カナダ最大の旅行業界商談会「ランデブーカナダ(RVC)2022」が2022年5月25日にトロントで開幕した。リアルイベントとして開催されるのは3年ぶり。依然としてコロナ禍ということもあり、今回オンライン商談を組み合わせたハイブリットでの開催となった。
リアルイベントには、カナダ側からセラーとして557社・団体、700人以上が参加。一方、バイヤーはカナダ観光局(Destination Canada)が重点市場と位置付ける国から351人が商談会に望んだ。このうち、日本からは31人が参加した。
ランディー・ボワソノー観光大臣兼准財務大臣は、記者会見で3年ぶり開催されたRVCについて、4万8000以上の対面での商談アポイントが組まれたことを高く評価。「観光とは人と人が会うことだ。カナダ政府も、カナダの将来にとって、観光が重要な産業だと認識している。特にカナダへのインバウンド旅行者の回復は欠かせない。今後、カナダが選ばれる旅先になれるように新しい戦略を進めていく」と発言した。
観光回復に手ごたえ、労働環境改善へデジタル投資
カナダ政府は、パンデミック発生以降、観光産業への支援として総額230億カナダドル(約2.3兆円)を拠出。さらに、2021年度予算として10億ドル(約1000億円)を追加し、そのうち1億カナダドル(約100億円)をカナダ観光局に、5億カナダドル(約500億円)を地域の観光開発に投じてきた。
カナダ国内の旅行消費額は、2020年の527億9200万カナダドル(約5.3兆円)から2021年は583億800万カナダドル(約5.8兆円)となり、2019年の1051億3800万カナダドル(約10.5兆円)の約半分まで回復。海外旅行市場での旅行消費額も前年比2%増となった。カナダ観光局理事会のリサ・フルーラ会長は、「パンデミック前に100%戻るには時間がかかるが、短期的には観光収入は増加している」と話し、回復に手応えを示した。最新の実績では、2022年3月の海外旅行者数は2019年3月比で58%減まで回復した。
このほか、ボワソノー大臣は、現在カナダの観光産業が抱える課題として、新型コロナの影響による労働者不足を挙げた。2022年4月のカナダ全体の雇用者数は2019年同月比で3%増だが、観光産業では、パンデミック発生の落ち込みから徐々に改善しているものの、2019年同月比で10%減となっており、他産業と比較すると、人手不足は喫緊の課題となっている。
ボワソノー大臣、労働環境の改善に向けた今後の取り組みとして、デジタルへの投資を進めていることを強調。また、フローラ会長は、労働者不足はカナダだけでなく、世界中の観光産業が抱えている問題と指摘したうえで、「観光は人気のある職種であることは確か」として、将来的には人手不足は解消するとの見方を示した。
想像を超える「レジェンダリー・エクスペリエンス」を訴求
国際担当副社長のモリーン・ライリー氏は、インタビューのなかで、今後の戦略について説明。カナダ観光局が掲げる「リジェネラティブ・ツーリズム(再生型観光)」を推進していくにあたって、旅行者向けのマーケティングテーマとしては「レジェンダリー・エクスペリエンス」を訴求していく方針を示した。その定義について、「経験を通じて自分の枠を超えるような旅」と説明。具体的な訴求内容については、「マーケットによって異なる。日本では日本人が好むような体験プランを紹介していく」とした。
※カナダドル円換算は1カナダドル100円でトラベルボイス編集部が算出