2年ぶりにハイブリット形式で開催されたWiT Japan 2022。そこでは、アフターコロナでの業務渡航について考察するセッションもおこなわれた。参加したのは、コーポレートトラベル・プラットフォームを展開する「FCM Travel Solutions Asia」マネージングディレクターのバートランド・セイレット氏と「Spotnana」戦略&パートナーシップ副社長のジョニー・ソーレセン氏、ベンチャー・リパブリックCEOの柴田啓氏。
コロナ禍でオンライン会議が広がり、その利便性と費用対効果に気づく企業が多いなか、業務渡航は旅行市場のなかで回復が遅れるのではないかとの予想もある。2022年以降、業務渡航には何が求められるのか。
コロナ禍での業務渡航の変化について、FCMのセイレット氏は「パンデミック後、企業の責任は大きくなった」と話す。欧米ではコロナ以前からその傾向はあったが、コロナ禍ではアジアの企業の間でもその考えが強まったという。
Spotnanaのソーレセン氏は、「まだ多くの企業がオフラインで業務渡航の手続きをおこなっているが、今後はオンラインブッキングシステムに投資することが必要になってくる。さまざまな企業で出張のDXが起こるだろう」と見通した。
一方、ベンチャー・リパブリックの柴田氏は、コロナ禍で業務渡航の管理は複雑化しているとしたうえで、「皮肉なことに、デジタル化が求められるニューノーマルで、生身のコンシェルジュとのコミュニケーションも重要になっている」と指摘した。
デジタル化のメリットのひとつはコスト削減だが、セイレット氏とは「過去2年、業務渡航でのコスト削減の例はない」という。社員の安全性確保にはコストがかかり、PCR検査を複数回受けると、その費用も無視できない。そのなかで、「航空会社は柔軟なキャンセルボリシーなどを出してくれ、業務渡航の敷居を下げてくれた」とその対応を高く評価した。
また、柴田氏は、コスト削減のひとつとして、ダイナミックパッケージ(DP)を利用した業務渡航を進める企業が出てきたと指摘。「航空会社も鉄道会社もDPでは競争力のある値付けをしてくる。それを利用して節約する事例ある」と紹介した。
ソーレセン氏は、業務渡航のDXについて、テック人材の必要性に言及。「コスト削減には、テック人材を採用して、スケーラブルな業務渡航ソリューションにアップグレードすることが必要。テック人材を維持できている企業が成功する」と強調した。
業務渡航プラットフォームに必要なのはコネクティビティ
FCMは、今年から日本市場で「FCMトラベル スタンダード・フォア・ジャパン」の事業を開始。「日本市場の業務渡航は活発になってくる」とセイレット氏は話す。Spotnanaは2021年9月、4000万ドル(約45億円)の資金を調達した。業務渡航への逆風が止まらないなかでも、事業拡大に向けた動きを見せている。
セイレット氏は「ひとつのプラットフォームですべてができるとは思っていない。オープンプラットフォームで、コンテンツやサービスをアップグレードし、業務渡航管理の柔軟性を高めていく」と、FCMの戦略を説明する。
ソーレセン氏は「クラウドベースのバックエンドが重要になる。さまざまな要素を組み合わせるインテリジェント・マネージメントが求められる」と主張した。
また、柴田氏はユーザーからのフィードバックを紹介。「チャットプラットフォームでの処理精度が上がったことで、ユニークなカスタマー体験ができており、ユーザーはそれを喜んでいる」として、新しい業務渡航の手続きに手応えを示した。
3者の議論を受けて、モデレーターを務めたWiT創設者のイェオ・シュウ・フーン氏は「トラベルでは、コネクティビティが重要。多くのパートナーとコネクトしているところが成功している」とまとめた。
※ドル円換算は1ドル113円でトラベルボイス編集部が算出