2018年のデジタルマーケティング動向は? いま注目するべき「7つのポイント」を整理した【外電コラム】

2018年を迎え、新しい年のマーケティングとブランディングのトレンドを考える季節がやってきた。

水晶玉の中を覗き込み、2018年のマーケティング動向について、オーディエンスのエンゲージメント、ブランディング、広告などを切り口に、7つの注目すべきトレンドを予言してみよう。デジタルマーケティングについて、さらに詳しい内容は、デーブ・シャフリー氏の「マーケティング・トレンド2018(英語)」を参照してほしい。

※この記事は、デジタルマーケティング事業をおこなう英「スマート・インサイト(Smart Insights)」によるもの。トラベルボイス編集部が日本語翻訳・編集しました。

予測1:パーソナライズはさらに高性能なものへと進化

マーケターのみなさんはよくご承知の通り、消費者が気にしていることはただ一つ、「私にぴったりなもの、ここにある?」。そこでビッグデータを活用し、個人向けの最適化、つまりパーソナライゼーションを追求することが、営業やマーケティング活動において需要なテーマとなっている。

スタブ・ハブのウェブサイトでは、‘お気に入り’アーティストや開催地リストが最初に表示される仕組みがある

例えば、イーベイ(eBay)が展開するオンラインチケット売買サービス「スタブ・ハブ(StubHub)」では、パーソナライズされたCTA(Call-To Action、行動喚起のための要素)導入の効果で、購入率が42%もアップしたという。IT専門調査会社IDCによれば、2018年末までに、ビッグデータ市場は1020億ドル規模に達するとの予測もある。

実際、マーケティングの効果向上を目的とする自動化機能を搭載した多くの「動的サイト」が、紙媒体をそのままネットに移しただけの「静的サイト」のコンテンツにとって代わるようになった。スマートインサイト社が発行した「Improving Engagement Report 2018」によれば、マーケターの10社中4社が、動的コンテンツを導入済み。しかし専門家の中には、パーソナル化が進み過ぎるあまりサービスの主旨がはっきりしなくなり、逆に効果が薄くなるとの懸念もある。

幸い、デジタルマーケターの対応は素早く、消費者の感じる不安や要望に沿えるよう、動き出している。わざとらしさが薄れ、よりぴったりしたパーソナル化が進み、非常に高性能なものへと進化するというのが私の予測だ。

予測2:性別を超えたマーケティング

2017年7月、英国広告基準協議会(Advertising Standard’s Association)がまとめたレポート「Depictions Perceptions and Harm(描写と認識、その害悪)」(PDFファイル)によると、広告では有害でステレオタイプな表現が子供から若年層、大人にまで悪い影響を及ぼしており、人々の選択肢や夢、可能性を狭くしているという。そこで広告を展開するブランド各社には、固定概念にもとづいて男女別に役割やキャラクターを設定する時代遅れな手法を改め、新しいスタンダードを提案するよう求めている。

米ウォールストリートに建つ少女像「Fearless Girl(恐れを知らない少女)」は、金融機関であるステートストリート・グローバル・アドバイザーズ社のためにマッキャン・ニューヨーク社が製作した作品で、「金融業界にもっと女性のリーダーを」という想いが込められている。

昨年8月には、英国の靴メーカー、クラークスが少女向けの靴に「ドリー・ベイブズ(可愛いいベイビー)」、少年向けは「リーダーズ」という商品名を付けて大炎上した。一カ月後、同様にツイッター上で非難を浴びていた英国の百貨店チェーン「ジョン・ルイス」は、性別によるステレオタイプな表現からの脱却を目指し、子供服のブランドで「男子用/女子用」の商標を付けるのをやめた。

同じような問題はまだ続くだろうが、2018年が終わる頃には、男女のどちらにも偏らないマーケティングキャンペーンを展開するブランドが増えるだろう。性別に左右されないセグメントを意識し、より時代に即したスローガンやハッシュタグを使った広告が出現すると予想している。(折しも2018年は、わが英国で女性の参政権獲得100周年を迎える記念すべき年。こうしたイニシアティブがさらに増え、男女にこだわらない考え方への支持が高まるだろう。)

予測3:「#nofilter(フィルター加工なし)」でのストーリーテリング

動画へのシフトは、ますます加速すると予測している。疑い深い人々からの信頼を得るために、2018年は、多くのブランドがフェイスブック、ツイッター、インスタグラム、スナップチャットなどのソーシャルメディア上に動画を投入する。それによって、より身近な存在だと思ってもらうことが狙いだ。

影響力あるセレブや人気者のインタビューを紹介することで、ユーザーによる活発なコメントの書き込み、「いいね!」マーク付け、動画配信、シェアなどを盛り上げ、マーケティングキャンペーンの大ヒットを狙う。

表面的ではない、充実した中身のある情報を求めるのが、最近の世界的な傾向だ(政治やビジネスの世界におけるフェイクニュース敵視を含めて)。上手に作られてはいるが、よくある写真素材を使った無難なブランド各社のストーリー動画ではなく、実際に商品を使っている‘本物の’ユーザーが作ったコンテンツならではの味わいが求められている。同様に、B2Bブランドについては、「実際に役に立つ」ものを、しっかりと紹介した広告コピーを期待したい。何が言いたいのかはっきりしない、薄っぺらな企業のたわごとはもう勘弁願いたい。

予測4:押しつけがましくないマイクロ・モーメント対応

少し前になるが、2015年にグーグルは「マイクロ・モーメント」を提唱し、知りたい、欲しいと思った瞬間に、その情報やモノ、コトに関するコンテンツを即、提供できるサービスの必要性を訴えた。以来、多くのブランドがこのアプローチを取り入れ、マーケティング担当部門には、コンテンツ充実への容赦ないプレッシャーが降り注いだ。しかし、効果が出ていないケースも少なくない。

そんな経緯から、2018年は、マーケターたちによるマイクロ・モーメントのマネジメント手法の精査が進み、顧客サポートの頻度や内容、複数デバイスを使ったキャンペーンを見直す動きが出てくるだろう。デジタル心理学への理解が深まっているので、従来よりもっと洗練されたやり方で、押しつけがましくならない範囲で、顧客が欲するコンテンツをタイムリーに提供できるようになるだろう。

予測5:メッセージングアプリがネットワーキングの覇者に

現在、世界中で毎日、40億人がソーシャル・アプリを使っている。そして2018年には、いわゆるOTT(over-the-top=通信事業者やインターネット・プロバイダではない企業)が提供するアプリを経由して、20億通のメッセージが送信されると推計されている。

ソーシャルメッセージングが日々のやり取りにおいて果たす役割は、ますます大きくなる。今後を左右するのは、ソーシャルメッセージングが、比較的、安全かつ手軽なリアルタイム接続を提供できるかどうかだ。その理由は、ミレニアル世代が、透明性と共同作業を重視するからだ。ビジネスの場でも、ソーシャルメッセージングは、瞬時に直接コミュニケーションできるツールとして、徐々に浸透していく。特に、海外の顧客とのやり取りで威力を発揮しそうだ。

しかしフェイスブックなど、従来型のSNSが消えてしまうわけではない。例えばフェイスブックの広告は、すでに特定ブランドに関するチャット機能(ブランドチャット)で威力を発揮している。利用者側も、この機能のおかげで素早く簡単に、問題を解決できるようになった。2018年よりもっと先まで予想するなら、最終的にフェイスブックはワッツアップ(WhatsApp=フェイスブックは2014年に同社を買収)を完全統合し、まったく別の新しいサービスを提供する企業に変貌するのではないかと私は考えている。

予測6:ポップアップ広告、とうとう破裂

ここ数年、繰り返し予測されてきたことだが、ポップアップ広告やインターステイシャル広告(ページ移動時に自動的に表示される広告ページ)は、とうとう完全なる終焉を迎える。2018年、こうした侵入型の広告を展開する主要ブランドは、文字通り、破裂することになるだろう。

きっかけを作った企業の1社がグーグルだ。同社はスマートフォン上でのポップアップ広告表示にペナルティを与える方針を打ち出した。2018年には、おそらくデスクトップパソコンの画面もペナルティの対象に入るだろう。ポップアップ広告は、段階的に消えてゆき、かわりにもっと巧妙に仕組まれた、複数デバイスに渡るネイティブ型レスポンシブ広告が増えそうだ。新しいネイティブ広告が分かりやすく、内容も適切で、利用者に喜ばれるものであること、また利用者に極力、ストレスを与えないよう配慮されたキャンペーンであるなら、2018年は、ネイティブ広告が大躍進する年となるだろう。

予測7:技術ブランドが「スピリチュアルな体験」を提供?

最後に、より広い意味から、マーケティングのプロについて考えてみた。テクノロジー系ブランドに興奮するのはオタクだけというのは昔の話。今や、誰でもコーディングをする可能性がある時代だ。マーケターも、かつては文字とグラフィックで構成されたクリエイティブに酔っていたが、昨今では、アルゴリズム評価やターゲティングレスポンスだって同じぐらい刺激的だと思わなくてはいけない。

センスよりもデータが重視される2018年、マーケターたちは、毎日続く単調なスプレッドシート(表計算ソフト)入力や実現不可能なターゲットの現実からひとときの休息を求め、テクノロジーを活用した「スピリチュアルな体験」に手を伸ばす。ストレスで疲弊した同僚とのミーティングが続く合間に、マインドフルネスプログラムやCBT(認知行動トレーニング)のデジタル版アプリを使ってみるのはいかが。

さあ、深呼吸をして息を吸って…。今年のマーケティング計画を展開してほしい。

※編集部注:この記事は、デジタルマーケティング事業をおこなう英「スマート・インサイト(Smart Insights)」に掲載された英文記事を、同編集部から承諾を得て、トラベルボイス編集部が日本語翻訳・編集しました。

※オリジナル記事:2018 Marketing predictions you need to keep an eye on Posts by Jonathan Gabay

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