グローバルビジネストラベル協会(GBTA)はこのほど業務渡航マーケットについて、世界全体での完全回復は2025年以降になるとの予測レポートを発表した。
GBTAでは、世界75カ国の48業種を対象に、業務渡航の消費額動向を調査したレポート「BTIアウトルック」を毎年まとめており、今回で12回目となる。
最新の同調査によると、2019年の西ヨーロッパの業務渡航は、消費額ベースで世界全体の23.4%を占める3347億ドル(約34.8兆円)。このうち76.7%がドイツ、英国、フランス、イタリア、スペイン、オランダの6カ国となっていた。すでにパンデミック以前から、西ヨーロッパの業務渡航市場は成長が鈍化しており、2019年は前年比1.3%増と、世界平均(1.5%増)を下回っていたが、2020年1~12月は58%減の1400億ドル(約14.5兆円)に激減。
さらにコロナ禍が深刻化した同年4~12月は前年同期比77%減(598億ドル、約6.2兆円)と大打撃を受けた。一方、新興マーケットが多い東ヨーロッパの業務渡航市場は、それぞれ同48%減と63%減だった。
国別で見ると、世界トップ15市場のうち、2020年の業務渡航市場のマイナス幅が最も大きかったのは英国(61.7%減)、次いで米国(61.1%減)、ドイツ(60.9%減)と見込まれている。西ヨーロッパ市場が世界の業務渡航に占めるシェアは、過去最高だった2010年の27.3%から4ポイント減となった。
一方、2021年からは回復基調に入るとGBTAでは予測している。
欧州19カ国のGDP成長率は、昨年は世界平均(4.4%減)を下回り7.4%減だったが、今年は3.6%増と予測されており、なかでも落ち込みが11.2%減と大きかった英国は、4.2%増が見込まれている。
こうしたなか、西ヨーロッパ市場での業務渡航消費額は前年比18.5%増、東ヨーロッパは同18.9%増と予測。ワクチン接種の拡大が好材料となり、特に年後半に大きな回復を示すとしている。また世界の地域別では、アジア太平洋がプラス成長のけん引役となり、2021年度の消費額は4218億(約43.9兆円)ドル。マーケット全体の半分のシェアを占めると予想している。
また、世界の業務渡航マーケットは、2022年以降、海外出張やグループミーティングが本格的に再開することでプラス成長を続け、2025年にはパンデミック以前のレベルに戻ると予測する。ただし西ヨーロッパ市場については、これより遅くなる可能性もあると指摘。東ヨーロッパは2024年に完全回復するものの、西ヨーロッパは同年の時点で、2019年(2610億ドル)の78%にとどまると予測している。国別ではベルギー、スウェーデン、ドイツで回復が緩慢になるとしている。
コロナの突然変異株など、業務渡航を取り巻く状況は、まだ予断を許さない状況だが、「欧州委員会が旅行対策について共通のアプローチをとることで合意したことは喜ばしい。混乱を避けながら、安全な出張再開を目指す取り組みになる」(GBTA欧州中近東アフリカ地区キャサリン・ローガン副代表)としている。
※ドル円換算は1ドル104円でトラベルボイス編集部が算出