米国への入国が通常通りに、大統領令が一時停止、旅行関係者は不透明な情勢の長期化を危惧

提供:AP通信

イスラム圏7か国を対象とした米国への入国規制が撤回され、一時は騒然としていた米国の国際空港での混乱状況が収束へ向かいつつある。AP通信によると、米国への入国を一時禁止とする大統領令の対象となり、空港などで足止めされていた同7か国出身の旅行者は週末、無事に家族の待つ自宅や、米国内の訪問先へ。ニューヨークのケネディ空港では、再会を喜ぶ人々が涙する姿が見られた。

AP通信によると、グリーンカードや訪米ビザ保持者は、当該国出身であっても、以前と同じように米国への入国を認められている。世界各地から米都市へと乗り入れる航空各社も、搭乗客を平常通り受け入れている。

米国務省は、1月27日に大統領令が出てからの1週間で、同7か国出身者6万人の訪米ビザが一時的に取り消し扱いとなったことを明らかに。これに対し、ワシントン州シアトル連邦地裁が、大統領令の一時差し止めを命令。大統領令が出る前の入国審査基準が再び有効となった。

ただし司法省は、この判断を不服として上訴。今後の見通しは、連邦控訴裁判所での法廷論争へと持ち越された。米トランプ政権側は、大統領令は米国の安全のために必要との主張を続けており、控訴裁の判断が出るまで、混乱が完全に収まったとは言い難い。

ユーロモニターのアナリストで旅行プロジェクト・マネジャーのナデジダ・ポポヴァ氏は、今回の大統領令の影響が最も大きいのは、エミレーツ航空、エティハド航空、カタール航空など、中近東を拠点とする航空会社という。「いずれもここ数年、米国の空の市場に積極的に進出し、路線ネットワークを拡大してきた。対する米系航空会社は、こうした動きを阻止するべくロビー活動を強化してきた経緯がある」(ポポヴァ氏)。

また今回の大統領令による混乱は「その不明確さ」が問題だとする。混迷が長期化すれば、米国のインバウンド、アウトバウンド双方向の旅行市場への影響は必至。他の国が報復措置として類似の施策を導入することや、より過激な保護主義的政策の可能性を懸念する旅行関係者も多い。こうした展開が、オープンな国という米国のイメージや、訪米および米国発の海外旅行需要に影響を与える可能性も危惧している。

なおイランとの関係への影響について同氏は、「政治的には強いメッセージとなったが、旅行・観光産業への影響は軽微。米国人はイランへ自由に旅行できるが、両国間の緊張関係を反映して、2016年の米国発訪イラン旅行は4000件、経済効果は650万ドルほど。イランの観光産業にとって米市場は0.3%を占めるにすぎない」としている。

※編集部注:2017年2月6日12時現在(日本時間)の情報です。

AP通信

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