航空業界団体トップが来日、IATA事務総長が語った米国の入国規制から新たな航空通信規格(NDC)まで

国際航空運送協会 (IATA)事務総長兼CEOのアレクサンドル・ドゥ・ジュニアック氏は2017年3月9日、都内で行われた記者会見で、トランプ米大統領が署名した入国禁止に関する大統領令について、「IATAは原則的に開かれた国境を支持する」と説明した一方、「それぞれの国は規制する権利を持つが、それには秩序だった手続きが必要」との見解を示した。

ジュニアック氏は、今年1月に署名された大統領令は突然の発表だったため入国禁止対象国となった旅客対応で航空会社は混乱したが、3月6日に署名された修正案については、「(航空会社が準備する)時間にある程度の余裕がある」と一定の評価を示した。

トランプ米大統領が明言している北米自由貿易協定(NAFTA)の再交渉についても言及。NAFTAの見直しが進めば、「航空業界にはマイナスの影響が出るだろう。航空業界は長年にわたってグローバリゼーションに貢献してきた。保護主義的な政策は、経済成長を鈍化させることにもつながる」と危惧を表した。

NAFTA加盟国のメキシコには日系企業も多く進出していることから、見直しは日本/メキシコ線の需要にも影響が出ると予想される。今年2月15日にはANAが成田/メキシコシティー線を新規開設、3月2日からはアエロメヒコがデイリー運航に増便している。

新たなデータ通信規格(NDC)導入を働きかけへ

また、IATAが進める「ニュー・ディストリビューション・ケイパビリティー(NDC)」については、旅客の利便性向上において重要なツールとの認識を示し、今後さらに航空会社に導入を働きかけていく方針。NDCは、消費者が航空会社の付帯サービスや商品を旅行会社経由で確認できるというXMLベースのデータ伝送規格で、既存のGDSと競合することになる。

ジュニアック氏は、「将来的には、引き続きGDSを利用するケース、GDSよりもNDCを選ぶケース、併用するケースが出てくるだろう」との見通しを示したものの、その割合については「最終的に決めるのはマーケット」との見解にとどめた。今年1月20日現在、NDCを導入している航空会社は、エアカナダ、アメリカン航空、中国東方航空、エミレーツ、ルフトハンザ航空など25社。

このほか、日本のインバウンド政策についても触れ、今後訪日外国人旅行者数4000万人、6000万人を目指すなかで、空港への投資は重要と強調。関空に導入されたスマートセキュリティーの他空港への拡大、モバイル搭乗券などターミナルの効率化、東京上空の空域の効率化、羽田と成田の役割調整などで課題解決を呼びかけた。

また、これまで割高とされてきた日本の空港の着陸料については、「関空と成田の着陸料は低減化され、それぞれ世界13位と23位にまで下がったものの、依然として羽田の着陸料は高い。国際的な競争力を高めていくためにも改善の余地はある」と訴えた。

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取材・記事 トラベルジャーナリスト 山田友樹

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