マレーシア政府観光局は、2022年11月、本格的な日本市場の復活に向けて、東京、名古屋、福岡、大阪の4都市で「マレーシア・セールスミッション2022」を開催。現地から、マレーシア政府観光局タン・スリ・ドクター オン・ホン・ペン会長率いる27人の旅行業界代表団が来日した。
旅行業界との協力で、できるだけ早い回復を
2019年のマレーシアへの日本人渡航者数は42万4694人。支出額は約754億円でトップ10市場のひとつとなっていた。マレーシアは、2022年8月1日からすべての外国人渡航者の受け入れを再開し、入国の前提条件も撤廃。現在、コロナ前と同様に観光が楽しめる環境になっている。このため、マレーシア政府観光局では、2022年の海外からのインバウンド旅行者数を入国規制緩和当初の200万人から920万人に大幅に上方修正した。
オン会長は、日本市場の回復について、「2023年のゴールデンウィークあるいは夏休みごろから本格的に回復してくるのではないか」との見通しを示したうえで、「回復基調に乗れば、一気に需要は戻ると思う」と話し、来年に向けた期待を表した。
足元では、円安、インフレ、燃油サーチャージの高止まりなどアウトバウンドには経済的課題も多いが、「経済状況は変化していく。航空運賃も需要が高まり、供給が増えれば、下がっていくだろう」との見方を示す。また、現在日本では「全国旅行支援」で国内旅行の需要喚起を行っているが、「その後に、海外旅行に目が向くのではないか。これまで溜まっていたペントアップ需要が実際の海外旅行につながると思う」と話した。
そのうえで、マレーシア政府観光局としては、日本の旅行業界と協業しながら、できるだけ早い回復を後押ししていくとした。
マレーシア最大の魅力は多様性
日本の海外旅行市場が復活に向かうなか、東南アジア各国も日本人旅行者誘致へのアプローチを強めているが、オン会長は「マレーシアには大きなアドバンテージがある」と自信を示す。マレー、中国、インド、少数民族が生み出すダイナミックな多文化社会、それぞれの文化に基づいた多彩な食文化、世界遺産のキナバル自然公園やグヌン・ムル国立公園、ジオパークに登録されているランカウイ島などの自然を例にあげ、「マレーシアにはさまざまなユニークさがあり、マレーシア1カ国を訪れるだけで、アジア数カ国を訪れることにもなる。その多様性こそが最大の魅力」と強調した。
そのうえで、オン会長は今後の日本市場での方針についても説明。まずは、旅行者が安全面や衛生面で安心して旅行できる環境が整っていることを伝え、「マレーシアは安全な旅行先であることをアピールしていく」考えだ。
また、サステナブルツーリズムが観光トレンドの一つとなっていることからホームステイ、サイクリング、ジャングルトレッキングなど「ニーズの変化に合わせて、ヘルシーライフスタイルの旅のコンテンツを積極的に提案していく」方針も示した。
マレーシアで加速する「スマートツーリズム」
さらに、オン会長は、マレーシアで進む「スマートツーリズム」についても言及。マレーシアではキャピタルA(前エアアジア)の「スーパーアプリ」やライドシェア「グラブ(Grab)」などのデジタルプラットフォームが普及しているが、「非接触サービスが求められ、フードデリバリーなどが普及したことなどから、コロナ禍でその利用が加速した」と説明する。
日常生活だけでなく、旅行の予約や付随サービスでも、その利便性や効率性が受け入れられており、「デジタルに慣れていない高齢者も、家族の中の若い世代の助けを借りながら、使っているようだ」とオン会長。66歳のオン会長自身も旅行予約はオンラインで行うという。
健全な双方向の交流が大切に
日本、マレーシアともほぼコロナ前と同様の旅行が可能になった。マレーシア人にとって日本は人気の旅行先だという。来年にかけて、日本からマレーシアの旅行者も増えていくと見込まれる。
双方向の需要拡大を見据えて、両国間の航空ネットワークも拡充。マレーシア航空は羽田/クアラルンプール線を週3便に、成田/クアラルンプール線をデイリーに増便。さらに、新たにバティックエアー・マレーシアが今年12月15日から成田/クアラルンプール線にデイリー運航で就航する。
オン会長は「今後、ビジネスでもレジャーでも、健全な双方向の交流が大切になってくる」と強調。そのうえで、お互いの文化を尊重する観光交流は相互理解の基本と位置付けた。
ノマドビザ、ホームステイなど多様な滞在を提案
セミナーでは、マレーシアでの旅先テレワーク(いわゆるワーケーション)、今年10月1日から新しくスタートした「ノマドビザ」、長期滞在プログラム「マレーシア・マイ・セカンド・ホーム(MM2H)プログラム」などを紹介するとともに、サステナブルツーリズムの取り組みの一つとして、農村地域の民家に滞在し、地域文化や生活様式などを学ぶホームステイ「カンポンステイ」も提案。
マレーシア政府観光局は、それぞれ関連団体と協力しながら、多様な旅行のスタイルを通じて、滞在日数の長期化や現地消費額の拡大を促していく考えだ。