混雑待ち時間も最新テクノロジーで解決の巨大クルーズ客船、世界最大ハーモニー・オブ・ザ・シーズのカリブ海クルーズに行ってきた(1)

いま、注目の高いクルーズ客船といえば、米国のクルーズ会社、ロイヤル・カリビアン・インターナショナル(RCI)が2016年に就航した世界最大の客船ハーモニー・オブ・ザ・シーズがある。

乗客定員5494名(2名1室)、同型の客船団「オアシスクラス」で最大・最新の同船は、その称号だけで集客力がある。昨今、クルーズがテレビの人気バラエティ番組で紹介される機会が増えたこともあり、クルーズに詳しくなくても、その名前に聞き覚えがあるという人も多いだろう。

今回、そんな注目度の高いハーモニー・オブ・ザ・シーズの西カリブ海クルーズ7泊8日に、アメリカン航空を利用して乗船してきた。世界最大客船が実現する新しいクルーズ体験をレポートする。

ストレスフリーなクルーズ体験

船上のスケートリンクやロッククライミングなど、「洋上初」の施設を次々と打ち出し、クルーズに「あっ」と驚く楽しみを提供してきたロイヤル・カリビアン・インターナショナル(RCI)。そんなトレンドをリードしてきたRCIの世界最大客船なら、多くの魅力を搭載し、これまで以上に驚かせてくれることは誰もが予想していることだ。

しかし今回、最も驚いたこととして最初に伝えたいのが、船内の快適さ。クルーズの乗船経験がある人には心当たりがあると思うが、食事や乗下船など、乗客の行動時間が決まってくるシーンでは、待ち時間が発生することが多い。これは、旅行を楽しむ気持ちが下がる要因で、クルーズの販売側にとっては頭を悩ます問題でもある。

ところが蓋を開けてみると、「待つストレス」や「混雑感」を感じる場面は少なかった。今回のクルーズの乗客数は全6089名だが、その規模を感じたのは全員が同じ時間に参加しなくてはならない出航前の避難訓練の時くらいだ。RCIではこの問題に向き合い、乗客のストレスを軽減する効率的なオペレーションに力を入れている。

船内には、タッチ式のディスプレイやタブレットが設置。客室番号の入力でその位置を地図上に示したり、行きたい場所を指定すると、今いる場所からの行き方を表示する機能もある

その一つがテクノロジーの活用。最も分かりやすい例が、すべての乗客が船内の精算やルームキー、乗下船のセキュリティで使用するクルーズカード「シーパスカード」だ。ICを採用しているので、鉄道駅の改札口でするように1回のタッチで認証が済む。多くの客船で使用している従来の磁気や2次元バーコードタイプでは、カードをケースから出すのに手間取ったり、認証を何度かやり直すこともあった。このわずかのように感じられる差が、特に寄港地等の乗下船で生じやすい行列を改善する大きな違いになるという。

また、空間をたっぷり活用した船内設計も、人との距離を感じさせない快適性を作り出すのに一役買っているようだ。例えば、船の目玉施設である船上公園「セントラルパーク」(8階)やメリーゴーランドのある遊園地「ボードウォーク」(6階)、船内のメインストリート「ロイヤル・プロムナード」(5階)は上部が吹き抜けで、開放感がある。船首上階のソラリウムも、前方をガラス張りして視界を広げ、目の前に大海原が迫る。

このほか、アトラクションやシアター、ダイニングなど船内施設が充実し、見どころがうまく分散されていることも、混雑が発生しにくい快適なクルーズ運営に大きく影響している。素晴らしいサービスは快適さがあってこそ感じられるもの。ハーモニー・オブ・ザ・シーズの魅力は、オペレーションの工夫にも支えられている。

本物の緑が植えられた8階のセントラルパークは、RCIの「オアシスクラス」に設置された洋上初の本格的な公園。上部は全て吹き抜けで、さわやかな風が通り、鳥のさえずりが聞こえることも

本場のエンターテイメントとアトラクション

毎晩行なわれるショーは、クルーズならではの楽しみ。ハーモニー・オブ・ザ・シーズではメインシアター、アクアシアター、アイススケートリンクの3つの会場を中心に、エンターテイメントを提供している。

いずれもプログラムは本格的で、例えばメインシアターではブロードウェイの人気ミュージカル「グリース(Grease)」を上演。ブロードウェイのショーを上演する客船はほかにもあるが、省略せずにオリジナルとほぼ同じ内容で上演するのはRCIのみ。脚色のない本場さながらのショーを、クルーズ料金だけで見られるのだ。

また、アクアシアターやアイススケートリンクのショーでは、水泳やフィギュアスケートの元オリンピアンが、華麗かつアクロバティックに世界レベルのパフォーマンスを見せる。これら人気のステージは、航海中に日を変えて2回以上開催。クルーズ出航前の事前予約制度があるのも、優雅に観劇できるポイントだろう(追加料金は不要)。

夜遅くまで本格的なショーを楽しみ、その後はすぐに客室で休める。そして翌朝目覚めると、次の寄港地に着いている。船上の観劇は、クルーズのメリットを実感する贅沢な体験

このほか、スリル満点のウォータースライダー「パーフェクトストーム」や、10階分の落差を急降下するスライダー「アルティメットアビス」など、世界最大の客船だからこそ実現したアトラクション、ボディーボードやサーフィンが楽しめるフローライダー、高さ9階分の落差を見ながら滑る船上ジップラインなど、陸上でもなかなかできないアトラクションが、航行中の海の上で体験できる。これらでは、子どもはもちろん大人も笑顔を見せて楽しんでいる。

クルーズ客船は洋上のリゾートやテーマパークなどと例えられるが、世界最大のハーモニー・オブ・ザ・シーズはその規模が違う。誰もが年齢を忘れて、海の上に現れたデスティネーションを冒険をするように楽しむのが、この船の過ごし方なのだろう。ちなみに、これらのアクティビティは全て、クルーズ代金に含まれている。

6階の後方の遊園地「ボードウォーク」も、オアシスクラスだけの搭載。親子や三世代で楽しむ姿も多く、どこか懐かしい雰囲気が感じられる。奥のピンクの巨大スライダーが16階から10階分を滑り降りる「アルティメットアビス」。世界最大客船だからこそ実現した絶叫アトラクションだ

「今日はどこへ行こうか」と悩むダイニング

クルーズ旅行を大きく左右する要素となるのが、ダイニングでの食事。ハーモニー・オブ・ザ・シーズでは、クルーズ代金に含まれているメインダイニングとビュッフェ「ウィンジャマーカフェ」のほか、追加料金で利用できるスペシャリティレストランが9つある。

内容は、イタリアンやステーキハウス、日本料理などに加え、「ふしぎの国のアリス」をモチーフにした驚きの仕掛けや見た目がユニークな料理体験が楽しめる人気の「ワンダーランド」などバラエティ豊か。米国のセレブリティシェフ、マイケル・シュワルツ氏による「150セントラルパーク」は、記念日旅行の食事にぴったりだ。一生に一度のハネムーンで、特別感を演出する要素になる。

メインダイニング前にはクルーズ中のメニューを表示するタッチ式ディスプレイも。予定を見て、スペシャリティレストランの予約日を決めるという選択もできる。ただし、時間によってはすぐに満席になるので、必ず行きたいレストランは出発前の予約がおすすめ

1日の食事のメインは夕食だが、ハーモニー・オブ・ザ・シーズではぜひ、朝食・昼食にも注目したい。というのも、スペシャリティレストランでは追加料金が必要だが、朝食・昼食は追加料金なしで食べられるレストランが多いのだ。

消費者のなかには「船の上の食事は飽きるのでは」と懸念する人がいるが、同船ではカフェや軽食などを含めると、料飲施設は20か所あり、メニューもバラエティ豊か。そんな心配は無用だと断言できる。悩むとしたら、ダイニングのラインナップのなかから、「今日はどこで何を食べようか」だ。

ちなみに、RCIはカジュアルクラスとはいえ、ベルリッツのクルーズガイドでは、プレミアムクラスを標榜する他のクルーズ会社と同じランクで評価されており、その理由にはダイニングの質も左右しているようだ。日本の総販売代理店ミキ・ツーリストによると、堅苦しい雰囲気が苦手であったり、RCIにしかない体験を求めて、世界最大・最新鋭のハーモニー・オブ・ザ・シーズを選ぶ富裕層クラスの顧客も少なくないという。

さて、日本人のフライ&クルーズでは欧州、地中海の人気が高いが、世界的に見ればカリブ海こそがクルーズのメッカ。クルーズ会社の国際協会CLIAの統計によると、2016年のクルーズ旅客数は2470万人で、そのうちカリブ海クルーズは35.0%。次点の地中海クルーズ18.3%を大きく引き離す圧倒的なシェアを占める。次回のレポートでは、世界のクルーズトラベラーを惹きつけるカリブ海クルーズの寄港地について紹介する。

【クルーズ中の船内の様子】

全長361メートル、総トン数約22万トンの同船を日本の建築物で例えると、東京駅の丸の内駅舎が海に浮かんでいるような大きさ船内のメインストリート「ロイヤル・プロムナード」。乗船手続き後、船内に一歩入ってすぐ目にするのがこのエリアだ。船内というよりも、まるでどこかの街の一角を訪れたような光景にこれから始まるクルーズへの期待が高まる船で一番人気のエリアは、やっぱりプールデッキ。バーで購入したお酒やスマホ、本などを傍らに、のんびり日焼けをしながら時々各種アトラクションで遊ぶというのが、クルーズ好きの欧米人の過ごし方のようだ「アクアシアター」のアクロバティックなショーは必見。「オアシスクラス」のみの設備で、ステージ部分が一瞬でプールに早変わりし、高飛び込みや観客席上での宙づりなどが、この距離感で行なわれる。これも追加料金は不要他の客船にはない様々な仕掛けで楽しませてくれる。ロボットのバーや、吹き抜け上部の8階「セントラルパーク」との間を上下移動する「ライジングタイドバー」も。船長主催のウェルカムパーティでは、クルーズディレクターが上階から登場エンターテイメントはシアターでのショーだけではない。いつもどこかで様々な船内イベントが行なわれている。写真はRCI名物のチーム対抗・借り物競争「クエスト」。言葉はわからなくても、会場が一体になって盛り上がる。クルーズは通常の海外旅行よりも、人や文化に近づけるのも魅力食事ではスペシャリティレストランも利用したい。欧米の乗客はメインダイニングやビュッフェと織り交ぜて楽しんでいる。複数のダイニングを利用する割引パッケージもある。写真は日本料理の「泉」。鉄板焼きで盛り上がっていた約6000人の乗客と約2000人の滞在を支えるため、キッチンやランドリーなど船内の裏方でもテクノロジーが進化。1日約8000個のパンを焼くオーブンでは、艶出し用の卵白を自動で吹きかける機能を搭載。大きな違いを生むための小さな革新も重視している一例船尾から見たハーモニー・オブ・ザ・シーズ

取材協力:ロイヤル・カリビアン・クルーズ日本総代理店


(株)ミキ・ツーリスト クルーズカンパニー

取材:山田紀子

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