住権保持者は、問題となる経歴などがない限り、再入国を認められるとしている。

トランプ大統領は、各地での混乱は、抗議デモやコンピューターの誤作動が原因であり、「野放しになっている悪い奴ら」を取り締まるために早急な行動が必要だ、と大統領令の正当性をツイッターで強調した。

今回の大統領令はテロ対策の一環で、イラク、シリア、イラン、スーダン、リビア、ソマリア、イエメンからの旅行者の入国を90日間、禁止とするもの。さらにすべての難民の入国を120日間停止、シリア難民につては無期限の停止としている。

これに伴い、米国務省は対象国の国籍保持者に対し、領事館におけるビザ発給業務を停止。すでに領事館や大使館での査証手続きアポイントメントを予定していた人にも、館内は立ち入り禁止となるため、次の通達があるまで、領事館には来ないよう求めている。

国際連合難民高等弁務官事務所(UNHCR)では、今回の大統領令により、米国への移住に向けて手続き途中にあった難民2万人に影響が出るとしている。

カナダ・オタワの米国大使館前の模様:AP通信シリア人ファミリー。レバノンのベイルートにあるUNHCRにて:AP通信

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