IATA(国際航空運送協会)がこのほど発表した今後20年の需要予測によると、2036年までに、世界の航空旅客数は78億人に達し、現在のほぼ倍になる見通しだ。2017年の航空旅客数は40億人、2036年までの年平均成長率は3.6%としている。
アレクサンドル・ドゥ・ジュニアックIATA事務総長兼CEOは「航空ネットワークは、イノベーションと成長をもたらすが、同時に需要拡大への対応策が、航空業界と各国政府に不可欠」とコメントした。
IATA予測による2016~2036年に最も航空旅客数が増える国トップ5位は以下の通り。
- 1位:中国(9億2100万人増、計15億人)
- 2位:米国(4億100万人増、11億人)
- 3位:インド(3億3700万人増、計4億7800万人)
- 4位:インドネシア(2億3500万人増、3億5500万人)
- 5位:トルコ(1億1900万人増、1億9600万人)
旅客拡大を支える最大のマーケットはアジア太平洋地区。今後20年間で増加する旅客の半分以上が、同地域からと予測している。中国の航空旅客市場が米国を追い抜き、世界最大となるタイミングは「2022年頃」と推定。昨年の予測より2年前倒しとなった。中国の旅行市場の成長が、予想を若干上回るペースであること、逆に米国市場は予想を下回る成長ペースであることが理由。
国別での航空旅客数ランキングでは、米中以外でも、上位ランキングの交替が進むとIATAでは見込んでいる。2025年には、インドが英国を抜き、世界第3位に台頭、さらに2030年にはインドネシアが同4位となり、英国は5位に後退。そのほか、タイとトルコがトップ10位に仲間入りする一方、フランスとイタリアはそれぞれ11位、12位となる。
2036年までに上位となる予測の市場は以下のとおり。
ただし今回の需要予測は、世界貿易の自由化とビザ手続きが、現状を維持していることが前提。保護主義と旅行への規制強化が進んだ場合、航空旅客市場の成長率は2.7%へと縮小し、2036年の市場規模は、予測値より11億人減と試算する。
逆に、自由化がさらに加速した場合、年成長率は予測値より2ポイント以上増え、20年後には旅客数が3倍となる可能性もあるとの見方だ。
航空需要の増加に伴い、混雑緩和やセキュリティ・遅延対策、コスト、環境への負荷など、様々な課題も浮上している。ジュニアック事務総長は「空港や施設をさらに巨大化し、複雑なものにしても解決策にはならない」と指摘。むしろテクノロジーを活用して、空港の外でも、様々な対応ができる効率的な体制を整えることが、持続可能なソリューションにつながるとしている。
なお、IATAでは、2020年から排出量をプラス・マイナスでゼロに抑え、2050年までに二酸化炭素の排出量を2005年レベルの半分まで削減するなど「厳しい目標を自ら設定」(同事務総長)。各国政府には、航空機の燃料となる持続可能エネルギーの増産、航空管制業務の効率化を訴えていく方針を示している。