新型コロナウイルスの世界的流行で、国際間の往来は完全にストップした。日本の海外旅行者向けモバイル通信機器レンタル事業の草分けであるテレコムスクエアでも、同商品の取扱いは縮小し、4~5月は壊滅的な状況となった。しかし、現在は徐々に上向きに転じている。コロナ禍でも現地に赴く必要性が高い医療や技術系の専門家、海外赴任者などが動き出しているからだ。
こうした出張者(業務渡航者)の間で需要が急増しているのが、現地の電話番号で通話できる携帯電話、いわゆる「ガラケー」だ。
なぜ今、再び、ガラケーが業務渡航者の脚光を浴びているのか。海外渡航の段階的解除が進むなか、ニューノーマル時代の業務渡航ニーズと同社の取り組み、今後の展望を、同社取締役通信営業本部長の田村正泰氏に聞いた。
パンデミックでガラケー復活、キーワードは「安心」
テレコムスクエアはこのほど、業務渡航向け海外用携帯電話の特別プランを発表した。現地の電話番号で通話できる携帯電話(ガラケー/音声携帯電話)に対応するプランで、料金は現行の半額から最大83%割引きでの設定だ。今年8月、Wi-Fiルーターとあわせて、ガラケーをレンタルする利用者の割合が全体の48%と半数近くとなり、前年同月の約3倍に拡大したことを受けて決定した。
なぜ、今、ガラケーの需要が高まっているのか?
その要因の1つが、コロナ対策で各国が行なう防疫強化や入国規制だ。入境時の隔離期間中に、連絡手段として電話番号の登録を義務付ける国・地域がある。中でも、感染抑制で成功を収めている台湾では、入境時に台湾国内の電話番号の登録を必須としており、ない場合は入境が認められない。コロナ発生後に台湾へ行った渡航者からは、滞在中にコロナ対策の機関から何度か電話があり、質問を受けたという声もあるという。
また、感染状況の変化に伴い、世界各地では入国・行動規制が頻繁にアップデートされる。そのため、現在は現地回線の電話番号が必須ではない渡航先への出張でも、万が一に備えて、ガラケーをレンタルするケースも増えている。国際ローミングで日本の電話番号が使用できる国・地域は多いものの、田村氏は「番号登録が求められる可能性がある場合は、滞在中だけ使用する電話番号の方が安心、というニーズも多い」と、業務渡航者の心情を説明する。
さらに田村氏は、「コロナ時代の出張では、海外での安心安全をサポートする手段として、通信機器の役割がかつてないほど大きくなっている」と、ガラケー需要が高まる背景を指摘。
田村氏によると、コロナ発生後、業務渡航のスタイルが変化。14日間の自主隔離によって頻繁な往来が難しくなったため、1回の出張期間が昨年の平均10日間から、現在は1~3か月と長期化した。企業側も従来以上にリスクを回避し、出張している社員といつでも確実に連絡が取れる手だてを講ずることを求められるようになった。こうした渡航者や企業から、国際ローミング通話ではなく、現地回線を利用する携帯電話の需要が増えているのだ。
業務渡航が戻りつつあるとはいえ、日本人出国者数は前年比1~2%前後の推移が続いている。このようななか、特別価格の設定に踏み切った理由について田村氏は、「渡航先の入境時に、現地の電話番号登録が必要なケースがあることを、知らない方も多い。コロナ時代の業務渡航に必要なものを周知したいという思いがあった」と説明。「困難な時代に業務出張に行く方が、安心して業務を遂行できるよう、サポートしたい」との同社の姿勢を強調する。
コロナ時代の渡航を支える強み
1992年創業のテレコムスクエアでは、早期から海外通話用の携帯電話レンタルを始め、業務渡航を中心に顧客を獲得してきた。今では全取扱の6割を、上場企業を中心とする大手企業の出張者が占める。年々、取扱い商品の主流がWi-Fiルーターへシフトする一方で、「やはり渡航先では、現地回線の音声通話が必要」という顧客企業の根強い要望も残る。こうした声に応えるべく、多種多様なサービスを揃え続けているのが同社の特徴だ。
特に、現地の携帯電話や電話番号は当時から、台湾をはじめ、日本からの出張の多いエリアで多数確保し、現在も手元に残している。携帯電話レンタルのオペレーションは煩雑であり、Wi-Fiルーターレンタルに比べると収益面への貢献度も決して高いとは言えないが、それが今回のプラン提供に役立っている。
「これまで30年近く、海外出張者の多種多様な要望に応え続けてきた。業務渡航で共通するのは、慣れない土地での過密スケジュール時でも、ストレスなくつながる通信環境。それがビジネスの成否を左右する」と田村氏。顧客企業の中には、出張手配を担うグループ会社内の旅行会社(インハウス)に、テレコムスクエアのスタッフを通信機器の専任担当として常駐させる企業もあるほど。法人企業がどれほど通信環境を重視しているか、うかがい知れる事例だ。
同社では、安定した通信環境の構築に創業時からこだわってきた。取扱商品のすべてで現地の様々な通信会社を実際に利用し、担当者をその都度現地に派遣してチェック。価格が手ごろでも通信が遅かったり、不安定な事業者は見直す。渡航者をサポートするコールセンターも設け、万が一、現地で故障した場合は、代替品を届けるサービスも行なっている。「代替品サービスを明確にうたうのは、日本ではテレコムスクエアだけだ」(田村氏)と胸を張る。
また、扱う端末やプランの種類が豊富であるのも、同社の特徴。コストやオペレーション効率を考えれば、仕入れをまとめて端末などの規格を統一するのがセオリーだが、渡航先によって異なる通信環境への対応や法人企業の様々なニーズに対応するには、多種多様に機種を揃えるというのが、同社の出した答えだ。
田村氏は同社の役割を、単なるレンタルサービスではなく、「いつでも確実に繋がる通信環境のサポート」と考えている。「だからこそ、現地でのミッションを無事に終えて帰国したユーザーが、次の渡航時にもリピーターになってくれている。長年の信頼関係を大切に、品質のいいものを届けたい」と田村氏。顧客のニーズに実直に対峙する姿勢が同社の強みであり、そこで培ったノウハウが、コロナ禍のいま、顧客に求められていると実感している。
「安心」のニーズに応えるソリューション企業へ
渡航制限の段階的な解除が進められるなか、今後の海外渡航は、まず必要不可欠な業務渡航、続いてレジャー客が動くと見られている。しかし、「以前と同じ需要が戻ってくるわけではない」と田村氏。コロナ危機を経て、観光目的の旅行でも、安心安全への備えが重視されるようになり、「今までとは違うニーズが顕在化する」と展望する。
例えば、今までは1グループが1台のWi-Fiルーターをレンタルし、共有していたが、1人1台持ちやガラケーも持参する、といった変化を想定。「渡航先での安心を届けるという当社の姿勢に、コロナ禍だからこそ共感される部分があるかもしれない」とも期待する。海外では入境時に、追跡アプリのダウンロードが義務化される動きもあり、コロナ前は価格重視で通信を選択してきた旅行者も、ニューノーマルの旅行では通信やサポートの品質への関心が高くなると見る。
withコロナ時代の海外旅行で、いかに不安を解消し、安心安全の実現をサポートできるか。これまでも、「安心」「便利」「楽しさ」の3つを社是に取り組んできた同社では、この企業姿勢をさらに強め、「T-Safety」と名付けた3つの方針を打ち出した。新時代の渡航の安心安全の実現に向け、トラベラー(Traveler)が安心して旅行に出かけられ、トラベル(Travel)に対する世の中の不安払拭も目指す、テレコムスクエアの想いを込めたものだ。
「T-Safety」(ニューノーマルの旅に安心を)実現に向けた3つの方針
- ニューソリューション(New Solution)
ニューノーマルの旅行に必要な安心安全を満たすソリューションを、積極的に展開する。 - クリーンギャランティ(Clean Guarantee)
レンタル機器の消毒や空港カウンターでの受け渡し時の感染予防対策を徹底する。 - 共創(Co-Creation)
旅行会社やホテル、航空会社、異業種など幅広い分野の人々と連携・協働することで、旅をより安心安全なものとする取り組みを行なう。
これらの取り組みは、より多くの人が安心して旅行できる日が、少しでも早く到来することが目標。「現在、各方面の皆様と色々な話を進めている。安心して渡航できるようなソリューションを提供し、必要な情報を発信することは当社の役割の一つ。これまで法人顧客向けに実施していたセミナーを、より多くの方向けに行なうことも検討している。もちろん、これまでお取引のなかった方々とも、新たなパートナーとして法人契約や代理店契約を結んでいきたい」(田村氏)。
今後、出入国時の14日間の隔離期間が不要になれば、すぐにリバウンド需要が起きるのか。9月のシルバーウィークは、国内各地の観光地で久しぶりの賑わいが見られたが、田村氏は「海外となるとハードルは高くなる」と慎重だ。旅行者の「不安」の払拭と求められる「安心」の提供に向け、最新情報を収集しながら、次の一手を練っている。
※注:記事内の各国地域の防疫体制・入国規制は10月16日午前時点の状況です。最新の情報にご注意ください。
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商品名:海外用携帯電話レンタル
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記事:トラベルボイス企画部