WIT Japan2017が今年も開幕した。オンライン旅行のキープレイヤー達が、そのトレンドを語り合うオンライン旅行業界の国際会議の初日、6月8日のブートキャンプには昨年を上回る約300名が集結。起業家によるオンライン旅行に関わるビジネスのコンペや、世界のキープレイヤーらの発言に熱心に耳を傾けた。
WIT(Web in Travel)は、2005年にスタートしたシンガポール発のイベント。今年で12年目、日本版の開催は今回で6回目となる。その規模は、オンライン旅行市場の成長とともに拡大を続けてきた。主催者によると、今年も2日間を通した登録者は550名ほど。業界の恒例行事として定着してきた感がある。
前夜祭の位置づけとなるブートキャンプでは、今年は特に旅行関連の起業家にフォーカス。近年の創業から大きな成長を見せた中国の民泊「途家」のトップやアクティビティ予約「BeMyGuest」の創業者などが、その道のりを振り返り、会社経営の注力点などを語った。恒例となった起業家のプレゼン(スタートアップピッチ)では、11か国32の応募から選考された7社が登壇。また、過去のピッチで勝者となった企業が、成長の振り返りと現状を語るシーンに注目が集まった。
LCCピーチのマーケティング手法も、旅の一連のサイクルで稼ぐ
LCCピーチアビエーションから森井理博CCOのプレゼンにも注目が集まった。テーマは同社のブランディングとマーケティング。約20万人のフォロワーをもつインスタグラムをはじめとしたSNSを重要なコミュニケーションツールとし、旅客の旅行に関わる一連のサイクルの中でいかに稼ぐかを常に考えているという。
森井氏は、同社にとって航空券予約の後が「大きなチャンス」と話し、機内などの付帯サービスの追加販売や機内販売が大きなビジネスであることを明かした。面白いエピソードとしては、航空機内で1台300万円のクルマが1か月で5台売れたという事実も披露。また、先日発表したビットコインの支払いでは、特に中国人旅行者を視野に入れた事業で旅行中の買い物をしやすくする施策である背景を説明。航空券の販売にとどまらず、旅行中の旅客とのすべてのタッチポインとで稼いでいる同社の活動を説明した。
今年のピッチはテクノロジー系で混戦
初日となるブートキャンプでスタートアップピッチを行ったのは32社の応募の中から選考された7社。その中から、メインカンファレンスに進出できるチャンスを得たのは以下の3社だ。最終の勝者は、9日のプレゼン後に発表される。その結果に注目したい。
日本美食 Japan Foodie(日本・中国)
飲食店予約アプリでレストランと訪日旅行者をつなぐ。特に中国人旅行者の要望が高いスマホ決済、飲食店のノーショー(予約客が来店しない)リスクを低減する事前決済を提供。飲食店側も客をレビューできる相互レビュー機能が特徴。
Alleys(韓国)
旅先の動画と地図を組み合わせ、バーチャルで旅先を確認した後にマッピングできるサービス。ユーザーが旅先で投稿することができ、トラベル系パートナーとAPIでつなぎ、今後のビジネス拡大を狙う。
softinn(マレーシア)
アジアに多い家族経営のホステルなどの小規模ホテルを対象とした予約エンジンを提供。直接予約の増加を目的としているが、APIでOTAとつなぐこともできる。すでにトリップアドバイザーと連携している強みも持つ。
なお、今回プレゼンを行った他サービスは、ホテル向けのAI客室単価設定ツールを提供する「メトロエンジン」、ホテルのキャンセル客室に宿泊する権利を売買する「cansell」、航空券をキュレーションして表示する「Playwings」、高級ホテルの客室を安値で仕入れて販売する「staydilly」。